コマツICT建機の未来を切り開く女たち「エミーとモリ—」。コマツIoTセンタって何?

コマツICT建機の未来を切り開くコマツIoTセンタ

ICT建機を体験できるコマツIoTセンタ

「スマートコンストラクション」を掲げる建機メーカー・コマツ(コマツカスタマーサポート株式会社九州沖縄カンパニー)は今年4月、熊本県大津町にICT建機のデモ施工などを体験できる「コマツIoTセンタ九州」を開設した。

すでに九州地域では2016年6月に「コマツIoTセンタ北九州」(福岡県嘉麻市)が開設済みで、九州のコマツIoTセンタは2ヶ所目になる。

熊本県大津町にオープンしたコマツIoTセンタ九州

九州各地からのアクセスが比較的良好な熊本の「コマツIoTセンタ九州」には、運営スタッフを常駐。常時デモを開催する。一方、嘉麻市の「コマツIoTセンタ北九州」は、福岡方面の顧客からのリクエストがあった場合などにスタッフが駆けつけ、不定期でデモを開催するという態勢だ。

コマツIoTセンタとは何なのか。そこで何が行われているのか。取材してみた。


建機レンタルの女性をコマツIoTセンタ専属に

福岡、熊本2ヶ所のコマツIoTセンタの運営を取り仕切るのが、九州沖縄カンパニースマートコンストラクション推進部の中村恵美さん。コマツIoTセンタは全国に12ヶ所あるが、運営責任者が女性なのは九州だけだ。

中村恵美(エミー) コマツカスタマーサポート株式会社 九州沖縄カンパニー スマートコンストラクション推進部 グループマネージャ IoTセンタ担当

もう一人のスマコン専属スタッフも女性で、森山美保さん。一部では、それぞれ「エミー」と「モリー」の愛称で呼ばれており、九州のICT建機の世界では、アイコン的な存在になりつつある。

森山美保(モリー) コマツカスタマーサポート株式会社 九州沖縄カンパニー スマートコンストラクション推進部 IoTセンタ担当

中村さんは、中途入社。社歴は12年目。バスガイドに始まり、歯医者、商工会議所、保険など、様々な仕事をしてきた。コマツには事務職で入って、レンタルのフロント業務の後、営業に従事した。

森山さんは、コマツ一筋の15年目。事務員として入社し、北部九州の店舗などで主にフロント業務などを担当してきた。

コマツICT建機の営業に関わる喜び

コマツのフロント業務とは、店舗にいて、レンタル建機の手配などを行う窓口業務。店舗には客などから電話がかかってくる。

ときには不思議な電話もある。電話を取ると、「おーい、俺じゃ!」と言う。名前も言わず、会社名も言わない。そのすべてが地域建設業の常連さん。ビジネスマナーとしてはありえない。

地域建設業だからなのか、ローカルだからなのか理由は定かではないが、日々の電話応対は終始そんな感じだった。「それだけお客さんに密着できていたということ。苦労もありましたが、楽しかったです」(中村さん)「実際に接すると、良い人ばかり」(森山さん)と振り返る。

コマツIoTセンタの見学会では、参加者が最新のICT建機の操縦体験ができる。

中村さんはその後、営業にシフト。担当エリアは大分と佐賀。店舗仕事から一転、外回りの日々を送った。機械だけでなく、施工に関する知識にも触れる機会が増えた。重機オペの免許を取ったのも営業のためだった。

営業を通じて感じたことは「建機の営業は男性より女性が有利」ということ。男性の場合、客から「コマツか、いらんいらん、帰れ!」と言われることは珍しくないが、「一度も言われたことがない」と言う。

「女性だと現場で目立つし、すぐに顔と名前を覚えてもらえるし。とにかくイヤな思いをしたことがありません」と振り返る。


コマツICT建機で変わる建設業の未来

そんな二人が、3年前、久留米のICT担当部署に配属された。営業としての配属で、IoTセンタ運営を兼任。中村さんがリーダーで、森山さんがサブ。嘉麻の「コマツIoTセンタ北九州」が開設した後、月に1、2回センタに出向くカタチで、運営を続けていた。センタ見学会は好評で、のべ1500名以上が訪れた。

ただ、「コマツIoTセンタ北九州」は、同社の施設規則の関係で、スタッフが常駐できないため、「近くに来たから、見に行こう」という客への対応ができない。福岡県中央部に位置するため、九州南部からのアクセスが悪いなどの制約があった。

コマツIoTセンタ九州の屋内では、PRビデオなどによる説明のほか、コクピットからのライブ映像なども織り交ぜながら、ICT建機の施工の様子を見学することができる。

そこで九州一円からのアクセスなどを考慮し、熊本に新たに「コマツIoTセンタ九州」を開設した。スタッフも常駐し、グループ会社や他社の社員を含め、20名が勤務する。現在、ICT建機は全国に約1400台あるが、重機のメンテナンスなどを行う設備も備える。

「コマツIoTセンタ九州」での見学会の定期開催日は、毎週水曜日。説明会で用いるPRビデオ、ナビゲーションの文言などは全国統一だが、小学生や高校生向けのイベントを企画中で、独自性を出しつつ、集客を増やしていく考えだ。「今の開催ペースは週2回ですが、いずれは毎日開催するようにしていきたいですね」(中村さん)と力を込める。


コマツICT建機の感動体験

ICT建機は、「経験の少ない人でも、ベテラン並みに動かせる」のがウリの一つだが、ベテランのオペレーターには抵抗感が強い。「俺達のノウハウはもういらなくなるんじゃないか」という危機感があるためだ。

「実際はそうではありません」(中村さん)と指摘する。コマツのICT建機には、操作のためのデータとして、ベテランオペレーターの様々なノウハウが導入されている。素人でもベテラン並みの操作可能だが、ICT建機の能力をすべて発揮することはできないからだ。

「本当に優秀なオペさんが操れば、ICT建機の150%の能力を発揮できるんです。本当はベテランの方にこそ、ICT建機を使ってもらいたいですね」(中村さん)と心情を明かす。

「働き方改革」「生産性革命」「生産性の向上」などという言葉があるが、正直ピンとこない人もいるだろう。こういった表現は、抽象的だし、大仰に過ぎるからだ。それよりは、「自分の時間が増える」「早く現場が終わる」などの平易な言い方が、よほど伝わりやすいと思われる。

「ICTを使ったある現場監督さんが『現場に行く回数が減り、自分の時間が増えた。そのぶん他のことができるようになった。時間はお金では買えない。ICT建機に感謝している』とおっしゃっていました。これを聞いたとき、この仕事をしていて本当に良かったと感動しました。この感動を他の人にも知って欲しいという思いで、今の仕事に打ち込んでいます」(中村さん)。

コマツカスタマーサポート株式会社 中村恵美(エミー)と森山美保(モリー)

「興味はあるし、トータルコストは安くなると言われているけど、やっぱりICT建機は高い」などと自己規制をかけている経営者の方々にこそ、最寄りのIoTセンタに足を運ぶことをオススメする。「感動」するのはタダだからだ。

子供連れで、ちょっと遊びに行く感覚ぐらいがちょうど良いだろう。九州のIoTセンタで2人を見かけたら、「エミー」「モリー」と声をかけて欲しい。きっと喜ぶに違いない。

ピックアップコメント

頭の固いおじさんでも、女性の話は聞くよねー。もちろん、そんな考え方はこの時代に大声では言えないけどね。

この記事のコメントをもっと見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
「コマツ vs キャタピラー」 あなたはどっち派?
「四足歩行ロボット」が建設現場を巡回開始 竹中工務店とフジタ
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
「上から目線はダメ!」徹底的に嫌われた現場管理者Aの顛末
非公開: 「映画館が騒然!」大型ショッピングモールの排煙設備工事で大失敗!
「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
モバイルバージョンを終了