左から内山建設の西口雄二さん、内山雅仁社長、増田 陽祐さん(手前)、黒木卓也さん

ベテランなのに工事実績ゼロ?内山建設の技術者育成方法

内山建設の技術者が語る、土木の面白さ

株式会社内山建設(宮崎県日向市)は、1955年に創業した地域建設業を営む会社。九州地方整備局や九州農政局、宮崎県などを中心に、地元宮崎で仕事を受注してきた。

2005年には「土木」だけでなく「建築」にも進出。民間受注にも力を入れている。内山雅仁社長は元銀行マンで、「社員が人として成長するための器(会社)でありたい」という考えのもと、技術者のスキルアップはもちろん、人間力向上にも力を入れているらしい。

内山建設で土木施工管理に従事する技術者3名と内山社長に、土木のやりがい、失敗、将来のヴィジョンなどについて語り合ってもらった。

地域建設業は貴重な雇用の場

大石(施工の神様 ライター)

まずは皆さんの自己紹介をお願いします。

西口さん(内山建設)

私は土木系大学を卒業した後、県外の建設会社に就職。中途で内山建設に入社しました。

西口 雄二さん

黒木さん(内山建設)

私は地元の工業高校の建築科を出て、専門学校に行きました。

その後、舗装会社に就職して、重機のオペレーターをやった後、内山建設に入りました。今は現場監督の勉強をしています。

黒木 卓也さん

増田さん(内山建設)

大学は哲学科で、論理哲学を学びました。

東京で営業の仕事をしていましたが、実家の鹿児島に帰り、内山建設に就職しました。

今は現場監督をやっています。

増田 陽祐さん

アフリカで柔道を普及した後、内山建設に入社

大石(施工の神様 ライター)

西口さんが内山建設に入社したいきさつはどんな感じですか?

西口さん(内山建設)

私は大学で衛生工学、廃棄物の研究をしていました。前の会社に入社した際、最初の配属先は岡山でした。その後、広島に異動しました。港湾など公共工事の現場仕事が多かったですが、大手ゼネコンの下請けなんかもやりました。

「宮崎に帰ろう」と思って、インターネットで仕事を探していたら、たまたま内山建設の求人を見つけて応募、入社したという感じです。


大石(施工の神様ライター)

黒木さんは?

黒木さん(内山建設)

私は内山建設に就職する前まで、「土木をやりたい」と思ったことはなかったんです。

海外で働きたくて、専門学校を卒業した後は、JICAの青年海外協力隊に入り、西アフリカ諸国で柔道の普及の仕事していました。

大石(施工の神様ライター)

柔道?

黒木さん(内山建設)

はい、高校で柔道をやっていて、三段でした。現地の軍隊や子どもらに柔道の指導をしていました。

ずっとこの方面でやっていきたかったんですが…。

大石(施工の神様 ライター)

なぜ断念したんですか?

黒木さん(内山建設)

子どもができたからです。宮崎県に帰らなければなりませんでした。

宮崎で仕事を見つける必要もあったので、地元の舗装会社に就職しました。内山建設に義理の兄がいたのですが、兄に誘われて内山建設に転職しました。

大石(施工の神様ライター)

異色ですね…。

増田さんが内山建設に入社した理由は?

増田さん(内山建設)

私はバルブメーカーで営業をしていたのですが、東日本大震災をきっかけに、「田舎に戻ろう」と思いました。

たまたま内山社長に声をかけられて、内山建設に就職しました。まったく経験のないところへの転職でしたが、当時は特に気にしなかったですね。

ただ、最初は事務の仕事からのスタートでした。今は現場に出るようになりましたが、まだまだド素人です。

大石(施工の神様 ライター)

印象に残っている現場は?

増田さん(内山建設)

やはり最初の現場、県発注の盛土工事の現場ですね。

知らないことばかりでしたが、隣の工区や地元の方々とうまく付き合いながら、仕事を進めていくのが面白かったです。

「失敗しても良い」と現場に放り出す

大石(施工の神様 ライター)

黒木さんは、現場監督をやってみていかがですか?

黒木さん(内山建設)

何もわからない状態のまま、県発注の林道開設工事の現場監督やりました。毎日が目まぐるしく、修羅場でした(笑)

その分、これまでで仕事の密度が濃く、一番勉強している実感がありました。

大石(施工の神様 ライター)

内山社長、素人のまま現場に出す狙いは?

内山社長(内山建設)

黒木君は一応、監督補佐という立場ですが、「失敗しても良い。一生懸命やれ」という基本的に一人で放り出しています(笑)

初めてなので大変だと思いますが、一人で全部やる経験を積んで、早く独り立ちして欲しいということですね。

大石(施工の神様 ライター)

それでなんとかなるんですか?

黒木さん(内山建設)

6月に完成検査が終わり、無事納品できて、ホッとしています。

ちょっとは施工管理とはどういうものか、見えてきたかなという感じです。今年、1級の施工管理技士の資格を受ける予定です。


工事実績ゼロのベテラン技術者

大石(施工の神様 ライター)

西口さんはベテランですが、記憶に残る現場とかは?

西口さん(内山建設)

実は私、内山建設では最初から最後まで一つの現場にずっといたことがないんです。

大石(施工の神様 ライター)

え?

西口さん(内山建設)

忙しい現場に、途中から入ることが多いです。なので、いろいろな工種の経験はできましたが、工事実績はゼロです(笑)

トンネル工事以外は、ほぼすべて経験しました。

大石(施工の神様 ライター)

内山社長、どういう理由で?

内山社長(内山建設)

本当は、西口君にも、一つの現場を最初から最後までさせてやりたかったのですが、仕事ができるので、お助け的な存在として、つい便利にお願いしてしまいました。頼んだら、「イヤ」と言わないので(笑)

現場の人員配置は、計画性をもって行うのがベストですが、実際はなかなかできません。現場の難易度、補佐できる人間がいるかなどを考慮しながら、そのとき配置できる人間を入れることになります。

大石(施工の神様 ライター)

技術者の育成で気をつけていることは?

内山社長(内山建設)

一番は現場経験を積ませることですが、その他で意識的に行っているのは、他社の技術者との交流です。

県内の技術者同士だと、ふだんの仕事で競合するので、交流は難しいですが、県外の技術者だとそういうことがないので、積極的に交流するよう社員に働きかけています。

大石(施工の神様 ライター)

それと資格取得?

内山社長(内山建設)

それもあります。この3人はやる気があるので、すごく期待しています(笑)

黒木さん(内山建設)

……

増田さん(内山建設)

……

西口さん(内山建設)

……


労災事故は正直に報告、それは失敗ではない

大石(施工の神様 ライター)

黒木さんは、これまでに失敗したことは?

黒木さん(内山建設)

失敗というわけではありませんが、私を含め、35才以下の社員で若手会というのを組んでいて、採用のための企業説明会などに参加しているんです。

自分たちなりにいろいろと工夫をして説明会に臨んでいるのですが、何回やっても誰も集まりません(笑)。どうすれば良いかわからない。失敗というか、悩みですね。

内山社長(内山建設)

人の勧誘などに慣れていないので、それは仕方がないです。

若手に会社説明会を任せているのは、「自分の会社について考えて欲しい」という思いがあるからです。彼らは今のところ、その辺の制度はかなり荒いですが、引き続き任せるつもりです。

大石(施工の神様 ライター)

増田さんは?

増田さん(内山建設)

最初に経験した盛土工事の現場の話ですが、シラスを盛って道路を作り上げたら、台風が来て、大量のシラスが田んぼなどに流れ出してしまいました。シートで養生していたのですが、総雨量500mmの豪雨だったので…。

いくら備えをしても、ダメなときはダメだなと学びました(笑)。シラスをもとに戻して、稲刈りも手伝って。現場としては失敗ですが、個人的には面白かったです(笑)

ICT施工、海外現場、もっと仕事を面白く

大石(施工の神様 ライター)

これからやってみたい仕事は?

西口さん(内山建設)

まだ経験がないので、トンネル工事をやってみたいですね。付帯工事でも良いので。

そして、自分が経験したことを後輩たちに伝えていきたいです。私も年をとってきたので、頭でやり方は分かっていても、手がついていかないようになりつつあります(笑)。

自分の知っていることを後輩に教えて、後輩にやってもらう。今後は人に教えることも、自分の仕事になると考えています。

黒木さん(内山建設)

自分は今のところ、林道開設工事しか経験がないので、やりたい仕事はいっぱいあります。

県外で、元請けとして大きな現場の監督をしてみたい、海外でも仕事がしたいという思いがあります。

増田さん(内山建設)

私は会社でICT関係を担当しているので、近々、施工管理ソフトとかドローンを導入することにしています。

建設現場へのICT導入は今後当たり前になると思うので、ICTをしっかり使いこなせる技術者になりたいですね。

内山社長(内山建設)

ICT施工に関しては、遅ればせながら、うちの社員もやっとみんなその気になってきています。

ドンドンやって欲しい。仕事がもっと面白くなると思っています。

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