【i-Constructionの本音6】地域建設業こそ立ち上がれ!あり得ない「利益率」を出せるi-Construction

i-Constructionの本音:地場建設業こそ、いま立ち上がれ!

建設業は変わらなければならない局面を迎えているが、実は大手ゼネコンよりも地方建設業のほうが適切なi-Construction活動を進められるのではないか、という内容で今回はお届けしたい。

i-Construction大賞(第2回)の受賞者が発表されたのは2018年12月25日。12月25日に発表するなんて、なんという粋な計らいであろうか。誰もがたまたまだと思っているようだが、かなり意識した発表時期であろう。

i-Construction大賞の受賞者は次の通りだった。

第2回 i-Construction大賞受賞者一覧(平成30年度)

〇直轄工事/業務部門

NO 表彰の種類  業者名  工事/業務名 発注
地整等
1 国土交通大臣賞 株式会社加藤組 国道54号下布野歩道工事 中国
2 優秀賞 宮坂建設工業株式会社 一般国道274号 清水町 石山南改良工事 北海道
3 優秀賞 株式会社佐藤工務店 中野地区道路改良工事 東北
4 優秀賞 水郷建設株式会社 H28西浦右岸大岩田地区築波浪対策護岸工事 関東
5 優秀賞 株式会社小島組 H29 鹿島港外港地区中央防波堤付属施設築造工事 関東
6 優秀賞 国際測地株式会社 平成28年度上尾道路敷地調査他業務 関東
7 優秀賞 共和土木株式会社 平成29年度浦山縦工他工事 北陸
8 優秀賞 中日建設株式会社 平成29年度 庄内川下之一色しゅんせつ工事 中部
9 優秀賞 株式会社おかむら 平成29年度 名古屋港庄内川泊地外浚渫工事 中部
10 優秀賞 株式会社吉川組 精華拡幅乾谷地区橋梁下部他工事 近畿
11 優秀賞 株式会社大竹組 平成28年度 大谷地区改良工事 四国
12 優秀賞 岡本建設株式会社 踊瀬地区道路改良工事 九州
13 優秀賞 株式会社大寛組 平成28年度港川地区改良外工事 沖縄
14 優秀賞 高砂熱工業株式会社 経済産業省総合庁舎別館改修 (16)機械設備その他工事 官庁営繕

〇地公体等工事/業務部門

NO 表彰の種類 業者名 工事/業務名 発注者
15 国土交通大臣賞 田中産業株式会社 一般国道253号(三和安塚道路)本郷サーチャージ盛土(その2)工事 新潟県
16 優秀賞 戸田建設・鹿内組特定建設工事共同企業体 青森空港整備事業滑走路・誘導路改良工事 青森県
17 優秀賞 小川工業株式会社 社会資本整備総合交付金(河川) 工事(護岸工) 埼玉県
18 優秀賞 株式会社正治組 平成28年度[第28-D7313-01号](一)静岡港韮山停車場線防災・安全交付金工事(長塚橋橋脚補強工) 静岡県
19 優秀賞 八木建設株式会社 H28阿土 南部健康運動公園 阿南・桑野他 陸上競技場整備工事(担い手確保型) 徳島県
20 優秀賞 増崎建設株式会社 一般県道諫早外環状線道路改良工事(盛土工10) 長崎県

〇i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門

NO 表彰の種類 取組団体名 取組名 本社
所在地
21 国土交通大臣賞 株式会社政工務店 平成29年度における株式会社政工務店の取組 佐賀県
22 優秀賞 ライト工業株式会社 道路盛土直下の地盤改良工事におけるICTの利活用 東京都
23 優秀賞 株式会社コイシ UAVによる除草工事の出来形管理について 大分県
24 優秀賞 一般社団法人Civilユーザ会 一般社団法人Civilユーザ会のBIM/CIM推進への取組み 東京都
25 優秀賞 フタバコンサルタント株式会社 i-Constructionの取組み 福島県

多くの受賞者が地方の建設会社や建設コンサルタントだった

第一回目のi-Construction大賞は、各地方整備局の推薦の中から選ばれた案件ばかりだったが、第二回目の受賞者は各地方整備局からの推薦だけではなかった。地方公共団体等が発注した工事/業務での元請け企業の取組や、i-Construction推進コンソーシアム会員の取組など、受賞対象が大きく拡大した。

さらに注目すべきは、各地方整備局からの推薦案件以外は、すべて自薦他薦問わずとなっている点である。自薦された団体や工事/業務は、どのくらいあったのであろうか。

特に私が注目したいのは、これらの自薦他薦を含め、多くの受賞者が地方の建設会社や建設コンサルタントだったということである。

大手企業はなぜ出さないのか。多分出さないのではなく、出すだけの十分なi-Constructionへの実質的な取り組みが少ないのではないかと推察する。

i-Construction推進のためには、外注だけではだめなのであり、自ら実施し、自ら感じ経験し、その過程を理解した人こそがたどりつける領域なのである。


地方建設業の画期的なi-Constructionによる利益向上

実際に今回i-Construction大賞を受賞した各社の取り組みを再度見直してほしい。

例えば、受賞番号15番の田中産業は、

  • 法面整形に使用したICTバックホウを盛土材巻きだしの高さ管理に活用することで、ブルドーザ敷き均し 作業の効率化を図り工期短縮を実現

という内容だが、ICT建機は今や巨大な測量機であるという概念が定着しているからこそ、このような取り組みを思いつき、従来のような丁張前提の作業内容を大幅に変えた内容である。

田中産業の取り組み事例。単なるICT重機によるMGやMCを使うのではなく、ICT重機が正確な測量機器であることを理解して、通常行う業務の流れを変えた。国土交通省「i-Construction大賞受賞取組概要(地公体等発注工事/業務部門)」より

ICTベンダーには思いつかない画期的なICTツールの活用

さらに受賞番号18番の正治組に至っては、すでにICTツールの肝を理解していると思われるような取り組みを行なっている。

正治組は、

  • 土工のICT施工に加えて、橋脚補強工(ポリマーセメントモルタル吹付)においても、地上レーザースキャナによる3次元計測を行い、出来形管理の効率化と精度向上を推進。プレキャスト構造物設置においても3次元データを活用

という内容で、単なる測量ツールの活用だけにとどまらず、出来形管理まで発展させ、その効果を実証し見せている。

これこそまさにICT活用がもたらす画期的な取り組みであり、一般的なICTベンダーや、通り一辺倒な取り組みしかできない企業では思いつかないであろう。

正治組の取り組み事例。ICT重機の活動だけにとどまらず、点群データの活用がどこまでできるのかを追及した事例であり、土工以外では使えないのかという疑問に対して、どこまでできるかを挑戦した事例だと思われる。国土交通省「i-Construction大賞受賞取組概要(地公体等発注工事/業務部門)」より

このように一部の先進的な企業では、すでにi-Constructionの普及展開という時期は終わっており、各種ツールを活用して、言われなくても効率を上げている。

多分、誰も口をつぐんで言わないであろうが、利益率は従来の建設事業ではありえない状況となっている場合も多いと推察する。

ここではあえて「推察する」としか言わないが、実際に実施した経験のある会社や、すでにICTを武器として活用できている会社はよくわかるはずである。

このようにすでにICTは単なるツールからすでに「利益向上のための武器」として浸透しつつあるのは地方建設業の方々だと、心底実感する。


i-Constructionを牽引する地方建設業

i-Constructionの取り組みは、いままさに地方の建設会社が中心となり、制度拡張やさらなる技術発展も含めて引っ張っている。

大手企業よりも地方建設業のほうが「普段使いできるICT」の使い方を見つけてきており、そのような使い方を考えられる発想の転換、柔軟な思考回路を持っている。

前向きなチャレンジ精神を含め、「何をするか」ではなく「何ができるのか」「どこまでできるのか」という流れを作り上げる彼らのパワーこそ、日本の建設業全体を支える源のような気がする。

これらの先進的な取り組みについて、全国の建設業は真摯に受け止め、自らの取り組みをさらに見直し、「何ができるのか」「どこまでできるのか」を自らのこととして考えよう。そうすることが、次のi-Construction施策につながっていく。

そしてぜひ、あなたも第3回目のi-Construction大賞に応募してはどうだろうか。大賞や受賞されることを祈る!

・・・次回は「i-Constructionの第二章は始まっていた」と題して書いてみたい。あくまでも私見であるが、どんな結論に到達するか、楽しみである。

(つづく)

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バブル崩壊直前に施工会社に入社。施工会社では造成現場に従事し、測量をはじめ現場のノウハウを叩き込まれる。もちろん飲みにケーションなども叩き込まれ、土木の世界に引き込まれる。土木の世界に魅了されるも、もうちょっとスマートな施工管理がしたいと独学でICTを勉強し、社内で数々の変革を起こしたため異端児扱いになる。それでもめげず、どんどん独自ワールドを構築し、今や施工管理でのICT活用は当たり前。最近ではさらなるICTツールの展開や活用を進めるためワールドワードで情報収集中。
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