サイトウホーム株式会社 代表取締役 斎藤浩司氏

建設アプリを上手に使って年商4億円。売上毎に見る建築会社の経営課題とは? 【サイトウホームの成功事例】

名古屋の建築会社、年商4億円に到達して見えた景色と壁

最近では、大工修行でも珍しくなった「墨付け」や「刻み」。

自然素材を多様する“本物”の家作りを習得した斎藤浩司氏は、大工修行の後、現場監督を経て、サイトウホーム株式会社を設立した経歴を持つ。独立起業した背景には「偽物の家づくり」に対する不満があった。

サイトウホームは創業13年目の2019年に、売上4億円を達成。売上規模に応じて、様々な困難に直面したと斎藤社長は振り返る。

売上5000万円、1億、3億、4億・・・と各段階で直面した経営課題について、サイトウホームはどう解決してきたのか。売上を伸ばした手法、おすすめのアプリについても、斎藤社長が赤裸々に語ってくれた。


売上5000万円時代の課題は「接客」、御用聞き営業から脱却

——まず、会社設立の経緯を教えてください?

斎藤浩司 私は24歳で大工になり、その後、建築会社の現場監督、リフォーム会社での勤務を経て、2006年にサイトウホームを設立しました。

現場監督として就職した建築会社は、不動産と住宅をセットで販売する、いわゆる建売屋で、私が大工修行時代に学んだ「本物の家づくり」とは、まったくかけ離れた仕事をする会社でした。

たとえば完成間際の新築現場を点検すると、刺激臭がひどく、目が充血するほどでした。そこで当時の社長に尋ねたら、「3カ月もしたら消えて馴染んでいく。お客さんに聞かれたら、そう答えなさい」と言われました。明らかにシックハウスです。

その後、新築だけでなく、リフォームも学びたいと考え、リフォーム会社に転職しましたが、そこも床材は合板フローリング、壁と天井はビニールクロスという、新建材を使った家づくりでした。大工修行をしていた私にとって、どちらの会社も「偽物の家づくり」だと感じていました。

やがて、大工修行時代にあこがれていた「本物の家」を作りたいというフラストレーションが溜まって、独立を決めました。サイトウホームを開業した理由は、自然素材をふんだんに使った「自分が住みたい家」を建てるためでした。

——独立して経営者になったばかりの時は、どんな悩みがありましたか?

斎藤 ずばり営業です。実は大工になる前は、18歳から中古車販売の営業をしていました。常に上位の成績を収めていたので営業力には自信がありましたが、建築の営業は、できあがった商品を販売するだけではなく、要件定義やお客様と期待値を合わせることがとても大切になります。

経営者として会社の売上を考えると、まずはどうにか実績を積まないといけないため、最初の頃はお客様のいいなりになっている状態でした。

契約件数は日に日に上がる一方、工事後にお客様の期待に応えられなかったり、トラブルになることもありました。

目の前の売上に囚われるあまり、お客様に満足を提供できない。そんな状況でした。

——それでは会社を作った意味がない、と。

斎藤 はい。そう思い、一人ひとりにあわせて丁寧に提案し、期待値をあわせるなど、慎重に、お客様に向き合うスタイルに変更しました。

そうすると、やはり下手に出る営業スタイルの時よりも、契約件数自体は減りましたが、あきらかにお客様との関係や紹介率が向上しました。

提供できる価値も高くなると、お客様からも信頼いただけるようになり、自然と同じ目線で対話ができるようになりました。

——売上5000万円ぐらいの時は、 御用聞き営業からどう脱却できるかが壁だったと。

斎藤 短期的な売上と長期的に形成される売上、このバランスがとれるようになるためには多くの実績を積むことが必要だと思っています。

ただし、万が一ご迷惑をおかけしたお客様には真摯に、信頼を回復できるまで損をしてでも愚直に接するということが必須だという点は強調しておきます。

失敗に対しての向き合い方が実績の質を決めると考えています。


売上1億円時代の課題は「集客」、インターネット活用で売上倍増

——売上5000万円から、1億円に伸ばすのは苦労しませんでしたか?

斎藤 案件や既存顧客からの紹介も増えていき、より現場活動に注力をしたいと感じていたタイミングで、自社サイトに対して力を入れました。

新規の営業が得意なのは、現場では私だけだったのですが、いつまでも自分で営業を続け、営業スタッフを雇うというのは、目指したい組織とは違うものでした。

私は1件ずつお客様に満足をいただけるように、「自分が建てたい家しか建てない」ことをモットーに、請けたい案件だけに集中をしていくプロ集団を作りたいと思っています。

そこで、現場の仕事に集中するために、自社サイトの対策を強化することにしました。足で案件を作っていた自分にとってインターネットでの集客は懐疑的でしたが、インターネット活用の波には抗えないと感じていました。

——具体的にはどのような対策を?

斎藤 独学で自社サイトの検索対策を行いました。具体的にはブログを書く、更新を怠らないなど地道な作業で、本業との時間配分に苦戦しました。結果、毎日更新をしなくても月10件程の問い合わせが入るようにまでサイトが成長しました。

しかし、自社サイトは頻繁に記事の更新が必要です。そこまで労力をさけないと思った時に始めたのが、リスティング広告です(※リスティング広告とは、予め露出地域、検索キーワードを決めて決まった予算内でYahoo、Googleの検索エンジンで広告表示をするシステム)。月3万円の広告費で1千万円程の利益がでました。

また、広告としてマッチングサイトも使いました。一括見積もりサイトから依頼が来て、応札して案件の対応をするサービスです。仲間からは相見積りがひどく、紹介料だけかさむという悪評を聞いていましたが、ちょうど営業を受けたので、営業マンを1人雇うより安いと思い、1年間試してみることにしました。

実際に使ってみると、噂どおり、基本は相見積りの案件でした。ただ、相見積りの相手は期日通りに見積りを出さなかったり、十分な説明をしていなかったり、顧客対応の成熟レベルが低い方もいたので、ありがたいことに結果を出すには、そこまで苦戦しなかったのが正直なところです。

自社サイト、リスティングからの売上構築に加え、マッチングサイト単体でも年間1億円の売上につながりました。

——おすすめのマッチングサイトはありますか?

斎藤 うちの会社はいろいろ試した結果、「リフォマ」というサイトが一番相性がよかったです。インターネットの活用は業者に丸投げするだけでは絶対にだめです。漬け込まれて不必要な費用を払ってしまう仲間も目にしました。

経営をする際に学ぶのと同じで、自分が投資する対象については、たとえ専門領域でなくても学ぶ、詳しい方に話を聞くことが必要です。

自社サイト、広告、SNS活用などの集客方法を活用しながら、口コミのお客様を増やしていく、オフラインとオンラインのバランスをうまくとっていくことの大切さを学びました。


売上3億円時代の課題は経営判断。リスクをとった東京進出

——売上1億から3億に伸ばす際の課題は何でしたか?

斎藤 工事案件も増えていき、次に直面したのは現状維持をしているのではないか、という自分の中での葛藤です。経営が安定し始めたことをきっかけに、次の展開を考えはじめました。

そこで、かねてから目標にしていた東京進出の計画を前倒しすることに決めました。

正直もう少し経営基盤が安定してから次の一手を打つべきかと悩みましたが、波に乗っている実感があったので、マッチングサイト経由(リフォマ)で東京案件を紹介してもらい、東京での実績を増やしました。

——東京に進出した際の課題は?

斎藤 もともとウチは名古屋の会社なので、東京のお客様と商談をする際に、アフターメンテナンスについて不安に思われる方がいらっしゃいました。安くない買い物ですから、不安に思うのも当然だと思います。そこで今後も東京で工事の幅も広げるために、思い切って東京にオフィスを構えることを決心しました。

今では東京でデザイン事務所と一緒に仕事をする案件も増えてきています。名古屋で有名なデザイナの方も一緒に東京進出をしたいと希望してくださり、いいタッグを組めています。

経営判断のタイミングは多々ありますが、うまくいっているタイミングで勝負をかける重要さを身をもって体験しました。


売上4億円時代の課題は職人育成。育てないという決断

——東京進出を果たし、売上4億を達成するまでの課題は何でしたか?

斎藤 東京進出の次に直面した課題は人材育成でした。新たにスタッフや、良い職人を確保したいのですが、職人さんを雇用すると育成に時間がかかります。手前味噌ですが当社の施工技術は誰でもすぐに真似のできる内容ではありません。

例えば、継ぎ目を目立たなくする構造をつくるなど、納まりのきれいな、シンプルに作り上げる工事は、見た目のクオリティーと工事レベルを合わせることが必要になる高難度の工事です。

技術はもちろん、仕事への取り組み方、マインドも大切です。工事件数に応じて多くの職人さんを一度に雇用すると、工事の質が落ちることは目に見えています。

——それはサイトウホームの理念に反しますね。

斎藤 そこで決断したのは、正社員の数は最小限にとどめ、時間をかけてプロに育てる、そして既にスキルとマインドを持った職人さんに都度協力していただく、というスタイルです。

ツクリンク、ローカルワークスサーチなどのサービスを使って職人さんと面談し、協力会社を開拓しました。当社は最近、balboa studioという店舗案件を専門に扱うブランド展開に力をいれており、美容室や飲食店の施工事例を増やしています。

balboa studioのサイトをご覧になった方々、パース、積算とそれぞれの領域でプロとして活躍している方々から直接一緒に働きたいとお声がけいただけるようになりました。

そんな仲間が増えていく中で気をつけていることとして、一度仲間として働いてくれた方々自社雇用であろうとそうでなかろうと、長くお付き合いいただけるよう環境を整えること、気持ちよく働いてもらえるように最善を尽くすことです。

今後も自分や自分以上の人材を育て、素晴らしい出会いによって自分も会社も成長していきたいです。

■サイトウホーム株式会社
代表取締役:斎藤 浩司
住所:〒461-0025 愛知県名古屋市東区徳川2-11-5Green徳川R
電話番号:052-934-7581
会社ホームページ:http://www.saitouhome.com/
店舗専門サイト:https://www.balboa-studio.com/

ピックアップコメント

ウェブも勉強しないとかー

この記事のコメントをもっと見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
「ゼネコンより商社が劣るワケ」海外建設プロジェクトのウラ事情
「二級建築士は結局、二流なんだよ!」北方謙三を愛読するパワハラ上司を攻略した、新入社員の女傑設計士
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
「一族役員を切り捨て、社員の“頭の中”を変える」70人で100億円以上を売り上げる小竹興業の経営大改革とは?
「まるでバイオハザード」もう一つの“放射線施設”解体工事
「入社2年で現場代理人、5年で所長」100億円企業に変貌した加和太建設の”圧倒的当事者意識”
施工の神様とは、株式会社ウィルオブ・コンストラクションが運営する、「現場目線」の情報を伝える新時代の建設メディアです。

建設業では、しばらくの間、現場の「生の声」が置き去りにされてきました。
長らく3Kと呼ばれてきた建設業は今、国土交通省主導による働き方改革やi-Construction、若手人材の確保育成、資格制度の見直し、地域防災の観点などから、大きな変革期を迎えています。
施工の神様は、施工に関する技術やノウハウ、体験の共有・伝承・蓄積という側面に加え、実際に建設現場で働く建設技術者・技能者の生の声を、建設業界および世間一般に伝えるという役割も積極的に担ってまいります。

個人・企業を問わず、取材してほしい方・執筆協力いただける方・PRしたいことがある方を募集しています。 お問い合わせはこちらへ。
  • 施工の神様
  • インタビュー
  • 建設アプリを上手に使って年商4億円。売上毎に見る建築会社の経営課題とは? 【サイトウホームの成功事例】
  • 施工の神様
  • 技術を知る
  • 建設アプリを上手に使って年商4億円。売上毎に見る建築会社の経営課題とは? 【サイトウホームの成功事例】
モバイルバージョンを終了