株式会社オアシススタイルウェア 代表取締役の中村有沙さん

タピオカブームの火付け役は、水道工事会社だった!「デートに着て行ける作業着」も発売し賛否両論

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タピオカにアパレル。異業種に参入し続ける水道工事会社

「タピオカ」と「アパレル」で躍進している水道工事会社がある。

株式会社オアシスライフスタイルグループ(東京都港区)は、長らくマンションの給水管メンテナンスを中心とした水道工事が本業だったが、たまたま台湾で出会った本場の”タピオカミルクティー”に魅了され、2013年に台湾カフェをオープンした。

まったくの異業種からの挑戦だったが、昨今のタピオカブームの火付け役として、若い女性たちから絶大な支持を得る超人気店に成長。今や、本業である水道工事の売上規模を超える会社の柱に成長した。

さらに、同社はアパレル業界にも参入。2018年に、世界初の”スーツ型作業着”「ワークウェアスーツ」を発表した。

従来の作業着のイメージからあまりにもかけ離れたデザインに、建設業界内外から多くの否定的な意見が寄せられた。しかし、今では200社以上が導入し、作業着の新たな選択肢として、地位を確立しつつある。

独特の着眼点で進化を続けるオアシスライフスタイルグループだが、その成功の秘訣はどこにあるのか。ワークウェアスーツの発案者であり、グループのアパレル部門「株式会社オアシススタイルウェア」で代表取締役を務める中村有沙さんに話を聞いた。

タピオカミルクティー発祥のカフェ春水堂を口説いて輸入

株式会社オアシススタイルウェア 代表取締役の中村有沙さん。東大を卒業後、株式会社オアシスソリューションに入社し、水道工事の営業をしていた異色の経歴

――手広く事業を展開されていますが、元々はどんな会社でしたか?

中村 主にマンションの給水管のメンテナンスを手掛ける水道工事会社です。グループ代表の関谷有三が、宇都宮にある実家の水道会社から独立して、2006年に株式会社オアシスソリューションとして創業しました。

私も新卒で入社し、4年ほど水道工事の営業をしていました。

――新規事業を始めたきっかけは?

中村 全国に支店もできたタイミングで、さらなる事業拡大を目指すために「次は海外に進出しよう」ということになりまして。

色々な国を検討した結果、親日国でマンション建設も好調な台湾への進出を目指すことが決まりました。

それで現地へ視察に行ったんですが、たまたま立ち寄ったある台湾カフェの雰囲気や接客、タピオカミルクティーの味に関谷が惚れこんでしまったんです。

そこで、水道工事で世界進出することは一旦置いといて(笑)、この台湾カフェを日本で展開しようということになりました。

――そのカフェはどんな店だったんですか?

中村 「春水堂(チュンスイタン)」という、タピオカミルクティー発祥の老舗です。

春水堂は、台湾国内で50店舗以上展開されている老舗の国民的カフェなんですが、国外には一切進出していなかったんです。

当社には飲食のノウハウはありませんでしたが、関谷が何度も台湾に渡って、2年半かけて何とか現地のオーナーさんを口説き落としました。

そして、春水堂と合弁会社「株式会社オアシスティーラウンジ」を立ち上げ、2013年に代官山に日本初オープンしました。

大行列の春水堂・代官山店 / オアシススタイルウェア

――タピオカのカフェをやると決まったときの社内の反応は?

中村 今でこそタピオカブームが再燃していますが、当時はみんなポカーンとしてましたね。

関谷も水道工事部門は事業部長に任せて、ずっとタピオカに傾倒していましたし、最初の2年間は苦戦していたので、社内では「何やってんだよ」みたいな空気はありました(笑)。

夏季限定の「マンゴーティーシリーズ」。鮮やかなオレンジ色がインスタ映え / オアシススタイルウェア

――運営はうまくいっている?

中村 国内13店舗を展開していて、売上規模も水道工事部門を超えました。従業員数もグループ全体で200人ほどの社員を抱えていますが、そのうち半数の100人がカフェ部門で働いています。

今や、水道工事とタピオカが事業の2本柱です。

“デートに着て行ける作業着”がコンセプト

――水道工事とカフェが好調の中、アパレルに参入した理由は?

中村 2016年の創立10周年というタイミングで、何か記念事業やろうということになりました。

その時、私は営業を辞め、水道工事部門の人事を担当していたのですが、なかなか現場の技術職に就きたいと考える若手は少なく、採用活動にかなり苦戦していました。

人事として少しでも採用にプラスになる施策はないかと考えを巡らせた結果、会社や仕事のイメージを良くするために自社の作業着をリニューアルすることを思いつきました。

――どんな作業着を目指した?

中村 最初は、若者ウケするカジュアルな短パンだったり、ストリートファッションなどのアイデアも出ました。

ただ、水道工事はお客様のご自宅に上がって、コミュニケーションを取りながら施工を進めていくことも多いので、あまりカジュアルに寄りすぎてもダメだという意見も出たりして。段々と開発は行き詰っていきました。

そんな中、技術職の若手から「営業さんはスーツだから、そのまま飲みに行けていいね」という話をしているのを聞いたんです。

それなら、「仕事終わりにそのままデートに行ける作業着にしよう」と。そこで女性社員に”どんな服装の男性とデートしたいか”聞いてみると、私も含めてみんなジャケットやスーツと答えたんです。

こうして”スーツ型の作業着”というコンセプトが決まりました。

――どのように開発を進めた?

中村 OEMをやっているアパレルメーカーと私を含めた社内の3~4人の女性社員のチームで、2016年から開発を始めました。

“スーツ型の作業着”と言っても、使いやすくないと意味がないので、試作品を作っては現場の社員に着てもらっての繰り返しでしたね。

動きやすさだけじゃなくて、そのまま洗濯機に突っ込んでもシワになりにくいとか、形状記憶素材でアイロンを掛けなくていいとか、速乾性があるとか。あとは、水道工事という性質上、防水性も高めたりして。

当時は商品化するつもりはなかったので、期限は決めずに自分たちが納得するものを作ろうとじっくりと開発を進め、2017年の秋ごろに完成し、自社に導入しました。

ワークウェアスーツを着ての作業 / オアシススタイルウェア

――社内での反応は?

中村 最初は社内でも反対の声が多かったですね(笑)。「スーツで作業できるわけない」とか「ジャケットだと、逆に汚れが気になる」とか。

また、スーツに合わせて髪型などの身だしなみもちゃんとするようになりました。ちゃんとワックスとか付けるようになって(笑)。良いことではあるんですが、「めんどくさい」という意見も多かったです。

ただ、1~2カ月経つと、「前の作業着より動きやすい」といった声が大きくなって、不満はほとんど無くなりましたね。

「現場ナメんじゃねぇ!」と賛否両論

――商品化のきっかけは?

中村 現場で着始めたところ、同業他社さんや取引先から「それ、どこで売ってるの?」という声をたくさんいただきました。

また、三菱地所コミュニティさんからは「高級マンションの管理員さんの作業着として導入したい」というお声掛けもいただいたんです。

それで慌てて「オアシススタイルウェア」という会社を作り、急いで販売体制も整えて、2018年3月から「ワークウェアスーツ」として販売を開始しました。

広報部の素原勇人さんが着ているのは、ベーシックタイプのテーラードジャケット。普段使いしても違和感がないデザイン

――リリース後の反響は?

中村 賛否両論でしたね。否定的な意見だと、「現場をナメんじゃねぇ!」とか「作ったヤツは現場を知らないだろ!」とか。色々な声が寄せられました。

一方で、「まさに、こんな作業服が欲しかった」という意見もたくさんいただきました。

ただ、反響はかなり大きくて、発売から1カ月で法人からの問い合わせは300件以上ありました。

これだけの反響は予想していなかったので、最初の1年間は欠品続きで、生産体制を整えるのが大変でしたね。

――どんな人が買っている?

中村 建設業だと、施工管理や設計の方が多いですね。あとは現調にも行く営業マンだったり。年齢層だと40代が多いですが、20代から60代まで幅広く着ていただいています。

他にも、清掃会社や運送会社、さらには学校の先生や結婚式場など、業界を問わず全国で200件以上の法人のお客様に導入いただいています。トップダウンで支給するなど、福利厚生の新しいカタチとしてもご活用いただいていますね。

――法人のほうが多い?

中村 個人で買われる方も多いですよ。割合でいうと、法人と個人で半々くらいです。

――狙いどおり、採用数は増えた?

中村 2019年度は、水道部門への新卒応募が前年度比で約3倍に増えました。

ただ、これはユニフォームが変わったことだけが要因ではなくて、ワークウェアスーツを通して、色々なことに挑戦できる面白い会社だということが伝わったことが大きいと思います。

「ワークウェアスーツ」で業界を変える

――今後の展開は?

中村 今はベーシックなセットアップが一番人気ですが、柄やカラーに遊び心を盛り込んだデザイナーズモデルも販売しています。また、6月からは新製品「究極の白T」も発売し、ラインナップの拡充を進めているところです。

ECサイトだけでなく、伊勢丹や原宿のセレクトショップなど、実店舗での取り扱いも始めたところなので、より多くの方に届けていきたいですね。

――ワークウェアスーツで目指すところは?

中村 設備工事業界は平均年齢が50~60代ととても高く、若い人材を採用することが非常に難しくなっています。とくに地方では、優良企業でも人が集まらなくて困っている会社が多いのが現状です。

「ワークウェアスーツ」を通して、少しずつ業界のイメージや現場で働く方々の意識を変えていくことができれば嬉しいですね。

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「施工の神様」編集部。元・建設業界誌の編集記者。建設業界の中でも陽の当たらない、解体工事やアスベスト除去、建廃処理、労働安全衛生を主なテーマに活動していました。
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