株式会社八重洲電業社の技術者の面々

「サブコンは残業が多い」は偏見! 定時で帰れる電気設備会社の「異例の働き方改革」とは?

「サブコンは残業が多い」という常識をぶっ壊す

世田谷の住宅街のど真ん中に、「サブコンは残業が多い」という常識を覆す電気設備会社があるという。

その会社は、八重洲電業社(東京都世田谷区)。1946年に設立した、老舗の電気設備会社だ。社員は20名ほどだが、1億円以上の公共工事を元請として手掛けるなど、年々事業の拡大を続けている。

この成長を支えているのが、同社が推進する働き方改革だ。

社員のワークライフバランスを最重要視し、月の残業時間は電気設備会社としては異例の20時間以下。社員の幸せと健康を最優先する様々な取り組みが認められ、若者の採用・育成や雇用管理が優良な中小企業だけが認められる「ユースエール認定企業」に、電気設備工事会社として初、都内の建設業者としても初めて認定された

しかし、表向きは「残業削減」を謳いつつも、実際には裏で社員にしわ寄せがいっている会社は少なくない。一般に残業が非常に多いと言われる電気設備工事会社で、本当にこんな働き方は可能なのか?

そこで、八重洲電業社で技術者として働く、ベテランと若手の3名に集まってもらった。

  • 名古屋さん(工事部課長、入社10年目)
  • 漢那さん(工事部主任、入社3年目)
  • 矢野さん(工事部、入社1年目)

彼らはどのような働き方をしているのか、実際のところを語ってもらった。

電気設備工事会社として初の「ユースエール認定」を取得

施工の神様

いきなり本題から入りますが、残業時間が月20時間以内って本当ですか?

名古屋さん

本当ですよ。納期の前後は忙しくなることもありますけどね。ならすと月20時間以内です。ここふた月くらいはほぼ残業もなく、17時半の定時で帰れていますから。

施工の神様

なんで残業が少ないんですか?

名古屋さん

会社の理念として、社員の幸福度の向上やワークライフバランスを最も重視しているんです。会社って、家族よりいる時間が長いですからね。そのためにも、「1人当たりの負荷をどれだけ減らせるか」を大きなテーマとして掲げています。

電気設備工事って、着工から竣工まで作業量に波があるので、どうしても残業が増えがちなんです。だから、忙しい時期は上長が部下の業務をサポートするなどして、会社全体で効率よく働くことを意識しています。

工事部課長の名古屋さん。入社10年目の43歳。

施工の神様

社員はそれほど多くない(取材時点で23名)ですよね? それで業務は回るんですか?

名古屋さん

これは営業面の話ですが、ウチは適正な利益と工期がある工事を受注することを大事にしているんです。特に、公共施設や官公庁、国公立大学など、1億円以上の案件を中心に受注できるように努力しています。

工期や金額的に厳しい案件ばかり取っていたら、社員にしわ寄せが来てしまいますから。

施工の神様

なるほど。助け合いの文化が根付いているということですが、社員同士の仲も良い?

名古屋さん

そうですね。人間関係もフランク…だよね?

矢野さん

私はまだ29歳で社内で一番若くて経験も浅いんですけど、意見を尊重してくれて。思いやりのある人たちが多い…じゃなくて全員思いやりがあります。

工事部の矢野さん。入社1年目の29歳。

施工の神様

社員を大切にする働き方は、昔からの文化ですか?

名古屋さん

私が入社した10年前くらいは、まだまだ昔ながらの電気設備工事会社って感じでしたね。

ただ、私が入社した当時と比べてスタッフも揃って、体制が整ってきたことも大きいですが、ここ2~3年で働き方がどんどん改善されてきました。

昨年には、厚労省から若者の採用や育成など、雇用状況が優良な中小企業に与えられる「ユースエール認定」を受けました。電気設備工事会社として初、都内の建設業者としても初だったそうです。「月平均の残業時間が20時間以下かつ60時間以上の正社員ゼロ」など色んな基準があって、けっこう厳しくて大変ですけどね。

まあ、まだまだこれからです。会社としても、今はどんどん売上を大きくするのではなく、社員の幸福度を上げていくことが最重要項目ですから。

漢那さん

確かに、休日はかなり融通が利きますね。有休も積極的に取得できるので、連休を取ることもできますし。

昔は電気工事士として土日も休みなく働いてたんで、ここが一番「転職してよかったな~」って感じるところかもしれません。

工事部主任の漢那さん。入社3年目の36歳。

名古屋さん

ユースエール認定には「有給休暇の年平均の取得日数が年10日以上、 または年平均取得率70%以上」という条件もあって、会社としても休日は積極的に取らせています。

第2、4土曜日は必ず休みですし、たま~に土曜に出なきゃいけないときも代休が必ず取れるんでね。そこはいいよね。

矢野さん

私も、「有休取りなよ」って皆さんから言っていただけます。プライベートの用事が全くなくて、まだ使ってないですけど。

名古屋さん

悲しいこと言うなよ(笑)。

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他の会社を受けるのがメンドくさくて何となく入社

施工の神様

みなさん、転職組と聞きましたが、どのような経緯で入社されたんですか?

名古屋さん

10年前に八重洲電業社に入社しました。地元は青森の八戸で、地元の大学を卒業した後、八戸にある父の友人の電気設備工事会社で11年ほど働いていました。

施工の神様

なんでわざわざ東京まで出てこられたんですか?

名古屋さん

スキルアップのためですね。上京して、技術者としての視野を広げたいな、と。多少自信もあったんでね(笑)。

ただ、最初は東京と地方の電気設備工事のレベルの違いにつまずきました。法規的な部分や、求められる仕様の高さだったり。社内の先輩や現場の職人さんから、少しずつ慣れていった感じです。

施工の神様

漢那さんは?

漢那さん

入社して3年目です。沖縄が地元で、大学では観光産業について学んでいました。

卒業後は色々な職を転々しましたね。まずはIT企業でプログラマーを、その後は不動産会社で営業をやりました。どっちも1年で辞めちゃいましたが…。

「そろそろ手に職つけないとまずいな」と思い立って、たまたま見つけた鉄道系の電気設備会社で、電気工事士を5年経験しました。

ただ、職人として働く中で、作業する側ではなく工事管理として働きたいなと思い、監理技術者を目指して転職しました。

施工の神様

矢野さんは?

矢野さん

入社してちょうど1年経つ頃です。

以前は、某全国チェーンの居酒屋で店長候補としてトータル9年ぐらい働いていました。ただ、このままだとちょっと将来が見えないなって感じるようになって。

施工の神様

なんで電気設備工事の技術者の道へ?

矢野さん

元々、興味があったわけではないんですけど、たまたま参加した合同就職説明会に八重洲電業社も参加していて。

そこで話を聞いてみたら、面白そうだなと。社長の人柄にも何となく好印象だったので、応募してみたらいつの間にか入社していました(笑)。

施工の神様

御社の社長の見た目って結構怖いですよね? 好印象だったんですか?

矢野さん

インパクトは強かったですね(笑)。最初は怖い方かと思ったんですけど、すごく社員想いの方で、話し始めて1~2分で怖い印象を壊してくれて。そのギャップにやられました。

真ん中に立っているのが社長の廣瀬誠氏。

施工の神様

名古屋さんと漢那さんは、どうして八重洲電業社を選んだんですか?

名古屋さん

もともと2~3社受ける予定で、ここが1社目だったんです。それがポンと決まって、改めて他の会社を受けるのも面倒くさかったので、まず手始めにお世話になりますって感じでしたね(笑)。

あと、当時は本社が世田谷区の三軒茶屋にあって、青森の田舎モンからすると「テレビでよく見るオシャレな街だ!」というのも大きかった(笑)。

こんな軽い感じで入ったんですけど、10年間もいるってことはあの時の選択は間違ってなかったってことですかね(笑)。

漢那さん

私は、電気工事の知識はありましたが施工管理は未経験だったので、なかなか採用してくれる会社が無くて結構苦労していたんです。

ただ、ここは「未経験でも、やる気があれば大丈夫」って言ってくれて。あと、その時面接を担当した部長が私と同じ沖縄出身で、運命を感じました。

施工の神様

お二人とも、八重洲電業社を選んだ明確な理由があったわけではないんですね?

名古屋さん

言われてみれば、そうですねえ(笑)。

ただ、大きい会社と違い一体感があって、それでいて大きい工事にも携われる、誰にでも成長できるチャンスがある会社だな、と今となっては感じています。

施工の神様

中途採用がメインなんですか?

名古屋さん

8割以上が中途入社ですね。色々な経歴を持った社員が集まってますよ。

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何か一つ武器を与えることで、若手は成長する

施工の神様

みなさんはどのような仕事を担当されている?

名古屋さん

私たち3人でチームとなって、某メーカーさんの浄水場の電気設備工事を中心に担当しています。

施工の神様

お二人の教育は、名古屋さんが?

名古屋さん

ええ。

施工の神様

OJTですか?

名古屋さん

そうですね。まずは動いている現場を一通り全部見てもらって、そこから適性を見て、配属先を決めます。ウチは転職組が多く、それぞれ持っている知識や技術が違うので、できるところから少しずつ仕事を任せていきます。

まずは何か一つ武器を持てるように、ということを意識していて、矢野については資料作成業務をすべて任せています。

自信が持てる仕事を一つひとつ増やしていくことで、やりがいというか、達成感を感じてほしいんですよ。それに、そのほうが私にとっても楽ですからね。

漢那さん

名古屋さんは「まずはやってみよう」ってスタンスなので、新しい仕事にもチャレンジしやすいですね。困ったらすぐにフォローしてくれますし。これでフォローが無かったらちょっとキツイんですけど(笑)。

名古屋さん

責任は私を含め上長がすべて負うので、まずやってみることが大事ですよね。

今は、矢野にもそれなりの裁量を持たせて、仕事を任せています。

漢那さん

私も、矢野くんを信頼しすぎて、色々投げちゃってますね。

矢野さん

私の場合は、漢那さんと違ってホントにド素人で、右も左も分からない状態でしたけど、私の目線まで下げてもらって本当に基本的な部分から教えていただきました。

ちょうど昨日、電気工事士の学科試験があったんですけど、そのサポートもたくさんしてくれました。会社で費用を負担してくれましたし、会社にある部品を貸してもらいながら、「こういう問題が出るよ」って先輩が教えてくれたりとか。本当にありがたいです。何より、合格したら御祝い金がもらえるので、何とか受かりたいです。

電気をいじれる人って、単純にカッコいい

施工の神様

電気設備工事のやりがいや魅力ってなんですか?

名古屋さん

前に在籍していた会社の社長の殺し文句に、「電気屋とは、まちを明るくする仕事である」というものがあるんです。

電気ってないと困りますよね。明るくなるというのは、ただ光が点いて明るくなるということではなくて、電気を通してまち全体が明るくなるって意味です。

そこに携わることで得られる責任感と達成感というのは、無二のものです。

施工の神様

漢那さんは?

漢那さん

やっぱり受電の瞬間ですね。どんな施設を建てたり、設備を更新しても、建物に電気が送られて初めて、設備が機能し始めます

その瞬間は、一大イベントというか。電気が無事通ったら、すごくホッとしますし、達成感があります。あの瞬間はたまりません。

施工の神様

矢野さんは?

矢野さん

まだまだ未熟なので難しいことは言えませんが、電気系をいじれる人って単純にカッコいいじゃないですか。ちょっと機械が壊れても、すぐ直せちゃう人とか。

電気ってこれからも無くなることのないモノですよね。それを自分の技術や知識で支えることができるのは、スゴイことだと思うんです。

施工の神様

電気設備工事の技術者に必要な能力は?

名古屋さん

まあ、ベタになりますけど、一番はやる気とコミュニケーションスキルですね。お客さんの施設で仕事をするので、外部とのコミュニケーションは必須ですし。

あと、現場も様々なので、臨機応変に学べる人が向いていますね。

もちろん、実務経験があると良いですけどね。資格を持っていたりとか。ただ、私自身も入社時点では電気工事施工管理技士の資格は持っていなかったので、そこは何とかなるんじゃないかな。

施工の神様

漢那さんと矢野さんは、これからどういう技術者になりたいですか?

漢那さん

今は一人で現場を持つことは出来ていないので、まずは一人で現場を持ちたいですね。もっと大きな現場を回せるように頑張ります。

矢野さん

名古屋さんだったり、社内に見本にするべき人がいっぱいいるので、先輩たちと同じポジションで働けるように頑張ります。

名古屋さん

二人とも、早く私を越えてください!

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