横沢香奈江さん(東京都建設局道路建設部鉄道関連事業課長代理・鉄道立体計画担当)

事業費1800億円の京王線・高架化を担う、東京都庁の”ドボジョのエース” 「都庁なら自分のやりたい仕事が何でもできる」

東京都庁のドボジョのエース

2020年7月、オリンピック開催を控える首都・東京都。一般歳出予算が5兆円を超える、言わずと知れたマンモス自治体だ。都庁の土木職職員も4,000人を超え、その約1割が「ドボジョ」である。

今回、その中の一人、建設局鉄道関連事業課の横沢香奈江さんに取材する機会を得た。現在、事業費が約1800億円に上る京王線の連続立体交差事業(高架化)を担当する、同局エース級ドボジョ(広報担当者談)に話を聞いてきた。

修士1年で都庁に合格

――土木との出会いは?

横沢 もともと「ものづくり」に興味があって、どうせつくるなら目に見える大きなものをつくりたいという思いがあって、大学で工学系に進みました。

大学1年生のとき、阪神・淡路大震災が起きました。衝撃を受けました。当時は教養学部にいて、それまではなにを専攻するか決めていなかったのですが、土木に決めました。私も含め、震災をきっかけに土木工学が人気が出ましたね。

――震災前は土木は人気がなかった?

横沢 そうですね。「キツイ汚い」というイメージがあったので。震災をきっかけに、「国土をなんとかしたい」という感じで、学生人気が高まりました。女子学生は学科全体で4名ぐらいでしたけど。

――土木学科では何を研究されたのですか?

横沢 コンクリートの研究をしていました。再生骨材を使って自分でコンクリートをつくって強度を測る実験などをしていました。大学院に進んだのですが、修士1年生のときに、東京都庁の採用試験に合格したので、大学院を途中で辞めて、都庁に就職しました。1999年入庁です。

元々都庁は希望していたのですが、修士1年生のときに受かってしまったので、都庁に行った感じでした(笑)。

――なぜ都庁に?

横沢 当時は、「ゼネコンに就職しても、女性は現場に行かせてもらえない」と聞いていました。研究所勤務には興味なかったので、「コンサルか公務員」が選択肢でした。

私は東京生まれ東京育ちなので、もともと「東京で働きたい」と思っていました。

――「東京が好き」みたいな?

横沢 好きと言うか、当時から首都直下型地震の想定が出ていたので、「東京のまちをなんとかしたい」という思いがありましたね。


「現場監督をしたい」から建設事務所に異動

――最初の配属先は?

横沢 大学の研究室でリサイクルをやっていたので、入庁後、「環境をやりたい」という希望を書いたら、下水道局の北部建設事務所(当時)へ配属になりました。管きょ再構築の設計・発注を担当しました。

東京都は当時から下水道の普及率はほぼ100%でしたが、古い管きょの更新が課題になっていました。そこに2年ほどいて、本庁の下水処理場などの設計する部署に異動し、4年間いました。

――建設局に来たのは?

横沢 東京都では主任になったタイミングで、局が変わる人事制度があるので、主任になって下水道局から建設局に異動しました。

建設局では、道路事業化に伴う認可取得の調整などを行う部署に配属されました。地元の方々とお話する機会が増えましたね。そこに3年いた後、大塚の第四建設事務所に行って、積算・発注業務を担当しました。

その後、「現場監督をしたい」という希望を出して、品川の第二建設事務所に異動して現場監督をやりました。4年前に今の部署に来ています。

――「現場監督をしたい」というのはどういう理由?

横沢 設計・積算だけだと、実際にものをつくるイメージがなかなかできないので、現場を見たいと思ったからです。自分で設計しても、現場で設計変更されるので、その違いを実際に見たかったというものありました。

――「ものづくり」への思いがあった?

横沢 そうですね。生でじっくり見てみたいという思いがありましたね。

――現場監督としてはどのような現場を?

横沢 道路、橋梁など何本か担当しました。現場監督は体力的にキツイ面がありましたが、机上で設計するのと現場とでは、やはり全然違いましたね。現場を見れて良かったです。

ただ、設計から現場まで一連で担当したことはありません。一つ一つの仕事が大きいので、どうしても部分的に担当するカタチになります。ただ、事業認可をとる部分の仕事は、面白かったですね。

――今の担当は?

横沢 京王線(笹塚駅〜仙川駅間)の連続立体交差事業の調整を担当しています。事業規模が大きいので、非常に面白みがありますし、鉄道会社と一緒にやっていくのがちょっと特殊で、それも面白いところですね。

――どういった事業ですか?

横沢 東京都が事業主体となって、既存の線路の隣に新たに用地を取得して鉄道の高架化や側道整備を行うもので、鉄道部分の工事は鉄道会社、側道工事は都や世田谷区などがそれぞれ行っています。踏切での道路渋滞緩和が目的です。京王線は私を含めて3名体制で担当しています。事業は2022年度完了予定で進めています。

京王線の連続立体交差事業は、事業費は約1800億円、事業区間が7.2km、25箇所の踏切を撤去する事業で、事業規模、事業効果の大きな事業だと思っています。


首都ならではの規模の大きな仕事に携われる

――今後やりたい仕事は?

横沢 維持管理や河川の仕事をまだやったことがないので、そういった分野をやりたいですね。最近は水害が増えているので、とくに河川の仕事には関心があります。そうなるかわかりませんが、他局の仕事にも興味はあります。局が変わればつくるものは変わりますが、土木の基本は変わらないので、まったく気にしないです。むしろ、まったく違う仕事に携われるのが面白いですね。

――都庁でもドボジョは増えているのですか?

横沢 増えています。私が入ったころは、せいぜい課に1名ぐらいでしたが、今いる課には3名います。

――都庁の働きやすさはどうですか?

横沢 都庁はもともと、産休なども取得しやすい働きやすい職場でしたが、女性が増えたことによって、さらに働きやすくなっていると思います。

――東京都の魅力、土木のやりがいは?

横沢 やはり日本の首都なので、規模の大きな仕事に携わることができます。その一方で、自治体として地元住民の方々との対話の機会も多いです。どちらも経験できるのが東京都の土木の魅力だと考えています。

「いろいろな仕事をやりたい」という人、「この道のプロになりたい」という人は、それぞれ希望を出せば、それをやらしてくれる環境はあると思います。希望の仕事を選べるのは、良いことだと思っています。

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