「主導権を握る=役所の御用聞き」ではない
建設コンサルタントは、基本的な姿勢として発注者側に立って、その上で技術面において調査・計画・設計を担っている。技術的な支援をする立場である。
ところが、最近は役所の御用聞きとなっている会社・技術者がとても増えているように見える。建設コンサルタントは、技術的な面においては主導権を握りながらプロジェクトを進めていく、という認識を持っているのだが、今の建設コンサルタントはそうはなっていないようだ。
以前、私はある大きな建設コンサルタント会社で設計業務や発注者支援業務を担当していた。業務の管理技術者や周りのプロバー技術者たちは、役所の担当監督員の目を気にし、彼ら彼女らに実に忠実に従っていた。飼い犬となっているといっても過言ではなかった。
ある業務では監督員に対しまったく提案をせず、とにかく監督員の指示待ちに徹し、その指示にあまりにも忠実に動いていた。部下に指示をするにも、監督員からの指示を一言一句変えずに部下に伝達していた。まるでスピーカーである。
監督員は、コンサルからどんどん提案して欲しいと考えていたようで、その旨を管理技術者にも何度となく伝えていた。中間打ち合わせの場でも何度かそれを聞いたことがある。
しかし、コンサルから提案をすることは一度としてなかった。気づくと私たちのチームは、発注側監督員から叱責され詰められるのが日常と化していた。
どうも管理技術者は「主導権を握る=役所の御用聞き」と認識していたのか、それである程度満足しているようだった。
「提案しろ!」と激を飛ばすくせに、いざ提案すると…
ある発注者支援業務では、管理技術者は部下である私たちには「どんどん提案しろ!」と毎日のように激を飛ばしていた。
あるゼネコンOBの技術者が「今後この工事でこういう問題が起こる可能性が高い。起こりうる問題とその対策案をこの資料にまとめた」と提示すると、その管理技術者は「そんな指示はしていない!」とその技術者に怒っていた。
しかし、そのゼネコンOBの技術者はご自身の現場経験から「そのときになってあわてて対処したとしても、打てる手は限られてしまう。今のうちに芽をつぶしておくことで現場はスムーズに進めれられるし問題が起きてもすぐに対処できる!」と譲らなかった。だが、最後は折れてしまった。
後日、発注側の監督員からその資料提示を要求され、すぐその場で対処ができた。そのとき管理技術者は自分がすべて考えてまとめたとばかりにドヤ顔を決めていた。
それを見たゼネコンOB技術者はチームに愛想をつかし、次の雇用契約更新を拒否した。
違うものは違うとはっきり言うべき
役所の言いなりになる人がどんどん増えており、それにつれて業界がおかしくなっているように思う。おかしいことはおかしい! できないことはできない!とはっきり言える人が建設コンサルタントにはとても少ない。
それではきちんと深掘りした議論はできないし、結果として貴重な税金を無駄にしてしまうことにつながりかねない。言うべきときには言う。それが建設コンサルタントに求められている役割ではないだろうか。
役所がなぜ民間企業に設計などのコンサルタント業務を発注するのか。それは役所の側に立ちつつも第3者の目線で中立的にプロジェクトを進めることでよりよい社会資本を納税者に提供するようにするためではないだろうか。
ただの役所の飼い犬になるのでは、そもそも発注する意味はない。発注側の監督員もそう思っているからこそ物足りなく感じていて、高額な委託料を払っているのにそれに見合っていないと考えているからこそ、叱責をしたくなるのだろうと思う。
モノいうコンサル、とまではいかなくても「おかしなことはおかしい!」「違うものは違う!」とはっきりと言うべきである。発注者はそれを求めている。決して飼い犬になってほしいとは思っていない。
コンサルタントが挟まるせいで入札不調が加速してる。コンサルタントと役所の密な話し合い(現場を知らない同士では話にもならない)がなされていない為に被害を被るのは工事請け負い業者だ。