「また同じこと言ってら」と思われないために。心に響く話をしてこそ真の安全担当者だ!

安全担当は人望がないと務まらない

真の安全担当の仕事は、人望がないと務まらない。

口先だけで安全の説明や指示をするだけなら誰でも出来る。だが、それを実際に行動に移し、実践し、継続し、作業員に理解させて納得できるように話すのは本当に難しい。

何より、「あの人の言うことなら、ちゃんと聞いてみよう」と思わせる安全担当の人間性が必要だ。

理屈だけで偉そうなことばっかり言っても、みんな聞いてるようで「また同じこと言ってら」と、右の耳から左の耳へと抜けるだけだ。

だが、実情はほとんどどの現場の安全担当も同じようなセリフを連発し、目新しい「オッ」と思わせるようなことは滅多に言わない。

もちろん、地道に基本的なことを繰り返し話すことがまずは大切で、同じことを言い続ける大切さも分からないではない。

自分や会社の立場は二の次

安全に関し、心に響くような内容の話が出来る人は滅多にいない。多くの安全担当者が上から目線で色々言うが、あれでは話が上滑りするだけだろう。

現場の危険要素、不安全要素を写真でみんなに説明する人もいるが、それはまだマシなほうで、多くの人が言葉だけで納得させようとする。

色々な事故情報を抜粋して話す人もいるが、それもあまり効果的とは思えない。

一見、色々工夫してるようで、作業員の気持ちになって説明できる人がいない。

事故が起きて本当に困るのは、本人やその家族だ。自分や施工会社としての立場はその後に来るべきで、作業する人間の事を真剣に心配すれば、おのずとその言動は変わってくるはずだ。

事故が起きるとどうなるか?

今まで私の関わった現場では、大きな事故は二つ起こっている。

一つは、コンクリート躯体のスラブにデッキプレートを使用する現場で起こった事故だ。

掛け渡したデッキプレートの中央に資材を積み過ぎたため、重さに耐えきれずに置かれていたスパン全体が落下した。

かすり傷程度で済んだが、上部デッキにいた3人が巻き込まれた。幸い、下には誰もいなかったが、一つ間違えば大変な人身事故になっていただろう。

私は、派遣社員として施工管理の仕事をその現場でしていたが、信じられないことにこの事故は一切どこにも報告されず、闇に葬られた。現場の所長も何もせず、驚いたことを良く覚えている。

「それでいいのか!」と問い掛けると、「派遣社員が生意気なこと言うな!」と言われたので、すぐ辞めた。苦い思い出だ。

もう一つは、某大手ゼネコンの現場で起こった足場の事故だ。

深さ12m、3m角の竪穴の中の足場の布板の端部のフックが掛かっておらず、クルっと回転して上にいた作業員が2m程落下し、大腿部骨折の事故が起こった。その時はすぐ事故報告を各関係機関にし、警察がすぐに来た。

警察が来た場合、どんな事故でもそれが人為的に誰かがやったのではないか?と犯罪の可能性を疑い、聞き取り捜査をする。

私も警察に呼ばれ質問を受けた。「事故で怪我を負った人間を恨んでるような人間はいなかったか?」「その時、誰がその近辺にいたか」など、繰り返し尋問を受けた。

結果、犯罪性はなく、事故として処理されたが、現場はその間2週間止まった。

実戦経験がないと務まらない

本来、安全担当者は現場施工管理の経験がないと務まらないと思う。実戦経験があって初めて、「どうして不安全行動をしてしまうのか?」「危険な行動をしてしまうのか?」かが身を持って分かる。

誰だって好き好んで危ないことをやる訳ではない。工事の工程や次に控えてる仕事があるから”つい”となってしまう。

この気持ちは実際の現場を知らないと分からないだろう。

些細な不注意が大きな事故につながるのは事実で、結局それを食い止めるのは一人一人の自覚しかない。

今の現場作業に合わせて、みんなが「なるほどな!」と思えるようなことを指摘し、その対応を提案し、指示する態度が求められる。

安全担当者の評価が低すぎる

安全担当者の現場内での評価が低いのも問題だ。まずは現場事務所内で安全担当者を正当に評価する姿勢を所長が造らなければならない。

さらに、安全担当者の書類作成の仕事量が許容範囲を超えていないか把握していないと、一番大切な安全確保が上っ面の話だけになってしまう。

安全担当者のやるべき業務は予想以上に多い。新規入場教育や安全書類等の作成は、大規模な建築となれば書類作りだけで手一杯となる。安全の仕事は奥が深いと書いたが、それはやりだすと際限がないからだ。

毎日毎日、的確な指示を出すためには、現場の特殊な状況、搬入搬出、重機や天候にまで配慮した指示が必要だ。

何より、人間が人間に話す訳だから、気持ちが動くような話をすることを心がけて欲しい

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アジア、アフリカなど海外の建築現場で長年、施工管理に従事している。世界中で対日感情が良好なのは、先人たちの積み重ねである。日本人として恥ずかしくない技術者でいたい。
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