土木技術者として当たり前のこと
「土のことを知っておくのは、土木技術者として当たり前のこと」
ある時、私は上司にそう言われた。なぜかというと、土の上に土木構造物が造られるからだ。土の中に造られるものもあるが、その場合でも土の知識は必ず求められるし、正しく活用する必要がある。
つまり、土木技術者として、「土」を押さえていなければいけないということだ。それを痛感した出来事があった。
ある土構造物の設計をしていたとき、その土構造物の検討にあたり、物性値を逆算して求める必要があった。その物性値の持つ意味を理解せず検討していた私は、上司の質問に答えることができなかった。
土の持つ性質をきちんと押さえていなかったので、先に進めないどころか見当違いなことをやってしまい、その後いろいろな検討をせざるを得なくなり、むしろ仕事を増やしてしまった。
トンネルでも橋梁でも、あるいは擁壁でもカルバートでも、もちろん基礎構造物でも、土と関わりがある構造物は盛りだくさんだ。土のことを知っておかないと、先には進められない。間違った認識のまま仕事を進めてしまうと、大問題を引き起こすこともある。
土のことを知らなかった、知識不足だったばかりに法面の崩壊を招いてしまったり、トンネル掘削中に崩落が発生したり、重機を載せたとたん沈み込んで転倒事故を引き起こしてしまったり、ということが起こる可能性もある。
土のことを知らずに設計・工事を進めてしまうのは、とても危険だ。ましてや、工事中に人の生命を脅かす事故が発生してしまえば、刑事処罰だってあり得る。