大阪府のドボジョの皆さん。左から、村内 真貴子さん、上成 純さん、木下 三加さん、岡本 彩夏さん

大規模開発めじろ押しの大阪府で働く「ナニワのドボジョ」の仕事観

西日本最大の自治体で働くドボジョ

大阪府は、約880万人の人口を擁し、高速道路や鉄道などの社会インフラが集積する西日本最大の広域自治体だ。

府内では、2025年の大阪万博、IR誘致関連のインフラ整備のほか、新大阪駅、うめきた(2期)では新たなまちづくりなどが進められるなど、なかなかの活況を呈している。

そんな大阪府の土木系職員は日々どんな思いで仕事をしているのか?大阪府のドボジョ4名に土木の魅力、やりがいなどを聞いてきた。

  • 上成 純さん(事業管理室事業企画課防災・維持グループ課長補佐)
  • 村内 真貴子さん(安威川ダム建設事務所建設課道路建設グループ主査)
  • 木下 三加さん(都市計画室計画推進課都市施設計画グループ)
  • 岡本 彩夏さん(池田土木事務所維持保全課計画保全グループ)


大阪に憧れて、大阪府庁に入る

大石(施工の神様ライター)

まずは自己紹介を。

上成さん

入庁23年目になります。今は事業管理室で防災を担当しています。

上成 純さん

村内さん

入庁14年目です。現在の職場は安威川ダム建設事務所で、補償用の道路整備の現場を担当しています。

村内 真貴子さん

木下さん

入庁7年目です。今の部署は都市計画室で、府や市町村の都市計画の調整、協議などを担当しています。

木下 三加さん

岡本さん

入庁1年目です。池田土木事務所の維持保全課で道路の維持修繕の工事を担当しています。

岡本 彩夏さん

大石(施工の神様ライター)

土木の世界に入ったきっかけは?

上成さん

もともと建築系の大学に行きたかったのですが、受かったのが土木学科でした。その流れで、大阪府の土木職を選びました。

大石(施工の神様ライター)

公務員志望だったんですか?

上成さん

当時は、女性が働きやすい土木系の職場としては、公務員かコンサルタントを推薦されました。ゼネコンは「女性はやめておいた方が良い」という感じでした。公務員が一番幅広く働くことができると考え、公務員を選びました。

大石(施工の神様ライター)

大阪府を選んだ理由は?

上成さん

大阪府出身だからです。大学も大阪府内でした。

大石(施工の神様ライター)

他の皆さんは?

村内さん

都市計画やまちづくりに興味があったので、なんとなく大学で土木を選びました。ずっと働き続けられる仕事に就きたいということで、公務員を選びました。大阪出身で、それなりに大きな仕事もしたかったので、大阪府を選んだ感じです。

木下さん

私は、大学は環境系の学科で、あまり土木を意識せずにいたのですが、就職の際に土木系も面白いかなということで、大阪府に土木職として入った感じです。環境職もあったのですが、専門科目で欠けていたので、土木職で試験を受けました。

大阪府か大阪市で悩んだのですが、大阪市にはほとんど山がないので、都市部だけでなく山間部などの自然に関わるチャンスが多いかなと思って、大阪府を選びました。

岡本さん

小さい頃からよく旅行をしていたのですが、交通手段として使っている道路や空港などが土木の仕事だと知って、興味を持ちました。それで15歳から専門教育を受けることができる明石高専に進学しました。

結婚や出産を考えたときに、定住しやすかったり、お休みをいただきやすいと考えて、公務員を志望しました。

大石(施工の神様ライター)

なぜに大阪府に?

岡本さん

私は兵庫県出身で、大阪に憧れがあったので、大阪府を選びました。

大石(施工の神様ライター)

大阪への憧れというと?

岡本さん

大阪の、道路網や鉄道網・商業施設などが発展している都市部がある一方、山などの自然もあるところに魅力を感じました。

上成さん

ちなみに、大阪府では昨年度から、大卒の採用試験を高専生も受験できるように制度改正したんです。それまで高専生は高校生の採用試験を受験することになっていました。全国的にも珍しい採用試験になっています。岡本さんはこの新採用制度の第1号です。

大石(施工の神様ライター)

その制度を知って受けたのですか?

岡本さん

はい。大阪府が高専生を大卒枠で採用することを知ったときに、その場で決めました。

大石(施工の神様ライター)

「決断の人」ですね(笑)。

岡本さん

そうですね(笑)。

大阪府から外に出たい

大石(施工の神様ライター)

入庁後はどのようなお仕事を?

上成さん

最初の配属先は、寝屋川水系改修工営所という都市部の河川を管理する部署で、地下河川や市街地の治水対策などを担当していました。配属希望を出して、豊能地域の道路や河川を管理している池田土木事務所の河川砂防のグループに行きました。

その後、本庁勤務などを歴て、「大阪府から外に出たい」という希望を受けていただき、東京にある公益財団法人河川財団に出向したこともあります。

大石(施工の神様ライター)

なぜ「大阪府から出たい」と思ったのですか?

上成さん

ずっと大阪府にいると、息が詰まってきたからです(笑)。財団には2年いました。大阪府に戻ってからは、鳳土木事務所で河川砂防や防災などを担当しました。

その後、東日本大震災の災害復旧のため、岩手県に派遣されました。大船渡土木センターの海岸復旧チームに所属し、高田海岸の防潮堤などを担当しました。

大石(施工の神様ライター)

けっこう出向が多いですね。

上成さん

東日本大震災発災後から、派遣の希望を出していましたがなかなか希望が叶わず、若手女性土木職の職員が希望を出したことがきっかけで、私も一緒に派遣させてもらえました。

大石(施工の神様ライター)

岩手県ではいろいろ経験されたのでは?

上成さん

災害復旧の調整が主な仕事だったので、多くの人と関わりました。3年間いました。

大石(施工の神様ライター)

現地での住まいは?

上成さん

岩手県が用意した県職員用の仮設住宅で暮らしていました。また大阪府に戻ってからは、河川室に配属になり、昨年から今の職場にいます。

大石(施工の神様ライター)

村内さんのこれまでのお仕事は?

村内さん

最初の配属先は本庁のモノレールグループで、延伸事業の計画などを担当しました。枚方土木事務所に移って、道路の維持管理のグループで、橋梁の耐震化などをメインにやっていました。建設をやりたいという希望を出して、茨木土木事務所の新名神関連事業建設事業所という部署で、道路建設を担当しました。その後、今の職場に来ました。

大石(施工の神様ライター)

新名神のどういう道路だったのですか?

村内さん

新名神までのアクセス道路の工事現場を担当しました。現場仕事は、すごく忙しかったですけど、楽しかったですね。調整がメインなので、わからないところは先輩などに教えてもらいながら、なんとか仕事をこなしていった感じですね。

大石(施工の神様ライター)

木下さん、これまでの仕事は?

木下さん

最初の配属先は茨木土木事務所の地域支援・防災グループというところで、地域の活性化や防災支援などソフト面の仕事をしました。2年目に道路の計画補修グループに行って、舗装補修や交差点改良などの交通安全事業を担当しました。

その後、本庁の計画推進課の計画調整グループに異動になり、都市計画に関する関係機関との調整などを行ったのち、今のグループに移りました。

大石(施工の神様ライター)

岡本さんは、仕事には慣れました?

岡本さん

まだまだ慣れないことが多いです。ジョブトレーナーさんと一緒に現場に出て、教えていただきながら、日々勉強しています。

先輩職員(ジョブトレーナー)と打ち合わせ中の岡本さん(左)


女性だと、まず業者からナメられる

大石(施工の神様ライター)

女性だから大変だったことはありますか?

上成さん

女性をどの現場に入れたら良いのか、女性にトンネル工事を担当させて良いのかなどの話は聞きました。「この仕事は女性にはムリだ」と露骨に言われたこともあります。

今では産休は当然ですが、最初のころは、産休を取るときに、他の女性職員と取るタイミングが重なると、「困ったな」と言われていました。「女性職員には下の名前に”ちゃん”付けで呼んでいる」と言われていたこともありました。職場に女性そのものが少なかったので、特別視されることが多かったですね。

大石(施工の神様ライター)

施工業者などの反応は?

上成さん

「担当者は女性か」という少しナメられている雰囲気でした。ただ、仕事を進めていくうちに、なくなっていきましたけど。

大石(施工の神様ライター)

上成さん自身は「まわり男ばっか」は平気でした?

上成さん

学生のころから慣れているので、平気でした。逆に女性の集団の方がコワイです。会議とかで「女性目線で意見を」と言われるのですが、「女性目線ってなんですか?」みたいな感じなので(笑)。

大石(施工の神様ライター)

村内さんはどうですか?

村内さん

飲み会で多少絡まれたこともありますが、特に大変だと思うこともないです。今でも女性を特別視する雰囲気は多少ありますが、上成さんのころに比べると、女性職員はかなり増えているので、かなりマシになっていると思います。

大石(施工の神様ライター)

木下さんは?

木下さん

初めて夜間工事の立会に一人で行ったときに、業者の方から「一人で来たん?」と聞かれたことがありました。発言の意図はわかりませんでしたが、「いえ、他の職員も一緒です」と答えました。すると、「他の女性職員は一人で来とったで」と言われて、カチンと来たことがあります(笑)。

大石(施工の神様ライター)

岡本さんは?

岡本さん

私は、女性の土木職員が最近は増えてきていると思っていました。現場に出たときに、業者の方から「女性職員は珍しい」と言われて、まだ女性は珍しいという認識なんだと思いました。

現場を「最終的にこうしよう」と決められる

大石(施工の神様ライター)

仕事のやりがいは?

上成さん

ある程度規模の大きな工事の場合、完成式典があるのですが、歴代の担当者として、自分が関わった工事の式典に呼ばれることがありました。そういうときにやりがいを感じますね。

大石(施工の神様ライター)

一番思い出に残っているのは?

上成さん

岩手県に出向したことですね。業者さんも含め、関係者みんなが「ここをなんとかしよう」ということで、同じ方向を向いて仕事をしたことですね。

大阪府の仕事でも、河川の水辺空間の整備などで、地域の方々と仲良くなって、みんなで一緒につくり上げたことが、やはり思い出に残っています。調整事が多くて、自分のペースで仕事が進まない分、記憶に残っている感じです。

大石(施工の神様ライター)

村内さんは?

村内さん

一職員としては、公務員は異動があるので、一つの工事をはじめから終わりまですべて担当する機会は少ないですが、大阪府全体としては、計画段階からインフラが完成した後も維持管理などでずっと関わり続けます。それが仕事の面白いところだと思っています。

この現場をどうしようかという意見が出たときに、関係する人たちの意見を集約して「こうしよう」と決められるのも公務員技術者の仕事の面白いところだと思っています。

大石(施工の神様ライター)

一番記憶に残っている仕事は?

村内さん

新名神のアクセス道路の現場ですね。維持管理の仕事にも、いろいろ工夫をして楽しいところはありましたが、実際にモノができ上がっていくのを見るのは楽しかったです。いろいろな関係者の方々と協議しながら、物事を決めていくプロセスも楽しかったです。自分の意見も取り入れてもらえたのも嬉しかったですね。

大石(施工の神様ライター)

木下さんと岡本さんは?

木下さん

私はまだ維持補修の仕事しか経験したことがないのですが、維持補修によって、インフラがより良くなって、地域の方々などが喜んでくれたときに喜びを感じました。

岡本さん

初めて担当した舗装の工事が終わりました。一口に舗装工事と言っても、材料や工法など勉強になることがたくさんありました。毎日新しい経験を重ねながら、ちょっとずつ吸収している実感があるのが、今は楽しいです。

大石(施工の神様ライター)

今後やりたい仕事は?

木下さん

今は、道路とか鉄道といった都市計画をやっているのですが、次は、実際の建設の現場の仕事をやってみたいですね。

村内さん

今もダムの現場にいるので、次にやりたい現場というのはとくにないですが、最近の土木業界には閉塞感が漂っている感じがしています。

自分も含め、土木業界の人々が楽しく働けるようになれば良いなと思っています。具体的なアイデアがあるわけではないのですが、ただモノをつくるだけではない、土木の新しい役割みたいなものを見い出せればと思っています。

上成さん

立場が変わると目線も変わるので、今でも日々新しいことにチャレンジしている感覚はありますね。担当の時は自分に与えられた一つの役割、一つの現場をより良くしようということだけ考えていれば良かったのですが、今後は、もっと広い範囲を視野に入れて、物事を考えていかなければならない立場になると思っています。


2年目からは自分で考え、積極的に動くべし

大石(施工の神様ライター)

岡本さん、先輩たちに聞きたいことは?

岡本さん

2年目の職員にはどのようなことが求められるのですか? 2年目のときにはそれぞれどのようなことに気をつけて仕事をしていたのですか?

上成さん

だいぶ古い話やな(笑)。2年目になると、1年目によくわからずにやっていたことが、「なるほどな」と思うようになることがあると思うので、それを信じて、自ら積極的に動いていけば良いと思います。周りは結構そういうところを見ていると思います。あまりやり過ぎると、ドンドン仕事を任せられて、大変になるかも知れないけど(笑)。

村内さん

単純な作業でも、自分なりに考えてみると良いと思います。例えば、「この資料を整理しといて」と言われたときに、「この資料はなんのためにつくっている資料なんかな」とかを自分なりに考えて、「ここはこうしといた方がいいんかな」というクセをつければ、どんどんステップアップしていけるんじゃないかなと思います。

上成さん

そういう職員はスゴく助かります(笑)。

木下さん

私が2年目の仕事を迎えたときは、仕事のスピードだったり、仕事の応用を意識していました。

岡本さん

ありがとうございます。

※大阪府技術職【土木・機械・電気】 採用情報サイト

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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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