採用担当の若き女性技官にインタビュー
先日、国土交通省のキャリア採用の最近の動向に関する記事を出した。取材当日は、採用担当の吉岡大藏・技術企画官に話を聞くつもりで霞が関に出向いたわけだが、一人の女性が同席していた。「オブザーバーなのかな」と思いつつ、とりあえず黙殺しておいた。
取材も半ばに差し掛かったころ、なんとなく気になって、その女性に「技官なんですか?」と聞いてみた。「はい、そうです」と言った。「お!」と思った。「彼女に取材しても良いですか?」と尋ねると、「どうぞ」と言う。
ということで、国土交通省の採用担当を務める松岡里奈・同省大臣官房技術調査課技術開発調整係長に話を聞いてきた。
松岡さんと吉岡大藏・国土交通省大臣官房技術企画官(写真では2度目の登場)
2年目に60億円の工事発注を担当し「やりきった」
――これまでのお仕事は?
松岡さん 私は今年度で入庁3年目なのですが、最初の配属先は近畿地方整備局の福井河川国道事務所で、新しく道路を作る部署で工事の発注などに携わりました。2年目は和歌山県庁に出向となり、橋梁やトンネルの工事を主に担当していました。昨年4月に本省に戻りました。
――転勤は大丈夫でしたか?
松岡さん 生まれてから大学までずっと実家暮らしで引っ越しもしたことがないので、初めての地方での一人暮らしは正直不安でした。ただ、実際に地方で勤務してみると、おいしいものを食べたり、観光に行ったりして、転勤を楽しみながら仕事をすることができました。
――これまでの仕事で嬉しかったこと、楽しかったことは?
松岡さん 福井に勤務している際は、福井バイパスという国道の工事を担当していました。といっても工事の発注事務や、積算の補助など、貢献したことはわずかではありましたが、翌年、無事福井バイパスが開通し、地元の方々が笑顔で喜んでいる姿を見たとき非常に感動しました。
東京出身で、「新しく道路が開通する」という感覚があまりわからなかったのですが、これだけ多くの方に喜んでいただける、やりがいのある仕事だと身をもって感じ、この仕事について良かったと心から思いました。
和歌山県では、2年目にも関わらず60億ほどの非常に大きな工事を担当し、公告文や入札参加資格を一から考え、無事落札業者が決まった際は「やりきった!」と達成感を感じました。周りの皆さんの支えが無ければ成し遂げられませんでしたが、一つの工事を発注して落札決定するまでの一連の流れを担当できたのは非常に良い経験でした。
また、仕事とは少しずれますが、東京以外の土地に「帰りたい」と思える場所ができたことは非常に新鮮で嬉しいことでした。当時の職場の上司や同僚とは今でも連絡を取っています。
――逆に、ツラかったことは?
松岡さん これは福井で勤務していた頃の話ですが、大雪で国道が通行止めになるという災害が発生しました。私は事務所に詰め電話対応や現場の職員との連絡係をメインに行っていました。これだけ大変な事態なのにただ電話を受け、現場の連絡を待つことしかできない、と非常に不甲斐なかったことを覚えています。
大雪の中現場に出て、満身創痍にも関わらず一刻もはやく道路を復旧させようとする職員の姿を間近で見て、とにかく通行止めで苦しんでいる皆さんのためにできることを懸命に行う、非常に責任のある仕事なんだと身の引き締まる思いでした。
「地方創生」に興味を持ち、国土交通省を目指す
――土木に興味を持った理由は?
松岡さん もともとまちづくりに興味がありました。2011年の東日本大震災をきっかけに、「防災にも携わりたいな」と思うようになって、「土木なら両方できるな」ということで、大学で土木学科に進みました。
――なぜ国土交通省を選んだのですか?
松岡さん まちづくりに携わりたかったことと東京出身ということで、初めは「東京都庁に行きたい」と思っていました。公務員の勉強をしつつ、苦手な面接対策として民間企業の入社試験も受けていました。
民間企業を受けているときに、地方創生の仕事をしている方とお話をする機会がありました。そこで「私はなんで東京にこだわっていたんだろう」と目からウロコが落ちたんです。東京のような都市のまちづくりだけではなく、過疎化などの問題を抱える地方のまちづくりにも目を向けた方が良いと考えるようになりました。
一部地域ではなく、全国全部見れるところはどこなんだろうと考えるようになり、また防災にも興味があったので、国土交通省を選びました。
――ご自身の就活では、インターネットを活用しましたか?
松岡さん はい、国土交通省の採用HPやFacebookをチェックしていました。Facebookのほうは、職員の方々のインタビュー記事が載っていて親近感が湧く内容だったので、見るのを楽しみにしていました。
「日本をもっと良くしたい」という想いを持った学生に入って欲しい
――今の仕事はどうですか?
松岡さん 本省の大臣官房技術調査課というところで、採用担当の仕事をしています。国家公務員に興味を持つ学生に対して国土交通省がどういった組織で、どんな政策を行っているか、キャリアパスはどうなっているか、などを説明する機会もありますし、自分自身の国土交通省を目指すきっかけや今までの経験などをお話する機会もあります。
私自身、国土交通省を就職先として意識し、様々なイベントに参加してきました。その際、自分の持っていた堅いイメージとは異なり、皆さんがきさくに話しかけてくださったことが非常に印象に残っているので、学生と接する際はなるべく親近感を持ってもらい、些細なギモンも聞きやすいような雰囲気を心がけています。
インターンシップでのグループ討議では、学生それぞれが何かしらの問題意識を持っていてどうやったらもっと日本が良くなっていくか、こうすればもっと良くなるのに、と熱心に意見をぶつけ合っています。そんな想いを持った学生を見ると、国土交通省に入って欲しいなと感じます。
――リクルーティングに関する新しい取り組みは?
松岡さん 私は就活にFacebookを活用しましたが、最近はSNSも変化していて、若者がFacebookから離れてきているところがあります。そこで、昨年11月から国土交通省ではLINEを始めました。LINEでは採用イベントに関する情報をメインに流しています。
「女性だから、働きにくい」と思ったことはない
――今後、出産、育児などのライフイベントを控えているわけですが、転勤に不安はありませんか?
松岡さん 今のところは、「ずっと東京にいたい」というこだわりはありませんし、地方に行く機会があれば、「ドンドン行きたい」と思っています。
ただ、子どもができたら、しばらくは実家のある東京か、東京に近いところで働きたいという思いはありますのでそいうった事情を配慮してもらえると安心です。
――女性の働きやすさはどうですか?
松岡さん 私はまだ3年目ですが、少なくともこれまでに「女性だから、働きにくい」と思ったことはありませんし、別に気にする必要はないと思っています。
職場全体で見れば女性はまだまだ少ないですが、少ない分女性職員同士のつながりも深いので、なにか困ったときには相談などもしやすい環境があります。この点も安心しています。
――最後に、学生へのメッセージを。
松岡さん 就活では、迷ったり悩んだりすると思いますが、国土交通省に限らず、とにかくいろいろな人と話をした上で、「自分とマッチする仕事」を決めて欲しいと思っています。なので少しでも国土交通省に興味があれば、説明会などに是非参加して欲しいなと思います。
そして、ただ一方的に話を聞くだけではなく、説明に立った職員にいろいろ質問を投げかけてみてください! そうすればもっと国土交通省のことを知ってもらえるかなと思います。