現場監督が建築士を取得するメリットは実務上ない
私がまだ新人だった時代。建築系の学校に行くなら、建築士取得が当たり前の風潮でした。
しかし、最近の新入社員は価値観が違います。「施工管理希望なので、建築士の受験予定はありません」とはっきり言い切ります。さらに深く聞くと、「施工管理と建築士って違うんですか?」と聞かれます。
現場監督が一級建築士を取得して、メリットはあるのでしょうか?
先に言うと、一級建築士資格がないと出来ない業務は無いので、実務上は必要ありません。
現場監督に求められことは、どんな工事でも対応できるように1級施工管理技士を取得して、監理技術者になること。業務に関しては、これ以上もこれ以下もありません。
しかし、私は現場監督も建築士を取得するべきだと考えています。
建設会社は建築士が欲しい
なぜ現場監督が建築士の資格も取得すべきなのでしょうか。
それは、建築系の会社は施工だけではなく建築設計も出来るように建設業許可と共に建築士事務所の登録をしているところが多いからです。登録の際には、一級建築士○○人、二級建築士○○人と登録するため、一人でも欲しいわけです。
しかし、現在取得している高齢技術者が世代交代すれば、所属一級建築士がゼロになりかねません。建築士事務所を併設している地方工務店で、一級建築士を3人登録できている会社は全体の数%以下だと認識しています。
つまり、現場監督の個のスキルとしてではなく、会社のスキルとして建築士を取得して欲しいわけです。
現場監督にとってメリットはあるか?
とはいえ、自身にとって取得するメリットが無ければ、取得する動機にはなりにくいでしょうから、いくつか現場監督にとってのメリットを挙げていきます。
実務メリット
まず、実務で必要のない資格は意味がないかと言うと、そうではありません。まず、民間工事ではお施主さんからの信頼度が違います。そして、設計事務所や諸官庁の対応も変わります。
少なくとも、建築に関する専門知識を持っていると受け止めてくれるため、コミュニケーションツールとして有効に機能するわけです。
また、協議資料を作る際にも、建築士としての意見書が自身で作成できるため、業務提案のアプローチが変わります。
給与メリット
会社が要求する資格に応えているため、給与面も変わります。資格学校に行くと80万円程度掛かることもありますが、20代のうちに取得すればざっくり3倍くらいになって還ってくるんじゃないでしょうか?
資格メリット
建設系の資格は、出題範囲がリンクしているため、建築士を取得できる知識があれば、類似資格の取得が極めて容易になります。
学科試験が免除になる1級建築施工管理技士はもちろんのこと、試験内容の環境に含まれる分野が電気工事や管工事の施工管理技士とも問題が重複します。
基本の仮設、土工事、鉄筋工事、コンクリート工事は土木施工管理技士もリンクしており、さらにどの試験も建設業法はほぼ同様の出題がされるわけです。
ごくまれに、建築士+施工管理技士数種類が記載されている名刺を見ることがありますが、順番に取得していくと5割ほど既に試験勉強終わっているのでお得なんです。
勉強を通して、一級建築士は建築に限らず設備や土木を含めた建設業トータルを管理するための資格であると実感すると思います
建築士以外に何を取るべきか?
まずは、現場監督には一級建築士を目指して欲しいですが、先に述べたように建築士を取得すると、ほかの資格勉強が容易になります。
そこで、建築士の他にも、現場監督に取得してもらいたい資格を列挙していきます。
衛生管理者
安全管理者は講習の受講で取得できますが、衛生管理者は国家資格のため、勉強する必要が出てきますが、現場の安全衛生を考えると、取得することをおすすめします。
建設業計理士
公共工事総合評価が変わるため、2級建設業経理士は取得するのおすすめします。
受験資格がないのと、1級施工管理技士試験よりも簡単なため、挑戦する価値はあります。
各種技能講習
講習を受講するだけでほぼ貰える資格に技能講習があります。現場監督の必要最低限の実務で考えれば不要ですが、現場監督の取得もおすすめします。
たとえば、知識もない人が職長・安全衛生責任者を管理することができるでしょうか? 施工体制台帳に記載する安全衛生責任者は誰にするのでしょう?
現場で指導する立場の人間が知識ない現場は、私としてはあり得ません。会社と協議し、助成金等を駆使してぜひ取得しましょう。木造や鉄骨の組立て等作業主任者技能講習は上位まで必要になります。
いずれにせよ、会社は学校ではありません。自分で勉強して現場へ反映させる意識が何よりも大切です。人生勉強です。