測量士と測量士補は、測量に関する独占業務となる資格。建物を建築するときは、測量士の存在が欠かせません。
今回は、そんな測量士と測量士補がどんな資格なのかに加えて、資格取得の難易度や合格率を解説していきます。測量士を目指す人は、ぜひ参考にしてください。
測量士とは?仕事内容や資格、年収なども紹介
道路で三脚にカメラのような機器を載せ、作業員が覗き込んでいる姿を見たことがある人も少なくないでしょう。その作業が測量士の仕事です。
では、測量士と測量士補は、どんな資格を持ち、どんな仕事をしているのでしょうか。まずは、測量士とはどんな仕事でどんな資格なのかを解説していきます。測量士を目指すのであれば、業務内容もしっかりと把握しておきましょう。
工事計画の基礎となる重要な仕事を担う
測量士は国家資格であり、あらゆる建設工事に必要となる測量を行う仕事を担っています。建築物を建設するときは、感覚や雰囲気で場所を選んでいるわけではなく、測量士が緯度や経度、面積などを正確に測り図面を作成することで建築作業をスタートできるのです。
つまり、家などの建物や道路を造る前に、「土地を計測する」のが測量士の仕事です。測量士なくして建築物が建つことはなく、営業所ごとに1名以上の測量士または測量士補の配置が義務付けられています。
また、測量業務は誰もが勝手にできるわけではなく、測量士と測量士補の有資格者だけであり、これは測量法によって定められています。つまり測量業務は、測量士と測量士補の独占業務。そのため、測量の仕事に就きたいと考えている人にとって、避けられない必須資格といえるでしょう。
測量士と測量士補の違いとは?
上記でも紹介したように、測量に関わる仕事には測量士と測量士補の2つの資格があります。ともに測量法に基づき国土地理院が管理する国家資格です。ですが、この2つにはできる仕事に差があります。
測量士は測量業務の主任者として、測量計画を作成することが可能です。一方で、測量士補は測量計画を作成することはできません。測量士補は、あくまで測量士の支持に従って業務にあたります。測量士は、測量士補の上位資格です。測量に関わる資格でも業務内容が異なれば、役割も違うのです。
また、ここで気になるのが年収ではないでしょうか。測量士の平均年収は、約440万円と言われています。測量士としてさらに年収アップを狙いたい場合は、専門的な知識を深め、平均年収が高い大手企業などに転職する方法もあります。
測量士の試験概要を解説
測量士と測量士補の資格を取得するには、試験概要を知っておくのが大切です。ここからは測量士の試験概要とともに、測量士補の試験概要も解説していきます。測量士と測量士補では業務内容だけではなく、試験概要も異なるため混同しないように注意しましょう。合格基準も解説するので、目標設定のために参考にしてください。
受験資格・費用・試験日
測量士の受験資格はとくになく、年齢・性別・学歴・経験問わずに受験することが可能。受験料は、収入印紙で納付の場合は4,250円、電子納付の場合は4,200円です。
試験地は以下の都道府県から希望の土地を選択します。
北海道・宮城県・秋田県・東京都・新潟県・富山県・愛知県・大阪府・島根県・広島県・香川県・福岡県・鹿児島県・沖縄県
試験日は、新型コロナウイルス感染症の影響で延期となり令和2年度は11月の開催となり、令和3年度の試験は9月の開催予定となりましたが、試験実施は例年5月中旬から下旬となります。
受験内容
測量士の試験は筆記方式で、午前と午後に分かれているのが特徴です。午前は択一形式28問が出題され、1問につき25点、満点で700点となります。午後は記述式の問題となり、必須問題1題(300点)と、基準点測量/地形・写真測量/地図編集/応用測量の4題のなかから、2題(1つ200点)を選択し回答します。
合格基準は、午前の択一式問題で点数が700点満点中400点以上であり、なおかつ択一式と記述式の合計点数が、1,400点満点中910点以上正解で合格です。
試験科目は令和3年の試験科目を紹介します。試験科目は、国土地理院から発表がありますので、しっかりと確認しましょう。
※試験科目の確認はこちら
(1)測量に関する法規及びこれに関連する国際条約
(2)多角測量
(3)汎地球測位システム測量
(4)水準測量
(5)地形測量
(6)写真測量
(7)地図編集
(8)応用測量
(9)地理情報システム
また、測量士試験では計算問題用に、国土地理院が用意した電卓の使用が認められています。ですが、個人で用意したものは使用できませんので注意しましょう。
測量士補の試験概要もチェック
測量士補の試験は、測量士の試験と異なる点がいくつかあります。試験科目に加え、試験開始時間や合格基準なども違いますので、間違えないようにしましょう。
測量士補の試験は択一式のみ。28問が出題され、1問25点の700点満点中450点以上が合格基準となります。測量士は、午前と午後の2部制となっていますが、測量士補は午後のみです。また、測量士は受験時に国土地理院が用意する電卓を使用できますが、測量士補は電卓を扱うことが禁止されています。
また、測量士補は受験料も測量士と異なり、収入印紙で納付の場合が2,850円、電子納付の場合は2,800円となります。
試験科目も測量士と測量士補では違いが。今回は令和3年度の測量士補の試験科目を、一例として紹介します。実施年によって変更する可能性もあるため、国土地理院のサイトをチェックしておきましょう。
(1)測量に関する法規
(2)多角測量
(3)汎地球測位システム測量
(4)水準測量
(5)地形測量
(6)写真測量
(7)地図編集
(8)応用測量
測量士の合格率・難易度を解説
測量士は不動産や建設関連の資格の中でも、難易度が高い資格とされています。また、合格率が波が激しいのも特徴です。どれほどの合格率を推移しているのか、国土地理院が発表している過去5年の受験者数と合格率を見ていきましょう。測量士に加えて測量士補の合格率も紹介しますので、測量士補を目指す人もチェックしてくださいね。
2016年〜2020年の合格率
測量士は難易度の高い資格とされているとおり、過去5年の合格率をみても10%前後となっていて、難易度が高いことがわかります。年度によっては、10%を下回っている年もあるくらいです。
【測量士の合格率】
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年 | 2,276人 | 176人 | 7.7% |
2019年 | 3,232人 | 479人 | 14.8% |
2018年 | 3,345人 | 278人 | 8.3% |
2017年 | 2,989人 | 351人 | 11.7% |
2016年 | 2,924人 | 304人 | 10.4% |
(国土地理院より)
測量士の試験には測量に関する専門的な計算問題に加えて、高校レベルの基礎的な計算問題の知識が必要になります。試験を受けて測量士になる場合は実務経験こそ必要ありませんが、高度な専門知識と基礎学力どちらも重要な要素となってくるでしょう。
測量士補の合格率は?
測量士補は、測量士の下位と位置づけられる資格といえるため、合格率も高く推移しています。そのため、測量士補の資格を取得し、実務の経験を積んで測量士を目指すという道もあります。
【測量士補の合格率】
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年 | 10,361人 | 3,138人 | 30.3% |
2019年 | 13,764人 | 4,924人 | 35.8% |
2018年 | 13,569人 | 4,555人 | 33.6% |
2017年 | 14,042人 | 6,639人 | 47.3% |
2016年 | 13,278人 | 4,767人 | 35.9% |
(国土地理院より)
測量士に比べて合格率が高いとはいえ、決して簡単なわけではありません。測量士と同様に計算問題が出題されるため、計算が苦手な人からすると難しく感じるでしょう。また、出題範囲も広いので、測量の知識をまんべんなく網羅することも必要となります。
難易度は高め?独学で合格を目指すには
受験対策こそ必要ですが、テキストや過去問でしっかり対策すれば独学でも合格可能でしょう。国土地理院の公式サイトには過去問や回答一覧も掲載されているので、対策としてチェックしておくのがおすすめ。独学の場合はしっかりと学習計画を立てて、受験対策を進めてください。
※問題集はこちら
どうしても勉強が難しい場合は、学校に通って資格取得を目指す方法もあります。測量士は大学や専門学校を卒業し、学歴に応じた実務を積むことで試験を受けなくても取得できるのです。難易度が高いとされているだけに、無試験での取得を目指すのも有効なひとつの選択肢といえるでしょう。
測量士を取得するメリット
測量士は、その難易度の高さに見合ったメリットがある資格。独占業務であるがゆえに、転職や就職にもメリットがあります。メリットを理解して、資格取得のモチベーションアップに繋げましょう。
ここからは、測量士の資格を取得することで、どんなメリットが得られるのかをご紹介。土地家屋調査士を目指す人にもメリットがあることについても、解説していきます。
測量業務は独占業務!
既出したように、測量業務は測量士と測量士補の独占業務となります。建築関係の人であっても、測量士と測量士補の有資格者でなければ測量業務は行なえません。そのため、土地の開発や建設するには測量士の存在が必要不可欠なのです。
測量業務に加えて、図面作成も測量士のみが行える業務。難易度が高いだけでなく、それに見合うほど、必要とされる資格といえるでしょう。
転職・就職に有利
測量士の資格を有しているだけでも、転職や就職に有利になります。測量業務を手掛ける会社は、事業者ごとに有資格者を1名以上配置しなければなりません。採用する企業としても、測量士の資格を持っている人材は貴重なのです。
また、不動産や建築といった業種は将来なくなることは考えづらいでしょう。測量業務は建物を建築するときに必要となる仕事なので、測量士は将来的にも需要の高い資格といえます。
土地家屋調査士とのダブルライセンスがおすすめ
測量士や測量士補は、土地家屋調査士の資格取得を目指す人にとって大きなメリットとなるでしょう。不動産登記の測量である土地家屋調査士の資格は、測量士と業務内容が似ていることから、同時取得するための受験勉強もスムーズに。ダブルライセンスとなれば、活躍の場がさらに広がりより貴重な人材として重宝されます。
また、測量士と測量士補を取得しておくと、土地家屋調査士試験の一部が免除されるという特例があるため、測量士補を取得して土地家屋調査士を目指す人が多くいるのです。
確実な合格を目指すなら計画的に
測量士は難易度が高いとされていますが、それに見合ったメリットを持った資格です。測量士を持っていると、貴重な人材として転職や就職に有利となります。
独学での取得を目指すのであれば、テキストや過去問に取り組むなどしてしっかりと対策することが合格への近道。自分の苦手な分野を理解し、計画的に勉強することで合格を目指しましょう。業界の需要が高く、必要とされる資格なので1日でも早く受験勉強に取り組んでくださいね。