簡単に建設現場をデジタル化!使えば分かる快適操作、米国発の建設テック「StructionSite」とは?

「StructionSite」で簡単に建設現場をデジタル化

建設現場のICT化が叫ばれて久しいが、未だ目に見える生産性向上・業務効率化には至っていない。その理由の一つに、建設業界は対象となる工程が分かれているため、中小建設会社の個々の企業努力では改善しにくい点がある。

こうした課題に対し、株式会社日立ソリューションズは、これまで蓄積してきたAIやIoT、画像解析、高精度位置測位などのデジタル技術を集約することで、建設現場の各工程を包括し、一気通貫で支援する「建設業向けソリューション」を今年8月に発表。

さらに10月からは同ソリューションにおける新サービスとして、米国発の「StructionSite」を提供開始。建設現場の360度画像を図面と紐づけてクラウド上で管理・共有し、施工進捗の管理や設備の調査・点検業務を抜本から効率化する製品で、米国では既に270社以上に導入されている。

「StructionSite」の国内展開で目指す世界とはどのようなものか。株式会社日立ソリューションズ 空間情報ソリューション部 グループマネージャ 犬塚 武氏に話を聞いた。

工事を一気通貫で効率化する「建設業向けソリューション」

株式会社日立ソリューションズ 空間情報ソリューション部 グループマネージャ 犬塚 武氏

――そもそも、日立ソリューションズが建設業向けのサービスを展開するに至った経緯は?

犬塚さん 建設業界では、人手不足や長時間労働といった課題が長年にわたりのしかかっており、国としても”i-Construction”をはじめとした、働き方改革を進めている経緯があります。そして、こうした課題へのアプローチとして、”生産性向上”を大きなキーワードに”建設テック“や”Con-Tech“と呼ばれるITソリューションが徐々に普及しています。

日立ソリューションズとしては、これまで高精度位置計測やAI、画像判定といったソリューションを開発してきましたが、今後いっそうIT化が進んでいく建設業界に対し、これまで個別に提供してきたソリューションを集約し、体系化できれば、建設業界にも寄与できると考え、今年8月から「建設業向けソリューション」としてローンチしました

――「建設業向けソリューション」の内容は?

犬塚さん 具体的には、「プロジェクト管理」「図面管理」「調査・点検」「安全衛生」の4つのアプローチで、調査から設計、施工、検査・維持管理までの全体の工程に対して一気通貫で業務の効率化を可能にするソリューションです。

「建設業向けソリューション」の概要

「建設業向けソリューション」は、これらの4つの大きな枠組みで展開をしているわけですが、今回われわれはそれらソリューションに必要な建設現場のデジタル化についてお話したいと思います。


米国で270社以上が導入する「StructionSite」とは?

――建設現場のデジタル化に重点を置いているのはなぜ?

犬塚さん 日立ソリューションズの強みであった衛星画像や画像解析、地理情報の解析といった技術を建設現場のデジタル化に用いることで圧倒的な業務効率化に繋がると考えたからです。中でも、「StructionSite(ストラクションサイト)」という米国のStructionSite社が開発した、建設現場向け360°画像データ管理サービスの展開に注力しています。

――「StructionSite」とは?

犬塚さん プロジェクト関係者が撮った従来画像や360°カメラで撮影した現場の画像及び動画を、一つの場所(クラウド)にアップして、図面上に配置・管理できるサービスです。フロア図面と紐づけて時系列で管理でき、撮影した画像はクラウド上に保存され、自動的に整理されていきますので、わざわざ個人のデータフォルダを探す手間がなく、PCやスマートフォン、タブレットなどで、いつでもどこでも建設現場内の状況を確認することが可能です。米国では、現地の大手建設会社を中心に277社が導入しています(2020年10月末時点)。

画像が登録されているポイントには、ピンが表示され、ピンを選択すると撮影した画像を参照できる

ドラッグで360°画像を回転できる

また、StructionSiteには、360°画像を活用した3つの特徴的な機能があります。

1つ目が、撮影した画像と過去画像やBIMとの「比較表示機能」です。ピンに入っている360°画像には図面と連携した位置情報と時系列画像が蓄積されているため、同じ撮影地点の過去の画像や取り込んだBIMデータを、画面上に並べて比較表示することが可能です。これにより画像同士では「過去と現在」の状況比較ができ、その上画像とBIMでは「現在と未来」の比較もでき、工事の進捗が一目で確認できます。

例として、StructionSiteユーザーの一社である大林組さんのユースケースでは、工事記録としてプロジェクト関係者と共有するために使用しています。たとえば工事記録で重要になってくるのは隠蔽部です。StructionSiteを用いることで、容易に該当箇所の状況写真を確認することができます。また、発注者や工事監理者との打ち合わせ及び現場巡視等で、指摘・質問・確認があった場合、モバイル端末によりその場ですぐに該当部の写真を見せ、説明することも可能です。

また、こちらがBIMと比較した画面です。現場の施工中の画像に、完成形のBIMと比較表示することで、今ある開口は何のためなのか、今後どのようなステップで施工していくのかなど、一目瞭然です。

BIM(左)と現地画像(右)との比較表示イメージ(提供:大林組)

2つ目が、画像内の任意の場所にコメントを付けることができる「チャット機能」です。写真上に付箋を貼るような感覚で施工中の気になるポイントについて、リモートで現場作業者に指示や確認ができるため、コミュニケーションの効率化が図れます。

画像上にピンポイントでメッセージを添付でき、現場作業者のスマホへ通知される

最後に、StructionSiteの最も特徴的な機能として、「VideoWalk(ビデオウォーク)」機能を紹介します。これは、現場内を歩いて360°カメラで動画撮影するだけで、撮影時に歩いた軌跡をAIが解析し、動画から連続した画像を自動で図面上に配置する機能です。実際に以下の動画をご覧ください。

VideoWalk by StructionSite / StructionSite Inc.

まず、図面上で撮影開始地点を指定し、録画を開始します。次に現場の中を歩き、録画を停止し、最後に撮影終了地点を指定します。すると、歩いた軌跡がクラウド上で自動で解析され、2~3時間で図面上にプロットされます。大規模現場でも手軽に現場の進捗状況撮影を行うことができます。


工事関係者全員が画像情報を共有できる

――現場ではどのような業務効率化が図られている?

犬塚さん 大きな部分では、進捗管理、品質管理、手戻りの防止、コミュニケーションの円滑化です。

特にリニューアルの現場では、限られた時間内で現地調査を行う必要があるので、撮り忘れ・撮り漏れがないように写真を撮る必要があります。360°画像は撮り漏れを防ぐことができ、さらにStructionSiteを使うことで、位置情報と時系列で整理することが出来ます。

プロジェクト関係者にアカウントを付与すれば、例えばゼネコンが撮影した画像を各協力会社さんにも共有できますし、協力会社さんが撮影したデータもクラウドに集約できます。さらに言えば、発注者や設計事務所の方もアクセスが可能です。

そのため、StructionSiteで撮影した画像を見ながら、各協力会社さんと円滑に打ち合わせができ、意思疎通や情報の共有化が極めて容易になりますし、施主や設計事務所の方と現場を巡回・巡視する際にも、指摘箇所をBIMや過去の画像からすぐに説明することができます

カメラとスマートフォンやタブレットを用意いただき、アカウントを取得すればすぐにご利用いただける導入ハードルの低さも評価いただいているポイントです。

――経験の浅い現場監督でも、容易に利用できそうですね。

犬塚さん ええ。実際に、主に若年職員が撮影をすることが多いと聞いています。英語表記になっていますが、操作性も直感的で使いやすいUIとなっているので、ユーザーさんは抵抗なく使用していらっしゃいます。

さらに、米国では解約率も3%以下と非常に低い数値を実現していることから、長期的に顧客満足度の高いソリューションになっていると感じています。

データを有効活用した現場管理へ

――StructionSiteは、どんな現場でも効果を発揮する?

犬塚さん ええ。建築工事や設備工事はもちろん、土木工事でも橋梁からダムまで、色々なプロジェクトで利用いただいています。土建共通でBIMとの比較はよくご利用されていますし、土木現場ですと敷地が広大でかつ遮蔽物等も少ないため、まずは現地調査でVideoWalkからご利用いただくことも多いですね。

――StructionSiteの浸透で、建設現場はどう変わる?

犬塚さん 建設業界では新しいソリューションが続々と誕生し、これまで伝統的に守ってきた工程や手順がガラっと変革していくフェーズに直面しています。StructionSiteは画像の管理だけでなく、新しい機能も開発しています。例えば、AIを用いることで、乾式壁と天井ボードの施工進捗率をVideoWalkの画像から自動で算出することができる「SmartTrack」という機能が開発されました。これから日本で展開されていきます。

近い将来、データの活用をさらに進めることで、工事現場の「ムリ・ムダ・ムラ」が省かれて、今と比べて圧倒的に高い生産性で現場管理ができる世界になっていくのではと考えています。

StructionSiteは、大企業、大規模現場向けに特化した製品ではありません。中小規模でもご利用いただけるような価格帯をご用意していますので、最新の建設テックを導入いただいて、その良さを実感していただきたいと思っています。無料トライアルもご用意していますし、デモンストレーションを通して、より具体的なStructionSiteの操作方法を解説する無料ウェビナーも開催予定ですので、ぜひご参加ください!

日立ソリューションズは、今後も現場業務を変革するソリューションを提供して参りますので、ご期待ください。

※無料ウェビナーの申し込みは、コチラから。

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