米国で270社以上が導入する「StructionSite」とは?
――建設現場のデジタル化に重点を置いているのはなぜ?
犬塚さん 日立ソリューションズの強みであった衛星画像や画像解析、地理情報の解析といった技術を建設現場のデジタル化に用いることで圧倒的な業務効率化に繋がると考えたからです。中でも、「StructionSite(ストラクションサイト)」という米国のStructionSite社が開発した、建設現場向け360°画像データ管理サービスの展開に注力しています。
――「StructionSite」とは?
犬塚さん プロジェクト関係者が撮った従来画像や360°カメラで撮影した現場の画像及び動画を、一つの場所(クラウド)にアップして、図面上に配置・管理できるサービスです。フロア図面と紐づけて時系列で管理でき、撮影した画像はクラウド上に保存され、自動的に整理されていきますので、わざわざ個人のデータフォルダを探す手間がなく、PCやスマートフォン、タブレットなどで、いつでもどこでも建設現場内の状況を確認することが可能です。米国では、現地の大手建設会社を中心に277社が導入しています(2020年10月末時点)。

画像が登録されているポイントには、ピンが表示され、ピンを選択すると撮影した画像を参照できる

ドラッグで360°画像を回転できる
また、StructionSiteには、360°画像を活用した3つの特徴的な機能があります。
1つ目が、撮影した画像と過去画像やBIMとの「比較表示機能」です。ピンに入っている360°画像には図面と連携した位置情報と時系列画像が蓄積されているため、同じ撮影地点の過去の画像や取り込んだBIMデータを、画面上に並べて比較表示することが可能です。これにより画像同士では「過去と現在」の状況比較ができ、その上画像とBIMでは「現在と未来」の比較もでき、工事の進捗が一目で確認できます。
例として、StructionSiteユーザーの一社である大林組さんのユースケースでは、工事記録としてプロジェクト関係者と共有するために使用しています。たとえば工事記録で重要になってくるのは隠蔽部です。StructionSiteを用いることで、容易に該当箇所の状況写真を確認することができます。また、発注者や工事監理者との打ち合わせ及び現場巡視等で、指摘・質問・確認があった場合、モバイル端末によりその場ですぐに該当部の写真を見せ、説明することも可能です。
また、こちらがBIMと比較した画面です。現場の施工中の画像に、完成形のBIMと比較表示することで、今ある開口は何のためなのか、今後どのようなステップで施工していくのかなど、一目瞭然です。

BIM(左)と現地画像(右)との比較表示イメージ(提供:大林組)
2つ目が、画像内の任意の場所にコメントを付けることができる「チャット機能」です。写真上に付箋を貼るような感覚で施工中の気になるポイントについて、リモートで現場作業者に指示や確認ができるため、コミュニケーションの効率化が図れます。

画像上にピンポイントでメッセージを添付でき、現場作業者のスマホへ通知される
最後に、StructionSiteの最も特徴的な機能として、「VideoWalk(ビデオウォーク)」機能を紹介します。これは、現場内を歩いて360°カメラで動画撮影するだけで、撮影時に歩いた軌跡をAIが解析し、動画から連続した画像を自動で図面上に配置する機能です。実際に以下の動画をご覧ください。
VideoWalk by StructionSite / StructionSite Inc.
まず、図面上で撮影開始地点を指定し、録画を開始します。次に現場の中を歩き、録画を停止し、最後に撮影終了地点を指定します。すると、歩いた軌跡がクラウド上で自動で解析され、2~3時間で図面上にプロットされます。大規模現場でも手軽に現場の進捗状況撮影を行うことができます。
さすが日立って感じ