各地で車両の立ち往生が多発
今年に入り、日本海側を中心とした豪雪で、道路交通網のマヒによる車両の立ち往生が後を絶ちません。現在、私は幸いにも積雪地帯での生活をしていませんが、そのような土地でもちょっとした積雪があると、電車をはじめとした公共交通機関の大きな乱れが生じることが多いのも事実です。冬というのは、自然に対する交通インフラの脆弱性を痛感させられます。
さて、日々のニュースを見ていると、自動車道に限らず、一般道でも積雪による立ち往生が生じていると報じられています。自動車道と比較すると、立ち往生による拘束時間は短いようです。一般道は、道の分岐も多いでしょうし、避難できる店等も近くにあることが十分予想されることから、立ち往生の拘束時間が短いのではないかと想像しています。
今回書かせていただきます内容は、北国の田舎で起こった一般道での立ち往生です。このとき、私はこの北国の部隊所属の海上自衛官として勤務しており、災害派遣要請がでるかどうか・・・といった状況の中、待機していました。すでに5年以上も経過した過去の話ではありますが、何かしらの参考になれば幸いです。
田舎の一般道で、車両の立ち往生が発生
北国の某舞台で勤務していた際、前日の大雪により、田舎の一般道で積雪による車両の立ち往生が発生しているという情報が入り、部隊が災害派遣される可能性があると朝一番の会議で報告されました。
会議の中で「陸上自衛隊が対応するのではないか」という質問もあがりましたが、要請する自治体からは、一番近い自衛隊の基地が海上自衛隊であったことから、海上自衛隊にお願いしたいとの話が当直からの説明でありました。
ここで問題になったのは、私が所属している部隊は、実は現場から一番近い部隊ではなかったということです。災害派遣に伴って除雪活動を行うには重機が必要なのですが、一番近くの部隊には重機がないため、私が所属している部隊に協力を要請してきたという説明がありました。
この一般道自体は、南北一本道の幹線道路で周囲は森林と海に囲まれており、脇道もほとんどなく、かつ避難するような施設もありませんでした。また片側1車線の道路であり、積雪があると非常に狭い印象を与える道でした。
立ち往生の原因は、夕方に北に向かっていた車が坂道で動けなくなり、それが原因で明け方までに40kmにわたって車両が立ち往生したというものでした。
北側からではないと立ち往生を解消できない
私の所属する部隊は、現場から通常であれば車で2時間、冬季であれば2時間半から3時間を要する南側の場所に所在していました。かたや災害派遣要請があった部隊は、現場まで通常であれば1時間、冬季であれば1時間半から2時間と、現場から北側に位置していました。
すでに要請された部隊には、災害派遣命令が出ておりましたが、私の部隊には一向に出る気配がありません。そもそも、車の立ち往生を解消するには、先頭の北側に向かっている車を1台ずつ動かさなければなりません。つまり、北側から攻めていかなければならないということです。私の部隊は南側かつ迂回路がないため、南側からでは立ち往生に加わってしまうだけです。
結局、当初要請された部隊が、北側から運転手の安否確認と保有している小型除雪機と人力をフル稼働させて、1台づつ救助したそうです。一方、私たちの部隊はというと、南側から一部の隊員を派出し、車両の運転手の安否確認のため、徒歩で各車両を巡回する活動にとどまりました。
自然に対するリスクマネジメントの欠如
実はこの立ち往生が起きた道路は、この北国の北と南をつなぐ重要な幹線道路だったのです。東日本大震災発災から約1年後だったということもあり、当時、地元新聞紙ではこの状況を案じ、原子力災害が起きた際の避難に問題があると大きく報道されていました。
普段、雪道の運転に慣れている北国でもこのようなことが起きることを考えると、今年の大雪に対する備えの甘さと認識の甘さ、すなわち自然に対する畏敬の念が欠けているのではないかと感じざるを得ません。
冬タイヤを履いているから、チェーンを巻いているから絶対大丈夫なわけではありません。また、道路管理者にも雪に対するリスクマネジメントの欠如があることも否定できません。
雪に限らず、自然に対するリスクマネジメントを一人一人が意識することで、災害を軽減することは可能です。過去に学ぶことが形骸化されている証左であると、ニュースを見るたびに感じます。
今回は、建設現場とは直接的には関係のない内容になりましたが、車両を扱う建設業としては軽視できない事象であると思い、筆を取らせていただきました。特に、北国で建設業に従事されている方のコメントをお待ちしています。