グリコンシリーズ第4弾【調査センターの2名】
グリコンシリーズ第4弾は、グリーン・コンサルタント株式会社調査センターのお二人だ。
調査センターでは、測定車両を用い、全国の舗装の路面性状や舗装構造などの調査、解析などを行っている。オフィスは、株式会社NIPPOの技術拠点があるさいたま市(大宮)に置く。
測定車を用いた調査には、どのようなノウハウが必要なのだろうか。お二人のこれまでのキャリアを踏まえつつ、ノウハウの身につけ方、仕事のやりがいなどについて話を聞いてきた。
- 森川 健治さん
グリーン・コンサルタント株式会社 調査センター長 - 藤森 浩太さん
グリーン・コンサルタント株式会社 調査センター調査グループ
グリコンシリーズ第1弾【荒井明夫 代表取締役】の記事はコチラから
測量じゃ食えないだろうから、コンサルかな
森川さん
――入社何年目ですか?
森川さん 27年目です。
藤森さん 3年目です。
――なぜグリコンに入社したのですか?
森川さん もともとは地図をつくる仕事につきたいと思っていました。それで測量の専門学校に通って、卒業してから、その専門学校で3年ぐらい助手として働いていました。ただ、学校にいても地図をつくれないので、測量会社に就職しようと考えました。ただ、「測量一本だけだと食えないだろう」と考え直し、「じゃあコンサルかな」ということで、コンサルの求人を探しました。そこでグリコンの求人を見つけ、入社しました。
藤森さん
藤森さん 父親が土木関係の仕事をしていて、ODAの仕事でよく海外で仕事をしていたんです。エジプトで仕事をしていたときは、一緒について行って、4年間ほど現地のアメリカンスクールに通っていました。現場にも連れて行ってもらったことがあって、「土木ってこういうことをしているんだ」というのを肌で感じました。
日本に帰って学校を卒業してからは、しばらく飲食店で働いていたのですが、転職しようと思っていました。その際、縁があって、グリコンで働くことになりました。
――縁とは?
藤森さん グリコンの前の社長さんと父親が知り合いだったんです(笑)。
――なるほど(笑)。
1年かけて沖縄の空港の舗装を調査
――調査センターではどのようなお仕事をしているのですか?
森川さん 空港や道路などの舗装の傷み具合の調査点検を行っている部署です。舗装の損傷を測る3要素と言われている「ヒビ割れ」、「わだち掘れ」、「平坦性」について調査を行っています。調査の対象は、舗装の表面だけではなく、舗装の構造、「支持力」を調べます。調査した結果をもとに、発注者さんへの補修工法の提案なども行っています。
センター社員は私を含め5名います。センターは、大宮(さいたま市)にあります。NIPPOの調査のお手伝いをしたり、グリコンとして独自に調査を行ったりしています。仕事量的には、年によって違いますが、だいたい半々ぐらいです。
路面性状測定車(RS)
――舗装の調査はどのように行っているのですか?
森川さん 調査には、路面調査を行う「路面性状測定車(RS)」と舗装構造を診断する「FWD測定車」という特殊な車両を用います。車両以外にも、特殊な解析装置も用います。
――大宮から全国に出かけて、調査を行っているのですか?
森川さん そうですね。例えば、九州で調査する場合は、有明からフェリーに車を乗せて、九州まで調査に行きます。最近では、昨年4月から1年かけて沖縄で調査を行いました。沖縄県管理空港のうち12空港の基本施設(滑走路、誘導路、エプロン)の定期点検ということで、沖縄本島以外の島々をぐるっと回りました。フェリーで那覇まで車を運んで、そこからいろいろな島に行くカタチをとりました。
調査センターの社員数は限られているので、すべて調査センターの社員が行うのは難しいものがあります。そこで、調査センターの社員がメインとなり、現場で指揮を執りながら、各営業所の社員にサポートしてもらいながら、仕事をこなしています。
飛行場滑走路でレベル測量を行う森川さん(右)
――楽しそうですけど。
森川さん 行く前は楽しいかと思っていたのですが、コロナがあったので、宿と現場の往復ばかりで、しっかり楽しめなかったですね(笑)。それでも、地元の方々と仲良くなれたり、観光ではまず行けないような場所にも行けたりしたので、それなりに楽しめましたけど。
――藤森さんが今担当しているお仕事は?
藤森さん 今は、現場で車両に乗って、舗装の調査、診断結果を測定、解析するのが主な仕事です。先ほど話しのあった沖縄にも行きました。北海道から沖縄まで現場に行っています。都道府県別で言うと、20ぐらいは行っていると思います。
――楽しいですか?
藤森さん 楽しいです(笑)。やはり、外に出ると、役所の方々とか、いろいろな人と関わりが持てるので。この間は島根に行きました。コロナで食べる場所には困ったんですが、初めて行ったので、いろいろ楽しかったです。
測定車を走らせれば測定できるというものではない
FWD測定車
――舗装の調査、診断について、グリコン独自のノウハウがあるのですか?
森川さん 路面性状調査に関しては、グリコンと同じような測定車を持っている会社は何社かあります。ただ、測定車でしっかりした調査、解析を行うには、それなりのノウハウが必要になります。ただ測定車を走らせれば、調査、解析ができるというものではないからです。
測定車で走っているときに、「今、どういうデータが取れているのか」をわかっている人間が同乗してこそ、測定のやり直しもなく、効率的にデータがとれるようなところがあります。FWD測定車についても、測定データを補正する前の生データを見ただけで、実際のたわみ量を予測し、解析できる人間がいます。そういうノウハウを持った人間がいることが、他社にはないグリコンの強みだと考えています。
――「他社には負けない」ですか?
森川さん 負けないですね(笑)。同じ測定車を使っている他社がいても、グリコンには、他社にはマネできない場数をこなしてきた経験があるからです。
――ノウハウについてどうお考えですか?
藤森さん 測定車には、運転手とオペレーターが乗り込むのですが、私はオペレーターとして実務を経験してきました。路面性状については、それなりに測定、解析のノウハウは身に付いてきたかなと思っています。FWDについても、上司や先輩がいるので、「自分にはできない」と思うことはありません。
NEXCO出向時に「夜の町田マップ」を作成
――思い出に残る仕事はありますか?
森川さん NEXCOさん、当時の日本道路公団さんの試験所に3年ほど出向したことがあります。町田にあった試験所には、「回転式舗装試験機」という日本に1台しかないような試験機を使った試験を担当したことがあります。試験所には、様々な会社から人が来ていたので、いろいろ勉強になりました。
町田が職場になったので、町田に引っ越しました。夜の町田を毎晩徘徊していました。他の業界の方々と一緒に「夜の町田マップ」というものをつくったりもしました。仕事だけでなく、夜も楽しい思い出がたくさんあります(笑)。
藤森さん 昨年度、路面性状委員会の詳細調査ワーキングという活動に参加させていただきました。秋田の山にある新設道路を実験場として使ったのですが、2車線すべて開削して、コアを抜き取って調査解析などを行いました。同業他社の方々とか、大学の先生などと関わりを持てました。自分自身のためになったということで、思い出に残っています。
――「調査の仕事をやっていて良かったな」と思うのはどういうときですか?
森川さん とある町発注の仕事で、町が管理する道路の路面性状やFWDを調査して、町道の舗装の管理計画をつくったことがあるんです。何年になったら、ここの舗装を直しましょうという計画ですね。その計画が町のHPに載っているのを見たとき、「お、やったな」と嬉しく思ったことがあります。そのときは、家族に対して「これ、俺がやったんだよ」と言いました(笑)。妻は「スゴいね」と言ってくれました。子供はまだ小さかったので、「ふ〜ん」という感じでしたけども(笑)。
藤森さん 昨年度末、1ヶ月ほどかけて、舗装厚を調査する仕事を1人でやり切ったときは、嬉しかったですね。舗装断面確認の調査で、舗装に直径5cmの穴を開けて、そこに「ボアホールカメラ」という魚眼レンズの付いたカメラを入れて、上層路盤、下層路盤、路床の厚さを確認する作業でした。全部で80本ぐらい抜いたのですが、すべて1人でずっと作業して、最後の成果物も1人でまとめました。金額的にもけっこう大きな仕事だったので、やり切ったときは「やったな」と思いました(笑)。
周りを見ていれば、何をすれば良いかはわかってくる
路面性状測定車で測定する藤森さん。ドライバーは森川さん
――舗装調査に向いている人とかありますか?
森川さん 以前までは「舗装のことを知っていることが大前提」と思っていたのですが、藤森くんの仕事ぶりを見て、考えを改めました(笑)。藤森くんが入社したときは、舗装のことはなにも知らない状態でした。
しかし、実際の現場に行くと、現場で周りの人間が何をしているかをちゃんと見ていて、自分はなにをするべきかについて常に考えていて、「自分はコレをやりましょうか」などと声を掛けてくるんです。「仕事に興味を持って、周りを良く見れる人間であれば、専門知識がなくてもできるんだな」と考えを改めました。
藤森くんが特別なのかもしれませんが、黙々と仕事をする人間よりも、周りとコミュニケーションをとれる人間が、調査という仕事に向いているのかなと考えているところです。
「場数を踏んで、出たデータをどう読むか」を経験していけば、誰でもできる仕事だと思っています。
――当の本人はどうですか?
藤森さん 舗装調査についてまったくわからないところから仕事に入っても、別に周りを見ていれば、わかってくるものなのかなと思っています。もちろん深い専門的な知識はあったほうが良いと思いますが、役所の方々と話をするうえで、専門用語を駆使して説明しなければいけないということはありません。今何をしているか「伝えること」が一番大事なので。現場でやっていることは難しいことですが、そこまで難しいことではないと考えています。
なんにでも興味を持つタイプの人間
――今後やりたい仕事とかありますか?
藤森さん 今後は、役所に提出する報告書の作成をしてみたいと思っています。
――もともとメンタルはお強いほうですか?
藤森さん メンタルが強いかどうかわかりませんが、なんにでも興味を持つタイプの人間なんです。スポーツも好きで、小学校のときはサッカーと競泳をやっていました。中学校のときは水球をやっていて、ジュニアオリンピックの強化選手に選ばれたことがあります。
海外に行ってからは、テニスをやっていました。アメリカンスクールに通っていたとき、最初は英語が全然わからなくて、世界史の単位を落としたんです。「くっそ〜」と思って、猛勉強して、2年目は世界史で学年1位をとりました。最初はわからなくても、興味を持って真剣に取り組めば、必ずできるようになると信じています。
――やはり、藤森さんが特別なんじゃないですか?(笑)
森山さん それもあるかもしれないですね(笑)。5年後には、グリコンのエースとして活躍してほしいと思っているところです。
意欲があれば、いくらでも仕事を任してもらえる
――グリコンの良いところ、悪いところをお願いします。
森川さん NIPPOの関連会社ということで、ネームバリューがあるので、仕事がやりやすいのが良いところだと思います。舗装コンサルという小さな業界ではありますが、トップ企業ということで居心地が良いというのはあります。
悪いところは、新しい人間がなかなか入って来ないので、フレッシュな考えが乏しくなっているところです。社内の雰囲気として、もっと積極的にいろいろなことをやっていく雰囲気が生まれれば、会社はもっと良くなるのにと感じているところです。
藤森さん 良いところは、本人に意欲があれば、いくらでも仕事を任してもらえるところです。先ほどお話ししたワーキンググループへの参加も、会社から「行ってみるか?」と提案していただいて実現したことでした。他の社員を差し置いて、「自分が参加したいです」とはなかなか言えないので。
悪いところは、年度末に仕事が集中することです(笑)。年度始めと年度末で仕事量にギャップがあるのは、正直シンドいですね(笑)。