左から武田さん、福間さん、佐々木さん

左から武田さん、福間さん、佐々木さん

【グリコンシリーズ第5弾】元サクソフォン奏者も在籍。営業所勤務ってアリなの?

グリコンシリーズ第5弾【中国営業所の3名】

グリコンシリーズ第5弾は、グリーン・コンサルタント株式会社の営業所業務の紹介だ。グリコンには全国11の営業所があり、それぞれエリア限定で業務を行っている。業務内容は、本社と同じ設計、調査、試験だが、本社のサポートに回ったり、エリア独自の仕事を受けるなど、役回りが異なる。営業所によっても、規模や業務内容などはマチマチだ。

数ある営業所の中から、今回は中国営業所(広島県府中町)に取材することにした。その理由は、元サクソフォン奏者の社員がいると聞いたからだ。転職理由を聞きたいというのもあるし、生の演奏を聞いてみたいというのもあった。その一方、勤続30年を越えるベテラン社員がゴロゴロいるとのことなので、出先ならではのリアルな話を聞けそうだというもあった。

ということで、グリコン中国営業所に行って、いろいろ話を聞いてきた。

  • 佐々木 喜代治さん
    グリーン・コンサルタント株式会社 中国営業所長
  • 武田 典明さん
    グリーン・コンサルタント株式会社 中国営業所 調査課課長代理
  • 福間 修人さん
    グリーン・コンサルタント株式会社(株式会社NIPPO 中国支店試験所派遣中)

グリコンシリーズ第1弾から読みたい方はコチラ

中国地方管内の設計、調査、試験業務を担当

佐々木さん

――中国営業所ではどのような業務を行っているのですか?

佐々木さん 中国営業所では、中国地方管内の設計、調査、試験業務を担当しています。設計業務は、本社の設計センターと一緒になって、開発案件の設計を行っています。調査業務は、本社の調査センターと一緒になって、調査を行っています。試験業務は、地元の道路管理者、業者さんなどから依頼を受け、業務を行っています。あとは、派遣業務として、NIPPOの中国支店試験所のほうで試験業務の手伝いをしています。

――営業所には社員さんは何名いるのですか?

佐々木さん 私を含め9名です。

――社員数は足りているのですか?

佐々木さん まだ足りていないです。設計業務は2名しかいないので、設計の人材を育てていかなければならないところです。調査業務も一応3名いるのですが、中国営業所としての調査業務を行っているのは1名だけです。ここも人を増やしていかないといけません。

現場作業をしている社員は全員50才代なので、社員の高齢化も問題です。けっこうギリギリの状態です(笑)。一刻も早く若い人に入ってもらって、ノウハウをドンドン継承していかなければなりません。

路面騒音測定業務は仕事量が多く、精神も削られた(笑)

――ずっと広島営業所勤務ですか?

佐々木さん そうですね。今年で36年目になります。グリコンに入る前は、NIPPOの中国支店試験所で働いていました。グリコンができたので、「転籍しないか」と言われ、そうしたわけです。出身は安芸太田町というところです。

――グリコンではこれまでどのようなお仕事を?

佐々木さん 中国地方整備局の中国技術事務所が発注する、試験舗装調査業務をメインで担当してきました。あとは、国土交通省と日本道路建設業協会が実施していた共同研究の事務局として、お手伝いしたりしていました。また、当時あった道路保全技術センターの中国支部が実施する調査案件のお手伝いなんかもやっていました。現在は、営業所長のかたわら、アスファルト混合物事前審査制度の中国地方の事務局を担当しています。

――思い出に残る仕事は?

佐々木さん 道路保全技術センターがあったころに、センターの仕事で路面騒音測定業務というのがあったのですが、中国管内の業務を担当したことです。国土交通省から測定車をお借りして、管内を移動しながら測定して回っていく仕事でした。

この仕事は、舗装工事が終わった後に走行して測定するのですが、年度終わりの2月、3月に業務が集中するわけです。業務はかなりキツかったので、印象に残っています。今ではまず考えられない仕事量ですが、当時は「頑張れ」と言われながら、必死でやっていました(笑)。

この仕事は、ツラかったこともあるのですが、自分たちの測定結果によって、舗装の合否が決まるので、そういうプレッシャーもスゴいものがありました。なので、精神を削られました(笑)。舗装会社さんが一生懸命つくった舗装に対して、自分たちが良い悪いを決めてしまうことになるので。

舗装会社さんもかなりピリピリしていましたね。測定結果はその会社の評価をも左右するからです。例えば、対象となる舗装に24時間降雨がないことを確認してから測定を実施することになっていたのですが、測定値に少しでも疑念があると、「雨が降ったかもしれない」という物言いがついて、さらに24時間後に測定し直すということもありました。

エプロン舗装工事で「気持ち良く大失敗」

武田さん

――武田さんはグリコンに入って何年目ですか?

武田さん 31年目です。出身は福山市です。母親がNIPPOに勤めていたので、「グリコンという会社ができるんだよ」という話を聞いて、それで入社しました。

――これまでどのようなお仕事を?

武田さん グリコンに入ってからは、NIPPOに出向となり、試験場と工場を行ったり来たりしていました。グリコンに入ってから31年間のうち、30年間はNIPPOで仕事をしてきました。

――ほぼNIPPOの社員ですね(笑)。

武田さん はい。とにかく、NIPPOの試験所で発生する仕事はなんでもやってきました。

――思い出に残る仕事は?

武田さん 失敗した現場ですね。31年間で数千の現場に関わってきましたが、中でも最も失敗したと思われるのが、20年ぐらい前にやったとある空港のエプロン(駐機場)の舗装工事です(笑)。工期の関係で、雨が降った直後に舗装工事をした現場です。

私は「ムリです」と頑張ったのですが、発注者から「工期はもう曲げられない。技術力でなんとかしてくれ」と言われました。雨に祟られた現場で、その前に2度ほど工期を遅らせていたんです。

私は「技術ではなんともなりません」とさらに頑張ったのですが、やむなく工事するハメになりました。私も観念して、いろいろ工夫しながら工事したのですが、やっぱりダメでした。気持ち良く大失敗しましたね(笑)。その後、発注者から「失敗した理由を報告しろ」と言われ、泣きながら書きました(笑)。

これが一番思い出に残っています。技術的にはどんなにダメであっても、工期には勝てないということを学びました。

――かなりツラかったでしょう?

武田さん 「うまくイキっこない」のはわかっているんだけど、「なんとか工夫しよう」と思った自分が甘かった。そういうことですね。「やっちゃダメなことは、やっちゃダメ」という教訓になりました。

――またやり直したのですか?

武田さん やり直しました。部分的に補修工事ですけど、提案から工事まで自分がまた対応しました。

――その舗装は今はどうなっていますか?

武田さん 現役です。補修がうまくいったので、まだ残っています。

――仕事のやりがい、魅力は?

武田さん 自分が持っている技術、知識によって、現場で抱えている問題や課題が解決し、円滑に現場が回ったときですね。そして、自分の仕事が評価されたときに、やりがいを感じますね。「武田さんが来てくれたおかげで、工事評点が良かった」と言われたときに、「この仕事をやっていて良かった」と感じました。

グリコンは家から一番近い職場だった

福間さん

――福間さんは何年目ですか?

福間さん 社員になったのは、今年の4月です。グリコンには、昨年12月からアルバイトとして働いていました。

――グリコンに入る前は?

福間さん 音楽活動をしていました。

――音楽活動ですか?

福間さん サクソフォンという楽器を演奏していました。広島市内にあるエリザベト音楽大学を卒業してから、国内外で演奏活動をしていました。

――なぜグリコンに転職を?

福間さん コロナ禍で、演奏する機会がゼロになってしまったからです。私には2才の息子がいるのですが、収入がないので、「このままでは家庭崩壊するな」と思いました。「30才も過ぎたし、もう潮時かな」ということで、音楽以外の仕事に就こうと考えました。

それでいろいろ求人を調べ始めたのですが、とりあえず「家から一番近い職場」を探しました。それで見つけたのがグリコンだったんです。自宅は同じ府中町にあり、会社まで徒歩8分でしたので(笑)。とりあえず、グリコンに応募しました。グリコンの仕事内容などを調べていくと、「これなら自分にもできそうだ」と思うようになりました。それで、とりあえず、アルバイトとして働き始めました。

https://youtu.be/y7U3Cfcb_eU

元プロのサクソフォン奏者にルパン三世のテーマを吹いてもらったら、スゴかった / YouTube(椿四十郎)

採用の決め手は、本人の「ヤル気」

――福間さん採用の経緯を教えてもらえますか?

佐々木さん 中国営業所では社員が高齢化しているので、若手社員が欲しいということで、常に求人を募集していました。しかし、求人を出しても、誰も手を挙げない、応募がないという状況でした。そんな中で、福間さんから応募があったわけです。

面接をすると、真面目そうだし、ヤル気もありそうだし、管内であればある程度の出張もできるということだったので、アルバイトとして試運転してみようという話になりました。異業種からの転職なので、「この業界に本当に耐えられるか」、様子を見ようということでした。

福間さんのアルバイトとしての働きぶりは、自分から積極的に仕事を覚えようとしている姿勢が見られたので、社長に相談した上で、正社員として採用することになりました。決め手になったのは、やはり「本人のヤル気」でしたね。

土の粒度試験(ふるい分け)を行っている福間さん

――福間さんの指導教育は、武田さんがなさっていたのですか?

武田さん ウチの仕事は、土木の中でも試験に特化した仕事です。土木の仕事は、平たく言えば「算数」です。算数ができれば、土木はできるわけです。そういう意味では、土木のことはなにも知らないとしても、誰でも土木の仕事を覚えるチャンスがあるわけです。福間さんが入ったときには、試験内容について簡単に説明しながら、作業内容について学んでもらいました。その作業内容の目的についても説明しながらやりましたね。

――「本人のヤル気」を感じたわけですね。

武田さん それは感じましたね。ある程度仕事に慣れたころに、「一人でやってくれ」と仕事を投げたのですが、以前教えたことをちゃんとメモに取っていて、それを見ながら一人でやり切りました。それは感心しましたね。それでヤル気を確信しました。

音楽の仕事より、働く時間は減った

――今どんなお仕事を?

福間さん 今はNIPPO中国支店試験所に派遣というカタチで、依頼試験や現場試験をこなしています。まだまだ日々勉強しながらですが、1人で作業することもあります。

――音楽と土木ではまったく違う仕事だと思われますが、戸惑いとかはないですか?

福間さん 仕事でわからないことはたくさんありますが、戸惑うとか、イヤだなと思うようなことはなかったです。子どものころから工具に触ったりするのは好きだったこともあって、現場仕事なんかもスッと入っていけましたね。高校も理系の学科だったので、数字とかにも抵抗感はありませんので。

音楽の仕事をやっていたときは、自分で車を運転して、会場まで行って、演奏を終えて帰ってくることの繰り返しでした。北海道と沖縄を除くすべての都府県というカタチで出かけていたので、基本的に演奏時間よりも運転時間のほうが全然長かったわけです。

グリコンでは、中国地方の現場に行くこともあるわけですが、音楽をやっていたころに比べれば、移動がスゴく近く感じています。そういう面では、音楽を仕事にしていた時より、総計労働時間は減りました。

――音楽家として活動していたころのほうがきつかったですか?

福間さん きつかったですね(笑)。自営業でしたので。午前2時に家を出て、午前9時に着いて、1時間演奏したら、また7時間運転して帰るという日々だったので。それと比べれば、精神的にも肉体的にも、今の仕事のほうがラクですね。

武田さん 福間さんにちょっとキツい仕事を任せたこともあったのですが、「これぐらい全然楽勝です」と言っていました。それ以外でも、ネガティブなことは一切言いませんでしたね。そういうところも含めて、「ヤル気があるな」と感じたわけです。

自分のためではなく、家族のために働く

――福間さんに今後どうなってほしいとかありますか?

佐々木さん 福間さんは一番の若手なので、将来的には営業所を担う人材に育ってほしいと思っています。今のところは試験調査だけですが、時間があれば、CADの使い方なども覚えていってほしいですね。少しずつで良いので、スキルアップしていってもらいたいと思っています。

武田さん 自分が経験したことを、同じように繰り返しやっていける人になってもらいたいですね。あとは、新しい人が入って来たときに、教えられるような人になってほしいと思っています。

――お二人のお話を聞いて本人としてどうですか?あと、音楽演奏のほうでも期待されているようですけど。

福間さん 音楽のことで会社の役に立てることがあれば、もちろんやりたいと思っています。音楽活動は、「自分がやりたい」からやっていた仕事でしたが、今の仕事は「家族のため」にやっている仕事です。20才代のころは「自分がやりたい」を突き進んでも良かったと思っていますが、結婚し、子どもができた30才代になった今は、「家庭を守ること」を最優先にしなければならないと考えています。これからは「自分のためではなく、家族のために働く」ということですね。

そのためには安定したものが必要です。ただ、音楽で生活することはとても不安定です。評価してくれる人はいますが、多くはありません。音楽で生きることについて、自分としてはやり切ったと感じています。

これからは、新しい業界の中で、自分が身に付けられることを身に付けていって、スキルアップしながら、グリコンの役に立ちたいと思っているところです。

【グリコンシリーズ第1弾】 グリーン・コンサルタントってなんの会社?

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