左から、菅野さん、何さん、齋藤さん

左から、菅野さん、何さん、齋藤さん

日大工学部で舗装を学ぶ学生に聞いた。”なぜ土木の世界を選んだのか?”

土木の世界に入った理由、舗装研究の魅力とは

先日、舗装を専門とする日本大学工学部土木学科の前島拓先生の記事を出した。前島先生の研究グループには、10名ほどの学生がいると聞いた。

そのうち、大学院の学生さん3名に話を聞く機会を得た。そこで、なぜ土木の世界に入ったのか、舗装研究の魅力はなにかなどについて、生の声を聞いてみた。前島先生にも、オブザーバーとして参加してもらった。

  • 何 宗耀(カ ソウヨウ)さん 大学院2年生
  • 菅野 日南(カンノ ヒナ)さん 大学院1年生
  • 齋藤 優佑(サイトウ ユウスケ)さん 大学院1年生

「日大の土木だったら、良い就職先が見つかると思うよ」

何さん

――土木に興味を持った理由は?

何さん 身近に土木業界で働いていた人間がいたので、それで興味を持ちました。

――ご出身は中国のどちらですか?

何さん 河南省です。

――日本に来られたのは、大学からですか?

何さん そうです。高校3年生のときに「土木を勉強したい」と考えるようになりました。日本の大学で学びたいということで、日本大学に留学することにしました。2017年から日本で勉強しています。

――日本で土木を学ぼうと考えたのはなぜですか?

何さん 日本では、より新しい土木技術の開発が進められているからです。

――舗装を学んでいる理由は?

何さん 道路インフラの中でも、一番利用されている部分だからです。この部分で、自分の力を発揮したいと考えました。今は、コンクリート舗装の研究をしています。

――菅野さんが土木に興味を持った理由は?

菅野さん 正直に言うと、大学受験に失敗したからです(笑)。本当は飛行機の研究をやりたかったんです。親から「日大の土木だったら、良い就職先が見つかると思うよ」と勧められて、土木を選びました。

――ご出身は?

菅野さん 地元の福島です。

――道路工学・構造研究室を選んだのはなぜですか?

菅野さん 「コンクリートも舗装もどちらも勉強したいな」と思っていたので、道路工学・構造研究室を選びました。

――斎藤さん、同じ質問ですが。

齋藤さん 言い方はアレですけど、「土木は食いっぱぐれない」と思ったので、土木工学科を受験しました。日本は災害が多いので、仕事には困らないかなと。

――ご出身は?

齋藤さん 山形県です。

「東北唯一の研究室」に興味を持った

齋藤さん

――道路工学・構造研究室を選んだ理由は?

齋藤さん 興味本位です。研究室の紹介資料を見たときに、「東北で唯一のアスファルトに関する研究室」と書いてあったので、「どういう研究をやっているのかな」と興味を持ったので、選びました。

――舗装の研究は楽しいですか?

何さん けっこう楽しいです。とくに実験の解析が面白いです。

――日本と中国で舗装に違いはありますか?

何さん 違いますね。交通状況が違うので、舗装の幅の標準とか、目地部の間隔とか、路盤の材料なんかも違います。なにより、コンクリート舗装のシェアは、日本では5%ほどですが、中国では40〜50%ほどに上ります。

――コンクリート舗装を研究する魅力はなんですか?

何さん 材料条件だけでなく、構造条件や実際の交通条件と環境を考慮した上で解析を行います。舗装では、特に路面の機能性が重要であり、他の構造物とは異なる視点で研究できることが面白いです。

――菅野さん、今やっている研究はどのようなものですか?

菅野さん 新たな材料を使用した高耐久コンクリート舗装の研究です。

――楽しいですか?

菅野さん 楽しいです。過去にそれほど事例がないので、過去のデータに縛られないのが、楽しいです。

――斎藤さんは今、どのような研究を?

齋藤さん アスファルト舗装の疲労破壊メカニズムについて研究しています。道路橋の舗装と床版の界面のところ、舗装の継ぎ目のところから雨水などが侵入し、そこに交通荷重がかかり、摩耗作用によって、コンクリートが砂利化するのが、劣化現象として問題になっています。この劣化によって、アスファルトがどのように壊れるのかを研究しています。

――楽しいですか?

齋藤さん 楽しいですね。アスファルトは、温度が高いと柔らかくなり、低いと固くなりますが、物質として一定の姿じゃないところが面白いなと思っています。

「あ、そこ(土木)やってんだ」

菅野さん

――舗装の研究をしていることについて、周りの反応は?

齋藤さん 実体験としてはとくにこれという反応をされたことはないですけど、コンクリートなどと比べると、あまりわかっていない感じはありますね。舗装のことについて話したことはないので、しょうがないなと思っていますけど。

――菅野さん、周りの反応は?

菅野さん 親から「なに研究しているの?」と聞かれたことはあります。「コンクリート舗装のことをやってるよ」と答えたのですが、舗装ではなく、コンクリートのことをやっていると思っていたらしくて、「あ、舗装なんだ」みたいな反応をされましたね。「で、その研究ってどういう意味があるの?」とも言われました。

友だちからは、舗装と言うより、「あ、そこ(土木)やってんだ」という反応でした(笑)。ちょっと驚かれました。女子が土木やっているのが、イメージ的になかったようです。世間的にはやっぱり、土木には「ブラックでしょ」とか、「男社会でしょ」とかのイメージがあるようです。

私自身まだ会社に入ったことがないので、実際のところはわかりませんが、少なくとも、研究自体は別にツラくないし、ドロだらけにもならないので、土木に対して悪いイメージはないですね。

――何さん、中国では土木のイメージはどうですか?

何さん 9年ぐらい前は、中国では土木は大人気でした。他の職業と比べ、給料も良かったです。ただ、最近は人材が飽和状態で、日本と同じような状態になっていると思います。やっぱり、AIとか、IT分野の職業の人気が高くなっています。中国では、土木は伝統工業と呼ばれています。最新の中国の若者は、土木よりなにより、ITの仕事が好きなようです。

――中国でも、IT系の仕事は華やかなイメージがある?

何さん そうですね。ただ、私や家族は、土木のほうがITよりも安定している仕事だと思っています。ITの仕事も疲れると思いますし(笑)。

舗装の研究を活かせる仕事に就きたい

――今後どうしたいですか?

何さん 来年、博士課程なので、このままコンクリート舗装の解析の研究を続けたいです。目地を含めた解析とか、配合の選定とか。解析すると、毎回面白い結果が出てくるので。将来的にはコンクリート舗装の研究者になりたいです。

――中国には戻らない?

何さん とりあえず戻らないですね(笑)。

――中国には帰ってるのですか?

何さん ここ数年は帰ってないですね。

――菅野さんは、将来についてどう考えていますか?

菅野さん 大学院で学んだ知識を活かる仕事に就きたいと思っています。まあ、舗装関係の会社が良いかなと。

――斎藤さんは今後どうしたいですか?

齋藤さん 大学院を卒業したら、アスファルト関係の会社に就職しようと考えています。自分としては現場向きの人間ではないと思っているので、研究所とかそういうところで働ければ良いなと思っています。

前島先生には、お体を大事にしてほしい

――前島先生に言いたいことはありますか?

齋藤さん かなりお忙しそうなので、お体を大切にして、頑張っていただきたいです。

菅野さん 斎藤くんと同じですが、休みをとって、体を大事にしてほしいです。

何さん 二人と同じで、ちゃんと休憩をとって、体を大事にしてほしいです(笑)。

――前島先生、コメントを。

前島さん ボクは全部教えるのが好きじゃないので、いつもヒントしか出さないんですけど、それでもみんな頑張ってくれています。引き続き頑張ってください。舗装の知識は、どこの道路会社に行っても役に立つと思うので。彼ら学生一人ひとりの活躍が後輩たちの活躍にもつながると思っています。私も頑張って休みます(笑)。

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