初めて現場代理人になった日
いつもは発注者支援業務のことを投稿していますが、今日は大手建設会社に勤めていた頃の話をしたいと思います。
現場経験が少ない私が、初めて現場代理人になった時の話です。気休め程度に読んでいただけますと幸いです。
工事部の部長から突然の電話
当時勤めていた建設会社に入社をして半年くらい経った頃、工事部の部長から一本の電話が掛かってきました。
「10日後に下請け工事の契約が決まったので、今の仕事の引継ぎを早くして元請けへの挨拶と、施工内容・方法の打合せをしてくれ。施工期間については1か月ぐらいを予定していて、主には施工管理で、再下請けの契約で2次下請けとは施工の話はしているが、人工、材料、機械などは話してないので打合せをして、段取りして現場を進めてくれ。初の現場代理人楽しんでね。よろしく。」
突然任されることになった現場代理人。しかも、この現場が難工事となることは、その時は知る由もありませんでした。
右も左も分からない状態で予習開始
日中は当時担当していた別の仕事があったため、現場代理人の予習をするのは決まって20時以降でした。
現場代理人になる現場の施工計画、作業計画、作業手順書の作成と情報収集、Googleマップで現地の確認などを行いました。
過去の資料を見れば何をどうすればいいか、必要な機材・材料など大まかなことは分かるのですが、私が現場代理人になる現場は過去の資料がなく、施工事例も少ないためイメージができず、時間だけがただただ過ぎていくだけでした。
その頃は、勤務時間が毎日0時を超えていました。
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1人で現場を回せるのかという不安
私が現場代理人を担当することになったのは、当時、会社が売り出そうとしていた橋梁の補修工法の現場でした。
施工実績が数件しかなく、会社でも経験者が数人しかいない状況で、現場経験者の方々はクセが強い人ばかりで相談しようにも怖くてできませんでした。
そのため、会社の各設計部や開発部に連絡をとり、施工のパンフレットや過去の施工の資料を一式送ってもらい、それをベースに施工のイメージや管理方法を考え、自分が分かりやすいように施工計画、作業計画、作業手順書の資料を作成しました。
元請けへの挨拶前日、例の部長から電話があり、「明日の挨拶は私が行けなくなったので1人で行ってくれ。くれぐれも失礼のないように」と、有無を言わさぬ速さで電話を切られました。
あまりのスピードに動揺しながらも、急いでインターネットで取引先への挨拶の仕方やマナーなどを下調べし、カンペを用意して当日に備えました。
当時の私の心境としては、ワクワク感というのは一切なく、1人で現場を回せるのだろうかという不安しかありませんでした。
いよいよ、元請けへの挨拶当日
「その日が来なければいいのに…」と何十回も思っていた挨拶当日。
不安しかないまま、現場事務所にいる取引先のもとへ挨拶に行くと、30代の監理技術者(副所長)と、50代の現場代理人(所長)が待っており、すでに施工図面と契約書関係の書類などが用意されていました。
挨拶もほどほどに、本題の施工内容と施工方法について打合せをしました。足場と橋梁の補修箇所の調査は元請けが段取りしてくれていたので、施工方法についての打合わせと、契約書関係の打合わせがメインでした。
契約書関係はやったこともなかったのでチンプンカンプンで、金額的な話が出た時は、先方が言い値でということだったので、その辺もどうにかこうにか乗り切ることができました。
そして、現地で施工箇所の確認と施工制限の確認を行いました。
2次下請けには、事前にこの日に現地で打合せをするという段取りを組んでいたので、2次下請けに現場を見てもらい、施工機械の選定をゆだねました。
現地では、PC橋梁のT桁の間での作業が多くなるので、桁の間がどのくらいあり、どの機械でコアを抜けるかなどの検討を行って、施工当日に備えました。
図面と現地の補修箇所が合わない
施工当日、元請けが出していたシースがあると思われる箇所に予備削孔をしてみると、当たるのは鉄筋だけで、シースに当たらないことが判明。
それがほぼ全てに該当しており、予備削孔はほとんどシースに当たることはありませんでした。
2次下請けとの相談で、翌日新たにシースの位置を出し直し、再度予備削孔することになりました。そのことを元請けに相談に行き、再度こちらで鋼材探査をすることを申し伝え、了承を得ました。
予備削孔でシースに当たらないのが分かったのが15時、そこから精密な鋼材探査をするための機械を会社に取りに帰り、現場に着いたのが17時。そこから鋼材探査で、黙々と削孔位置を出していきました。
その日すべての位置を出し終えたのが0時過ぎで、あとはシースに当たることを祈りつつ、翌日の削孔作業に備えました。
再削孔の当日
当日、私は緊張していました。2回目もシースに当たらなかったどうしよう…と。
作業が始まり、予備削孔でシースに当たったことを確認するとホッと一安心。緊張と疲れもあってか、その後の記憶があまりありません(笑)。
そこからコアマシンで削孔となるのですが、出し直した位置の全てにシースがいたので、順調に作業が進んでいきました。
グラウト充填が不十分な箇所が見つかる
削孔後に鋼材を確認したところ、グラウト充填が不十分なところが何箇所もあり、鋼材に錆が発生しているところもありました。
早急に防錆処理をして、これ以上の腐食が進まないような対応をしたうえで、グラウトを注入して作業が完了。
その後、書類や変更の契約書等を作成して元請けへ提出し、私の初めての現場代理人の業務は終了しました。そして、元請けの完了検査も何事もなく終えることができました。
何度も緊張で逃げたいと思った
初めての現場代理人だったので、緊張で逃げたいと何度も思いましたが、今となってはいい思い出です。
現場で働いていると、いずれは監理技術者、現場代理人になると思います。20代でそういった役職に就けるのは稀だと同期にも言われましたが、それが当たり前になると何も感じなくなってしまうと思います。
反省すべき点(今回の現場での反省点は自分で鋼材探査をせず、元請けの言いなりでやってしまったこと)はしっかりと反省をして、今後の業務に活かしたいと思っています。