CO2排出量を2030年までに19年比で50%削減目指す
三菱地所レジデンス株式会社はこのほど、CO2排出量を2030年までに2019年比で50%削減する「CO2排出量削減戦略」を発表した。三菱地所グループでは、2030年度までにスコープ1,2の合計を70%以上、スコープ3を50%以上、2019年度の総排出量に対して削減する目標を掲げているが、今回の戦略発表により、脱炭素社会の実現を加速する具体的な施策を示した。
戦略の内容は、①建設工事とお客様入居後のCO2排出量を見える化、②マンションの全電力を非化石化(非化石証明書付き電力によるカーボンオフセット)、③マンションのZEH-M Oriented化(2025年以降の販売開始・賃貸募集は全物件)、④引き続き太陽光発電パネルをマンションに搭載、⑤物件特性に応じたEV対応と、主に5点に集約されている。
三菱地所レジデンスのCO2排出量削減戦略の全体方針
とくに、建設工事では杭工事に高炉セメントB種を段階的に採用し、物件によっては杭工事のコンクリートCO2排出量を3割程度削減する方針を示し、すでに「厚木市中町1丁目計画」や「東京・中央区日本橋久松町計画」、「ザ・パークハビオ 文京江戸川橋」など、6物件に導入を決定している。
さらに、発表当日に「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」第1工区もプレスに内覧、ザ・パークハウスで初の「ZEH-M Ready」基準に適合、新エネルギーシステム「ソレイユ」を構築するなど、今後の環境負荷軽減マンションの住まい方も示した。
発表会では三菱地所レジデンスの宮島正治代表取締役 社長執行役員と、唐澤眞二取締役 専務執行役員の両者がプレスの質疑応答に応えた。
“環境配慮”がマンション建築のトレンドになる
――環境に配慮するマンションであれば高コストとなりますが、お客様はそれを受け入れるお考えでしょうか。
宮島社長 CO2排出量削減をはじめとする環境配慮型マンションについては、このコロナ禍でもお客様の要求が次第に上がっており、さらに評価も高まっていくでしょう。コストと環境の問題だけではなく、政府は環境に対して厚い税制優遇を行う政策も展開していますので、ご購入時にお客様がご負担される費用はお住まいになってから回収することができ、このバランスをうまく説明できれば、ご理解いただけると思います。CO2排出量を削減する物件は今後のトレンドになっていきます。
CO2排出量削減戦略を発表する宮島正治代表取締役 社長執行役員
唐澤専務 「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」は充実した設備としております。「ZEH-M Ready」を取得したことで公的な補助金もいただいておりますので、お客様にご理解いただける価格帯でご提示できました。
今後の当社マンションは「ZEH-M Oriented」を目指していきます。通常の中高層マンションでは、太陽光パネルを置くスペースが少なくなってしまうため、マリンヴィラの様に太陽光パネルをすべてに設けることはできませんが、ZEHとしての基本性能を満たした上で掛かり増すコストを圧縮した上で提供したいと考えています。
ゼネコンの意識が大きく変わることを期待する唐澤眞二取締役 専務執行役員
――三菱地所グループは木材利用を進めていますが、新たな展開は。
唐澤専務 三菱地所グループでは木材利用は脱炭素に有効であると考えており、MEC Industry株式会社という木材の生産から加工まで一気通貫で行う会社も設立しています。
社長や役員とも意見交換をしており、とくにマンションでも使える商材の開発に期待しています。マンションの企画担当もマンションの内装で「木(もく)」が使え、増やしていくことを検討しており、分譲マンションで木材型枠を使用できる新たな商材に期待しておりますので、両社で情報のやりとりをしている段階です。
環境配慮工事でゼネコンに強いメッセージ
――環境配慮では、これからゼネコンに強いメッセージを発していく必要もありますが。
宮島社長 当社とパートナーを築いているゼネコンも独自にSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指しています。そこで両社がお互いに環境配慮に共感することが大切で、一つひとつのプロジェクトで具体的になにができるのかを一緒になって考え、良い工法や技術であれば採用していきたいと考えています。
三菱地所グループは2030年度までに、オフィスや住宅等の建設時に使用する型枠コンクリートパネルを持続可能性に配慮した調達コードにある木材と同等の木材を100%使用することを目指しています。三菱地所レジデンスとしても同様に、新築分譲マンションで持続可能性に配慮した木材の調達基準にある型枠コンクリートパネルを採用し、目標の達成を目指します。
当社は、型枠コンクリートパネルのトレーサビリティの確保、つまりその木材がどこでどうやって作られたのかを追跡することを行っていきますが、それらに賛同し、協力してくれるゼネコンと連携しながら、一つひとつ施工していくことになるかと思います。
ゼネコンとはしっかりと連携し、良い商品をお客様に提供していきたい。それが三菱地所レジデンスのブランドにつながっていくと思います。
――今回は新築についてリリースされましたが、既存物件、つまりリフォームへの環境配慮への適用についてはどうお考えでしょうか。
唐澤専務 今、三菱地所レジデンスではリノベーションのマンションを数多く手掛けており、その手法として断熱改修がありますが、今後はこれに積極的に取り組んでいきたいと考えております。
――三菱地所と三菱地所レジデンスは環境問題の目標についてどのように連携していきますか。
宮島社長 三菱地所の環境に関する目標をとらえ、自社の目標を立ててまいります。今回は、「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」の内覧と合わせて、CO2排出量削減戦略方針を個別に発表しておりますが、当社が住宅でできることを数字として発表しつつも、基本的にはゴールや目標については両社で共有しております。
環境配慮でゼネコンとの連携強化へ
――グループとして環境対応を要請していると思いますが、施工の際には仕様に入れるのか、それともオプションで入れるのでしょうか。
唐澤専務 ゼネコンとの関係では、型枠コンクリートパネルのトレーサビリティについて、将来的には仕様書の中に入れていきたいと考えています。
型枠コンクリートパネルで持続可能な木材利用を継続できるよう取り組む
また、マンション現場で使用する電力などに関しても再エネ化も進め、ゼネコンとの連携を図りながら目標を達成していきたいと考えます。
ゼネコンの多くは環境規格「ISO14001」を取得されており、環境に関しての意識は持たれていると考えており、大きく期待しています。
環境配慮というのはゼネコンにとっても、必要不可欠な要素になって行くのではないでしょうか。脱炭素に向けた政府の方針では高い目標がたてられ、CO2排出量削減はまったなしの状況です。更に、SDGsや環境課題への関心も高まっていますので、そこには大いに期待しています。
環境配慮が受注の条件になる時代に
宮島社長 ゼネコン各社と意見交換をしていく中で、我々の取り組みを説明していますが、将来的に当社の発注条件に環境配慮が入ってくる可能性があることを理解していただきたいところです。
当社とお付き合いしていく上で、ゼネコン各社に環境配慮に向けて一緒に意識を変革していただくことも、今回のSDGsの取り組みの一つです。
これはお客様から教えられたことでもあります。「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」では、環境配慮が選ばれる理由の項目の一つになればいいと考えていたところでしたが、とくに若いお客様から「このマンションは環境配慮してとてもクールである」というお話もいただいており、大変評価されました。
そこで今回のCO2排出量削減を戦略的に打ち出し、お客様の要望、ゼネコン各社などサプライチェーンでの考え方など、そういったものが世の中のトレンドに向かっていけばいいという想いも込めて、今回の発表となりました。