入社5年目のドボジョにとって、トンネル現場の魅力とは
前回、西松建設の不破原トンネル出張所所長の鬼頭夏樹さんの記事を出した。こちらの出張所には、女性の技術者が1名いるということで、自称「ドボジョ(土木女子)ハンター」の私としては、当然取材することにした。
ただ、なんとなくその場の流れで、女性社員と鬼頭所長の合同インタビューみたいな感じになってしまった。
当初の取材プランとは違ったが、取材を続けているうちに、現場のリアルを伝えるという意味では「これはこれでアリかな」と考え直した。ということで、西川菜々彩さんと鬼頭所長の漫談を交えつつ、お話を聞いてきた。
私にはノビシロしかないです
西川 菜々彩さん(西松建設株式会社 西日本支社四国支店 不破原トンネル出張所工事係)
――西松建設入社何年目ですか?
西川さん 5年目になります。
――なぜ西松建設に入社したのですか?
西川さん 私が通っていた学校の女性の先輩が西松建設で働いていたからです。
鬼頭さん キララだね?
西川さん そうです。寮で一緒だったんです。
――ご出身は?
西川さん 函館です。学校は函館高専で、土木を学んでいました。
鬼頭さん いまだになんの資格も持ってないけどな。
西川さん そうですね(苦笑)。私にはノビシロしかないです。
鬼頭さん そうやな。いまだにスタート地点やな。
西川さん はい、すみません。
菜々彩はそういうキャラじゃない
鬼頭さん
――こういう工事をやりたいとかはあったのですか?
西川さん トンネル希望でした。先輩もトンネルで、今は北海道のトンネルの現場にいます。
――全国転勤とかは大丈夫だったのですか?
西川さん そうですね。むしろ「全国各地に行ってみたい」と思っていました。
鬼頭さん 菜々彩は、そういうキャラじゃないです。
西川さん え、どういうことですか?
鬼頭さん 「地元に残りたい」とか、そういうキャラじゃないよね。
西川さん あ、そうですそうです(笑)。
トンネル貫通の瞬間は「チョー感動」
――最初の配属先はどちらでしたか?
西川さん 函館のトンネル現場でした。渡島(おしま)トンネルという延長約3.2kmの北海道新幹線のトンネルです。学校の先輩と同じ現場でした。
――最初の現場はどうでしたか?
西川さん 昼夜交代制の24時間施工の現場だったので、最初はそこにビックリしました。
鬼頭さん え、夜勤についてたの?
西川さん はい。
鬼頭さん 社員は通常、夜勤はつかないんです。いつでも駆けつけられるようにしているので。難しい地層があるとか、上に重要な構造物があるといった場合は、夜勤に社員をつけるんですけどね。
――最初の現場ではどのような業務を担当していたのですか?
西川さん 教わりながら、品質管理とか出来形管理、資材管理とかをやっていました。それは今の現場でも変わりません。2年ぐらいいました。
――次はどちらに?
西川さん 福島県の五郎窪トンネルの現場に入りました。担当業務はほぼ同じでしたが、ここは掘削ではなく、覆工でした。ここでは、貫通の瞬間に立ち会うことができました。チョー感動しました(笑)。
鬼頭さん 掘削の最先端ではなく、覆工という、コンクリートを巻く工事の担当でしたね。ツナギ着て、油だらけになって頑張っていました。
西川さん あれ、現場にいらっしゃいましたっけ?
鬼頭さん おい、覚えてないのか(笑)。私はそのとき本社にいて、いろいろな現場を回っていたんです。
西川さん はい、すみません。
まだまだチカラ不足だけど、いつかはトンネルを極めたい
――今の現場も同じような担当ですか?
西川さん 今は基本的に現場全般を見ている感じです。
鬼頭さん この現場には、菜々彩より若手が3〜4人いるので、その上に立って、「若手をコントロールしろ」と指示しています。
――コントロールできていますか?
西川さん いや〜、まだまだチカラ不足で(笑)。
鬼頭さん 毎日オコられてるやろ?
西川さん はい、すみません。
――5年目ということで、トンネルの現場には慣れましたか?
西川さん まだまだです。わからないことだらけです。
――この現場は働きやすいですか?
西川さん はい、働きやすいです。
鬼頭さん 俺の前で「働きにくい」とは言えんよな。
西川さん はい、口が裂けても言えないです(笑)。
――今後もトンネルを続けたいですか?
西川さん 会社からは「違う工種をやるべきだ」と言われていますが、私としては「トンネルを極めたい」と思っています。鬼頭所長のようになれるよう頑張りたいです(笑)。
休日はウィンドウショッピングや実家帰省でリフレッシュ
――高知は馴染みのない土地だと思いますが、そこは大丈夫ですか?
西川さん はい、大丈夫です。初めて高知に来たときは、函館から来たので、「思ったより遠いな」とは思いましたけど。休みの日は、高知市内まで出かけています。
――ひろめ市場で、昼間っから飲んだくれているとか?
鬼頭さん だったら、誘えよ。
西川さん いえいえ(笑)。普通にウィンドウショッピングとかしています。
――函館には帰っているのですか?
西川さん 長期の休みのときは帰っています。年4回ぐらいですかね。
「飲み会が多い」で反撃
――鬼頭所長に言いたいことはありますか?
鬼頭さん いまさらないよな?(笑)。飲み会が多いとかか?
西川さん ああ、確かに多いですね(笑)。
鬼頭さん 「飲み会が多い」とオコられているんですよ。
西川さん はい、すみません。
――そんなに飲んでいるんですか?
鬼頭さん そんなには飲んでないですよ。
西川さん いやいや、「週5」で飲んでます。
鬼頭さん それはないやろ(笑)。
入社5年目ともなると、会社からそれなりの目で見られる
――「若手をコントロールしろ」と指示しているとのことですが、西川さんに期待していることはなんですか?
鬼頭さん 現場をとりまとめる立場として、現場のすべてを把握してほしいです。菜々彩にとって、ここが3現場目で、次が4現場目になります。会社からは、それだけ現場を踏んだ社員として見られるので、次の現場はそれなりの立場で入ってもらわざるを得ません。
そのためには、この現場でトンネル技術者として、ほぼ完成された状態になってほしいと「強く」思っているところです。菜々彩には、彼女の上司である「監理技術者の仕事ぶりをよく見ろ」と言っています。
菜々彩に対しては、男女の違いなく接するように心がけています。けっこう強めに言ったり、名前を呼び捨てにするのも、そのために「あえて」やっていることです。
西川さん ご期待に応えられるように全力を尽くします。とりあえず「50%」を目標にやっていこうと思います。
鬼頭さん そこは「100%」って言えよ(笑)。
西川さん はい、すいません。
将来のことはまだ考えてないけど、現場を離れたくない
――西松建設の魅力はなんですか?
西川さん 「現場力」というキャッチフレーズがありますが、ホントに現場を任せてもらえるのが、魅力だと感じています。若いうちから任せてもらえるので、それがやりがいになっています。将来のことはあまり考えていませんが、「現場を離れたくない」とは思っています。
鬼頭さん 西松建設には、女性技術者のロールモデルになる存在がいないんですよね。現場をずっとやって、結婚出産して、また現場に戻ったという女性社員はまだいないんです。結婚出産したら、本社勤務になるケースが多いんです。そこは課題ですね。