【日建連】最新の週休2日の進捗具合は?
日本建設業連合会(日建連)はこのほど、『週休二日実現行動計画』に基づき、会員企業の現場を対象に2022年度上期の週休2日の取組み状況を発表した。報告書によると、1万2,205現場(土木5,808現場、建築6,397現場)のうち4週8閉所以上の達成率は45.2%となり、前年同期に比べて4週8閉所以上が約5ポイント向上した。建設DXの導入や施工管理者の交代制もスムーズに進んでおり、年々休日を確保できる環境が整いつつあるようだ。
「4週8閉所以上」は全体で約45.2%だった / 日建連
今回の週休二日実施率調査(2022年度上半期)の期間は、2022年4月~9月で、回答企業数は100社。調査対象は、請負金1億円以上または工期4か月以上の事業所(現場)などで、閉所状況の実績は「4週5閉所未満」から「4週8閉所以上」まで、休日取得状況の実績は「4週5休未満」から「4週8休以上」までの5つにそれぞれ分類している。
明確な格差が生まれ始めた土木と建築
作業所閉所状況を土木からみると、4週8閉所以上は57.2%(前年同期比7.8%増)、半期では2018年度の調査以降で5割を初めて超え、公共工事を発注する官公庁では4週8閉所の理解が従前より深まっているようだ。
土木では着実に4週8閉所が進展
だが一方で、建築については4週8閉所以上は34.3%(同1.7%増)と微増にとどまっている。さらに詳細を見ると4週7閉所が14.1%(同1.6%減)、4週6閉所が16.3%(同1.8%減)と、思った以上に閉所が進んでいない状況であることが分かった。
横ばいが続く建築 / 日建連
実際、日建連各社の4週8閉所以上の分布では土木が60~69%、建築が0~40%となり、土木と建築では明確な差がある(土木93社・建築86社)。
作業所閉所率の分布 / 日建連
閉所率が伸び悩む建築でも”4週8休”の確保が進む
作業所勤務社員の休日取得状況をみると、全体では4週8休以上は80.1%、4週7休が10.4%、4週6休が5.9%だった。また、土木では4週8休以上は 84.7%、建築では4週8休以上は75.8%だった。作業所勤務社員の休日取得状況の分布では、4週8休以上は土木が90~100%中心だが、一方で建築は広く分布している。
作業所勤務社員の休日取得状況(全体、土木、建築) / 日建連
作業所勤務社員の休日取得状況では、4週8休に関しては全体で80%に達し、4週8閉所を達成していない現場も交代で休日取得をしている状況がうかがえた。閉所率の低い建築でも4週8休が75.8%と高い数値となったことは注目点といえる。
だが一方で、会員企業からは、閉所については「発注者により意識の差があり、4週8閉所が困難な場合があり、特に災害関連工事や民間工事では、一部の発注者の理解を得られていない」、休日については「技術者は、本工事開始前の施工計画段階ではだいだい4週8休の体制を取れることが多いが、本工事が開始されると、日々の管理と整理、次工程の準備、設計変更対応、各種協議の資料作成に追われて、月に12日は自宅・宿舎などで資料作成などを行うことがある」とそれぞれ率直な意見や感想が寄せられている。
また、時間外労働対策、働き方改革では、「技術者・技能者不足が顕在化しており、予定した工期から遅延する工事が発生し、ますます週休2日の取得が困難な状況となっている」「週休2日の実施率は上がっているが残業が多くなっており、2024 年度からの時間外労働の上限規制適用に対して、現状の人数・現場管理費で順守していくことは非常に困難だと感じる」と危機感をあらわにした。
4週8休の休日取得率が増加するにつれ、時間外労働が増加するとの声も一部に聞かれるが、最低限4週8休が確保できていないと、時間外労働の上限規制をクリアすることは難しい。2024年の時間外労働の上限規制への適応に向けて、現場社員の4週8休はその前提であり、100%の実施が必須条件となる。
2024年度までに”4週8閉所”の達成目指す
日建連は2017年12月に「週休二日実現行動計画2017」を策定。基本方針としては、建設現場に従事するすべての者が確実に週2日の休日を確保するための方策を可能な限り具体的に示し、計画期間を2017~2021年度の5年間と定め、2019年度末までに4週6閉所以上、2021年度末までに4週8閉所の定着を目指す計画だった。
2022年度以降の活動としては、2024年度までに4週8閉所を達成し、「土日閉所」にかかわらず、「年間104 閉所」の実現を目指していく。また、週休2日のさらなる定着を図るため、4週8休の確実な取得に向けた取組みも推進していく。
人口オーナス時代では、人手不足は終わらない
建設業界では慢性的な人手不足が続いており、その確保が難しい時代となった。とくに顕著なのが施工管理者であり、中小企業は言うまでもなく、大手ゼネコンでも採用に苦戦しており、東京を中心とした首都圏は深刻さを増している。
そして、この採用情勢は好転する兆しはまったくない。これは日本の人口動態が生産年齢人口の比率が相対的に上昇する”人口ボーナス期”を過ぎて、少子高齢化が進む”人口オーナス期”に突入しているからだ。今後、日本は経済成長も望めないだけではなく、人手不足も悪化する二つの現象が並立する時代になる。そのため、建設業界全体での人手の確保は難しく、個社の努力が今後一定の成果を生む時代になる。
もちろん日建連のような団体としては、デベロッパーなどに工期の理解を求めるような働きかけを行うことも重要となるだろうが、採用については個社が従来のような「根性論」や「少数精鋭論」のような古い体質からいち早く脱し、「ゆとり」を生み出せるような会社へと転身していくことが必要だろう。