【国土交通省森下参事官×金杉建設吉川社長対談】インフラDXが実現すれば、地域建設会社はどう変容するのか?

【国土交通省森下参事官×金杉建設吉川社長対談】インフラDXが実現すれば、地域建設会社はどう変容するのか?

2人のキーパーソンによる「インフラDX対談」

国土交通省は現在、インフラDXなる施策を推進している。インフラDXとは、BIM/CIM、ICT施工などのデジタルツールによる建設業界の変革を指す(たぶん)。そのキーパーソンの1人が、先日記事にした大臣官房参事官(イノベーション担当)の森下博之さんだ。

このインフラDX実現のカギを握るのは、最も重要なプレイヤーである建設会社、とくに地域の中小の建設会社だろう。デジタルツールの導入に積極的な会社とそうでもない会社の両極化が進行している中、このデジタル格差をどう解消するかが、施策の成否に関わってくるからだ。

国土交通省は昨年、インフラDXに関するベストプラクティスを顕彰し、これを「横展開」させるため、インフラDX大賞を創設した。最高賞である国土交通大臣賞を受賞したのが金杉建設株式会社。同社トップは、これも以前取材した吉川祐介さんだ。インフラDXを実現する上で、地域建設会社サイドのトップランナーであり、キーパーソンの1人だと言える。

インフラDX「挑戦の年」に位置付けられるこの年に、2人のキーパーソンに対面していただき、インフラDXの来し方行く末などについて、語り合っていただくのは、有意義なんじゃないかなと考えた。ということで、インフラDX対談記事としてまとめてみた。

森下 博之さん 国土交通省大臣官房参事官(イノベーション担当)

吉川 祐介さん 金杉建設株式会社 代表取締役社長

金杉建設は常に先駆的な取り組みをしている会社

森下さん 金杉建設さんにおかれては、第1回目となる令和4年度のインフラDX大賞(工事・業務部門)の国土交通大臣賞を受賞されました。誠におめでとうございます。

吉川さん ありがとうございます。

森下さん すでにご存知のことですが、国土交通省では、平成29年度からi-Construction大賞を実施してきましたが、建設現場の生産性向上だけではなく、インフラの利用、サービスの向上といった建設業以外の取り組みについても受賞対象を拡大するカタチで、令和4年度からインフラDX大賞をスタートさせたところです。

金杉建設さんは、第1回目のi-Construction大賞でも優秀賞を受賞されています。国土交通省が新たな施策を打ち出すたびに、常に先駆的な取り組みをなされている会社であることを再認識している次第です。ひとえに、吉川社長の先見の明によるものなのだろうと感服しています。

インフラDX大賞は、データとデジタルを活用してインフラ、公共サービスを変革していくインフラDXの推進に向けた優れた取り組みを表彰するもので、ベストプラクティスの普及展開を目的としています。

金杉建設のベストプラクティスは国交省の取り組みとピッタリ合致

森下さん 今回、国土交通大臣賞を受賞した金杉建設さんのベストプラクティスは、埼玉県発注の、現存県道の迂回路の設置工事であり、沿道の環境負荷が大きく、難易度の高い工事に対して、ICTを有効に活用された先進的な事例として、評価されたものだと承知しています。

小規模土工と排水構造物を丁張りレス化することで、民地の出入り口の環境負荷の低減を実現されるとともに、新設構造物だけでなく、埋設物も3Dモデリングすることで、混み合った施工箇所における施工上の問題点をあらかじめ抽出し、関係者との円滑な協議、合意形成も実現されました。

それに加えて、県や市町村の職員の皆さんに対しても、現場見学会などを通じて、先進的な取り組みについてご紹介されました。ICT施工や3Dモデルの活用などについて、これを広めることにも積極的に取り組んでおられます。

国土交通省では現在、ICT施工のすそ野を広げることが大事だという認識のもと、規模の大きな直轄工事だけでなく、地方公共団体などが発注する小規模な工事についてもICT施工を普及するための活動を展開しているところです。

われわれとしては、金杉建設さんのベストプラクティスは、今まさに国土交通省が取り組んでいる内容とピッタリ合致するものだと考えています。金杉建設さんは、これまでも先導的な役割を果たしてこられましたが、今後も引き続き業界をリードしていかれることを期待しています。

第一回【インフラDX大賞】国土交通大臣賞受賞(金杉建設HPより)

5年間突っ走ってきたことを評価していただいた

吉川さん お褒めの言葉をいただき、誠にありがとうございます。弊社は、さきほどお話しいただいた通り、第1回のi-Construction大賞の優秀賞をいただきました。その5年後には、第1回のインフラDX大賞の国土交通大臣賞をいただきました。

今では、i-Construction大賞を受賞すると加点などのインセンティブを設けている整備局もありますが、当時はそういうものがありませんでした。弊社としては、インセンティブがないことをネガティブに捉えるのではなく、「大変名誉な賞をいただいた」と前向きに捉えていました。弊社がこの賞をいただいたのは、弊社単独でICT施工に取り組んでいるだけでなく、他社などにも積極的に情報発信していることも含めて、評価されたからだと捉えていました。そういう思いで5年間突っ走ってきた感じです。

今回、再びインフラDX大賞をいただいたことは、弊社のそういう取り組みをご評価いただいたのかなということで、一層嬉しい思いがします。

森下さん i-Construction大賞を受賞してもインセンティブがないことに対して、社内的に「ちょっとサビしい」という雰囲気はあったのですか?

吉川さん それはなかったです。本省にお呼びいただき、国土交通大臣から賞状を手渡していただくという機会はなかなかありません(笑)。賞状や表彰式の写真などは、会社で大事に飾っています。弊社としては、「インセンティブよりももっと大事なものをいただいた」と受け止めています。

森下さん そう言っていただけると、ありがたいです。

吉川さん 弊社の社員は新しもの好きが多いんです。PRISM(官民研究開発投資拡大プログラム)には、第1回目から参加していますし、2回目以降はメインメンバーとして参加させていただいています。おかげさまで毎年1件必ず採択していただいています。

森下さん 改革マインドが旺盛なんですね。素晴らしいと思います。

金杉建設などが開発中の自動草刈機

吉川さん PRISMのプロジェクトとして、弊社がメインとなって自律型草刈機の研究開発を行っています。現在は、2台の草刈機を1人の監視員で管理するというところを中心に実験を行っているところです。今後はソフトウェアをつめていって、維持工事の生産性の向上につなげていきたいと思っています。

森下さん 素晴らしいと思います。われわれとしても、ゆくゆくは建設現場をそういうものにしたいと思っています。遠隔操作の草刈機がありますが、安全性は確保されるものの、人数的には普通の草刈機と同じなので、生産性の向上という点では、もっとさきの自動化、自律化というところまで進めたいと思っています。

吉川さん 良い塩梅の機械を良い塩梅の現場で使うという視点が大事だと思っています。ICTだの3Dだの言っても、しょせん道具なので、やはり適材適所で使うのが最善だと考えています。

「重機や機器は自前」という会社の風土が「内製化」の礎に

吉川さん 弊社は1950年に私の祖父が創業したのですが、祖父はとある県の県庁に勤めていました。詳しい経緯はわかりませんが、当時の建設省と一緒に仕事をしていたそうです。それまで直営で行っていた工事を民間に請け負わせる制度が始まるということで、建設省の職員の方から促されるカタチで、祖父は役人を辞め、弊社を起業したそうです。なので、最初の仕事は建設省でした。

森下さん そうだったんですね。

吉川さん 昔は苦労したようですが、いろいろな経験を経た結果、「重機は自前で持つ」という会社の体質ができあがりました。私が弊社に入社したのは20数年前ですが、そのころにはすでにそういう体質でやっていました。当時の建設業界には「重機はレンタルにしたほうが利益率が高い」という雰囲気がありましたが、お構いなしに、自前で重機を揃えていました。パソコンなんかも最新のものを導入していたんです。

そういう会社の風土があったので、ICT重機も自前で持つ、デジタル測量機器も自前で持つことになったわけです。「3回使ってもとがとれるなら、買ってしまったほうが良い」という考え方でやっています(笑)。

森下さん わかりやすいですね(笑)。

吉川さん 機械や機器は、新しいものが出ると、どんどん入れ替えていっています。レンタルだと、オペレータもレンタルすることになりますが、自社保有であれば、自社のオペレーターを育てることができます。機械と人の内製化ができるようになるわけです。

たとえば、3Dレーザースキャナーで言いますと、自社保有していない場合は、レーザースキャナーを使わなければならない状況になってから、レンタルして使うことになると思います。自社保有していると、これは実際にあったことですが、発注者から急に「護岸の動体観測をしてほしい」とリクエストされても、レーザースキャナーの差分で計測することができます。こういうのは、自社保有しているからこそ、できる使い方だと思っているんです。内製化することで、重機や機器などの使い方の幅が広がると考えています。

機械職の人間にとって、建設現場の生産性向上はDNAのようなもの

森下さん 私は機械職として入省したのですが、機械グループのご先祖様は、国が直営で工事をしていたころの機械エンジニアの方々です。機械グループの方々は、当時から「建設現場の生産性を上げる」という思いをお持ちで、「人力施工から機械施工へ」ということでお仕事をしておられました。生産性を上げるという使命感は、今でも脈々と受け継がれています。機械職の人間にとって、生産性の向上を追求することは、DNAのようなものです。

平成に入って間もないころ、日本の民間企業の間で情報化施工が盛り上がったことがありました。そのときは残念ながら、海外にさきを越されてしまいました。その後、捲土重来ということで、情報化施工推進戦略が策定されました。この戦略づくりには、私も課長補佐として携わりました。

そのときのわれわれの認識は、建設現場の生産性の向上は、機械化によって終わったわけではないというものでした。さらに生産性を向上させることができる。そのキーになるのがICTだ。建機などにICTを組み合わせることで、それを実現していこう。そういう考えのもと、民間の建設会社が持っている建機をICT化させるための施策を講じることになったわけです。

最初のころは啓発活動が中心でしたが、i-Construction大賞が始まったころからはICT施工に必要な費用も国が負担することにしました。これ以降、ICT施工が一気に普及するようになったわけです。

ICT施工で止まってはいけない。自動化や自律化で更なる生産性向上を

森下さん 私は今のICT施工のままで止まってはいけないと思っています。自動化や自律化を進めることで、生産性はもっと上げられると考えているからです。たとえば、一つひとつの機械をそれぞれ人が操作するのではなく、複数の自律的に動く機械を一人の人間が監督する、しかもそれを遠隔でやるというイメージです。建設現場をそういう世界に持っていきたいと考えています。

金杉建設さんにとって、内製化が一つのDNAとなっており、これを受け継ぐことによって、先駆的な取り組みを実現できたということが、よくわかりました。素晴らしいマインドだと思います。建機などのレンタルはそれはそれで日本の建設業界の強みになっていると思っていますが、イノベーションを起こすには、建機などを自社保有し、常日頃から機械を使える環境があってこそというのは、説得力のあるお話だと感じました。

吉川さん 弊社でも重機をレンタルすることがあるのですが、自社で改造して、マシンコントロールを後付しています。その際には、リース会社に対して「後付けのマシンコントロールを溶接するけど、そのまま返却しても良いか」とちゃんと相談してから行っています。協力会社さんが自前のバックホウを使う場合も、弊社のほうで後付けのマシンガイダンスを装着するようにしています。

森下さん 協力会社さんの反応はどうですか?

吉川さん 基本的には歓迎していただいています。たとえば側溝の据付けで言えば、以前は弊社の社員が座標などを管理しながら作業を行なっていましたが、最近は、協力会社さんが主体となって座標などを管理し、弊社社員は最終チェックするだけといったカタチに移行しています。弊社だけでなく、協力会社さんも一緒にレベルアップすることは、大事なことだと考えています。

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機械だけでなく、データづくりの内製化もカギになる

森下さん 側溝据付けのお話がありましたが、小規模工事へのICT施工導入の成功の秘訣はなんだとお考えですか?

吉川さん 実は、小規模土工ではありましたが、小規模工事ではなかったんです。側溝の掘削、据付け自体は小規模工事なのですが、それを含む工事全体としてはそれなりのロットがあったということです。数百m程度の側溝工事単体の発注であれば、受注者がそのためにマシンコントロール付きのバックホウをレンタルするということはあまり考えにくいです。

ただ、今回の場合は、弊社がマシンコントロール付きの小型バックホウを自社所有していたので、ICT施工でやったわけです。たまたまアールのかかった少々面倒な側溝据付けだったので、丁張りをかけたくないということもありました。

森下さん やっぱり、常にICT建機を使える環境があるのが大きいんですね。必要なときだけ機械を調達するとなると、やはり、その現場だけではペイできない、普通にやってしまおうというマインドになってしまうのですね。

吉川さん 弊社の場合は、3D設計データも自社で組めるのもあると思っています。データづくりを外注に出すと、何十万円もかかってしまいますが、自前なら、1〜2日でデータを組んで、重機にデータを放り込むだけで済みますので。

森下さん データづくりの内製化も大きいということですね。

小規模な建設会社こそ、内製化の重要さに気づいてほしい

吉川さん これはよくお話しすることですが、堤防の法面が仕上がった状態で、最後に芝を貼るとします。外注していた場合は、どうしてもドローンで一発でデータをとりたい、そこから芝を貼るという流れになってしまいがちです。

弊社の場合は、昔のように現場を4〜5等分して、じっくりレーザースキャナーで計測します。その上でOKが出たところから、芝を貼っていきます。昔できていたことが、ICTによってできなくなったこともありますが、自社持ちしていれば、ICT施工であっても、昔ながらの良い段取りで作業できるんです。この辺に難しさを感じている建設会社さんは少なくないですが。

森下さん ハッとするような気付きをいただきました。小規模工事は内製化ができていない施工者さんが受注するケースが多いので、余計にICT施工が導入されづらい面があるということですね。

吉川さん 私の知っている建設会社の中には、小規模な会社であっても、社長さんがICT施工に熱心で、ICTで小規模工事をやっている会社もあります。なので、会社の規模が小さいからICT施工はできないというのは、言いわけなんじゃないかという気がしています。小さな会社になればなるほど、ICT施工に関する投資マインドが低い傾向があると感じています。

森下さん ICT施工のトップランナーの建設会社さんの中には、必ずしも大きな会社ではない会社もありますが、これらの会社さんに共通するのは、内製化されているということであり、ご商売的にもうまくいっているということです。小規模な建設会社さんこそ、このことに早く気づいてほしい。われわれとしても啓発活動をしっかりやっていく必要がある。お話を伺って、そのことを再認識しました。

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BIM/CIMを活用すれば、現場でのトラブルを事前に発見できる

森下さん 直轄工事については今年度からBIM/CIMが原則適用になりました。基本的には、詳細設計の段階で3Dモデルを作成し、3Dモデルがある工事についてはまずそれを使うということにしています。レベル的にはそれほど高くはないのですが、まずは3Dモデルに慣れていただくことを一つの軸にしています。すそ野を広げる話ですね。

それを横軸とすれば、縦軸には、ダムなどの大規模な現場では、BIM/CIMをフルに活用していただくことを置いています。こちらはBIM/CIMをどんどん使いこなす話です。金杉建設さんは当然、どんどん使いこなす縦軸のほうだと思いますが、両軸におけるいろいろな取り組みを期待しています。

吉川さん BIM/CIM、つまり3Dモデリングに関しては、現場でのトラブルを事前に発見できるという点で、非常に有用であると考えています。弊社では、工事を受注したら、1週間後には一定の3Dモデルを組んでしまいます。そのデータを元に、どこに問題があるか多くの社員でチェックを行ってから現場に入るようにしています。オペレーターが3Dを組んでいるときに問題を発見するということもあります。

最初から3Dデータで図面をもらってしまうと、全体としては便利になると思いますが、問題があっても発見できないかもしれないので、そこはちょっと心配です。また、設計変更が入った場合、3Dデータの取り扱いに慣れていない会社さんだと、対応が難しいと思われます。あとは、2Dと3Dの設計図の間に差異があった場合、どこが責任をとるのかという問題が生じます。この辺のルールは明確にしてほしいところです。2Dと3Dに差異があることに自社では気づかない会社さんだと、3Dのまま施工してしまうことも考えられますので。

森下さん 差異があると、2つ成果物があることになってしまいますからね。

吉川さん 埋設物や他発注の工事も含め、すべての情報を一つのCIMデータに入れてしまうのが、理想形なのかなと思っています。言ってしまえば、ある市役所の下水道部が発注したボックスカルバートの中を水道部が発注した水道管が突き抜けるという事態が回避できるからです(笑)。建設現場ではそういう事態は日常茶飯事ですが、事前に気づくのか、その場で気づくのかは大きな違いです。とくに狭い現場は、トラブルが起きて現場が止まってしまうと大変なことになります。

森下さん 現場に入る前の設計の確認の際、BIM/CIMは非常に有効だというお話ですね。ぜひそうなってほしいです。

吉川さん 建築で言うところのBIM竣工ということです。弊社は建築をやっていないので、詳しいことはわかりませんが、VRゴーグルを装着して、確認するそうです。

森下さん バーチャルの世界で竣工検査を実施するということですね。VRの活用ということで言えば、九州地方整備局では昨年、VRを活用した地元説明会を行いました。最初は大丈夫かなと少し心配しましたが、スゴく評判が良かったです。バーチャルの世界はこれからもっともっと広がっていくでしょう。バーチャルな世界でコアになるのがBIM/CIMだと思っていますので、業界全体としてBIM/CIMをしっかり使える状況になる必要があると強く思っています。

建設会社さんの中には、BIM/CIMのソフトウェアを持っていないところもあります。そういう受注者のために、3DCADモデルを無償でオンライン操作できる環境をつくばにあるデータセンター内に構築しています。 BIM/CIM未経験の建設会社さんには、どんどん活用していただきたいと思っています。

「とりあえず一回試してみよう」という意識を持ってもらうことが重要

森下さん ICT施工やBIM/CIMといったツールを積極的に活用している、金杉建設さんをはじめ、いろいろな建設会社さんからは、若手社員でもベテラン社員と遜色ない仕事ができるというお話をしばしば伺います。丁張りで言えば、もはやICTなしでは現場が回らないというお声もあります。その一方で、ICT施工などの導入に慎重な建設会社さんもいらっしゃいますが、「とりあえず一回試してみよう」という意識を持っていただくことが何より重要だと考えているところです。ぜひ一歩踏み出していただきたいと期待しています。

われわれとしては、i-Constructionがスタートして以降の約8年間、人材育成の機会を提供したり、民間と連携して講習会を開催したり、いろいろな取り組みを行ってきました。ICTアドバイザー制度も設けており、金杉建設さんもその一員として、ICT施工の普及拡大にご尽力いただいてきたところです。こういったものも積極的に活用しながら、ICT施工を取り入れていっていただくことを願っています。

バックホウはマシンガイダンス付きを標準装備にするべき

吉川さん 関東地方整備局のとある職員の方から、「技術者がICT施工をやりたいと思っても、社長がウンと言うかわからないので困っている」という話を聞きました。ついては、私に「経営者向けにICTセミナーをやってくれないか」とも言われました。それで、時期を見て経営者向けのICTセミナーの講師をやることになっています。

ICT施工は、まず経営者がヤル気にならないと、お金がかかることなので、前に進みません。なので、経営者をヤル気にさせるため、セミナーではしっかりアピールしようと思っているところです(笑)。

これは前から思っていることですが、バックホウはマシンガイダンス付きを標準装備にすべきだと思っています。そうなれば、マシンガイダンスの数も増えるので、機械の値段もだいぶ安価になるからです。従来のバックホウとICTバックホウで値段があまり変わらないのであれば、「ICTバックホウを買ってみるか」という経営者も増えるはずです。そういう流れができれば、いずれ「ウチはICT建機しかつくりません」というメーカーも出てくる。ICTしかなければ、どんなにネガティブなマインドの経営者であっても、ICT建機を買わざるを得なくなる。そう思っているんです。

ブルドーザーなど操作が難しい建機に関しては、「マシンコントロール付きでないと操作できない」という声が出ています。なぜかバックホウだけは「在来型が良い」という人が多いんですけど(笑)。

森下さん 「ICTなしでは仕事が回らない」という世の中になりつつあります。ICTが便利だからそう感じるようになっているわけです。おっしゃったように、ICTが主流になってくれば、一気に前に進むでしょうね。情報化施工のころは、ICT建機との価格差が今よりも激しかったので、私としても一番頭の痛いところでしたが、その後建機メーカーさんも頑張られて、年々その差は縮まってきています。ICT建機が標準になる未来は、そう遠くないかもしれませんね。

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