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【国土交通省森下参事官×金杉建設吉川社長対談】インフラDXが実現すれば、地域建設会社はどう変容するのか?

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公開日:2023.08.03
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小規模な建設会社こそ、内製化の重要さに気づいてほしい

吉川さん これはよくお話しすることですが、堤防の法面が仕上がった状態で、最後に芝を貼るとします。外注していた場合は、どうしてもドローンで一発でデータをとりたい、そこから芝を貼るという流れになってしまいがちです。

弊社の場合は、昔のように現場を4〜5等分して、じっくりレーザースキャナーで計測します。その上でOKが出たところから、芝を貼っていきます。昔できていたことが、ICTによってできなくなったこともありますが、自社持ちしていれば、ICT施工であっても、昔ながらの良い段取りで作業できるんです。この辺に難しさを感じている建設会社さんは少なくないですが。

森下さん ハッとするような気付きをいただきました。小規模工事は内製化ができていない施工者さんが受注するケースが多いので、余計にICT施工が導入されづらい面があるということですね。

吉川さん 私の知っている建設会社の中には、小規模な会社であっても、社長さんがICT施工に熱心で、ICTで小規模工事をやっている会社もあります。なので、会社の規模が小さいからICT施工はできないというのは、言いわけなんじゃないかという気がしています。小さな会社になればなるほど、ICT施工に関する投資マインドが低い傾向があると感じています。

森下さん ICT施工のトップランナーの建設会社さんの中には、必ずしも大きな会社ではない会社もありますが、これらの会社さんに共通するのは、内製化されているということであり、ご商売的にもうまくいっているということです。小規模な建設会社さんこそ、このことに早く気づいてほしい。われわれとしても啓発活動をしっかりやっていく必要がある。お話を伺って、そのことを再認識しました。

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BIM/CIMを活用すれば、現場でのトラブルを事前に発見できる

森下さん 直轄工事については今年度からBIM/CIMが原則適用になりました。基本的には、詳細設計の段階で3Dモデルを作成し、3Dモデルがある工事についてはまずそれを使うということにしています。レベル的にはそれほど高くはないのですが、まずは3Dモデルに慣れていただくことを一つの軸にしています。すそ野を広げる話ですね。

それを横軸とすれば、縦軸には、ダムなどの大規模な現場では、BIM/CIMをフルに活用していただくことを置いています。こちらはBIM/CIMをどんどん使いこなす話です。金杉建設さんは当然、どんどん使いこなす縦軸のほうだと思いますが、両軸におけるいろいろな取り組みを期待しています。

吉川さん BIM/CIM、つまり3Dモデリングに関しては、現場でのトラブルを事前に発見できるという点で、非常に有用であると考えています。弊社では、工事を受注したら、1週間後には一定の3Dモデルを組んでしまいます。そのデータを元に、どこに問題があるか多くの社員でチェックを行ってから現場に入るようにしています。オペレーターが3Dを組んでいるときに問題を発見するということもあります。

最初から3Dデータで図面をもらってしまうと、全体としては便利になると思いますが、問題があっても発見できないかもしれないので、そこはちょっと心配です。また、設計変更が入った場合、3Dデータの取り扱いに慣れていない会社さんだと、対応が難しいと思われます。あとは、2Dと3Dの設計図の間に差異があった場合、どこが責任をとるのかという問題が生じます。この辺のルールは明確にしてほしいところです。2Dと3Dに差異があることに自社では気づかない会社さんだと、3Dのまま施工してしまうことも考えられますので。

森下さん 差異があると、2つ成果物があることになってしまいますからね。

吉川さん 埋設物や他発注の工事も含め、すべての情報を一つのCIMデータに入れてしまうのが、理想形なのかなと思っています。言ってしまえば、ある市役所の下水道部が発注したボックスカルバートの中を水道部が発注した水道管が突き抜けるという事態が回避できるからです(笑)。建設現場ではそういう事態は日常茶飯事ですが、事前に気づくのか、その場で気づくのかは大きな違いです。とくに狭い現場は、トラブルが起きて現場が止まってしまうと大変なことになります。

森下さん 現場に入る前の設計の確認の際、BIM/CIMは非常に有効だというお話ですね。ぜひそうなってほしいです。

吉川さん 建築で言うところのBIM竣工ということです。弊社は建築をやっていないので、詳しいことはわかりませんが、VRゴーグルを装着して、確認するそうです。

森下さん バーチャルの世界で竣工検査を実施するということですね。VRの活用ということで言えば、九州地方整備局では昨年、VRを活用した地元説明会を行いました。最初は大丈夫かなと少し心配しましたが、スゴく評判が良かったです。バーチャルの世界はこれからもっともっと広がっていくでしょう。バーチャルな世界でコアになるのがBIM/CIMだと思っていますので、業界全体としてBIM/CIMをしっかり使える状況になる必要があると強く思っています。

建設会社さんの中には、BIM/CIMのソフトウェアを持っていないところもあります。そういう受注者のために、3DCADモデルを無償でオンライン操作できる環境をつくばにあるデータセンター内に構築しています。 BIM/CIM未経験の建設会社さんには、どんどん活用していただきたいと思っています。

「とりあえず一回試してみよう」という意識を持ってもらうことが重要

左から森下さん、吉川さん

森下さん ICT施工やBIM/CIMといったツールを積極的に活用している、金杉建設さんをはじめ、いろいろな建設会社さんからは、若手社員でもベテラン社員と遜色ない仕事ができるというお話をしばしば伺います。丁張りで言えば、もはやICTなしでは現場が回らないというお声もあります。その一方で、ICT施工などの導入に慎重な建設会社さんもいらっしゃいますが、「とりあえず一回試してみよう」という意識を持っていただくことが何より重要だと考えているところです。ぜひ一歩踏み出していただきたいと期待しています。

われわれとしては、i-Constructionがスタートして以降の約8年間、人材育成の機会を提供したり、民間と連携して講習会を開催したり、いろいろな取り組みを行ってきました。ICTアドバイザー制度も設けており、金杉建設さんもその一員として、ICT施工の普及拡大にご尽力いただいてきたところです。こういったものも積極的に活用しながら、ICT施工を取り入れていっていただくことを願っています。

バックホウはマシンガイダンス付きを標準装備にするべき

吉川さん 関東地方整備局のとある職員の方から、「技術者がICT施工をやりたいと思っても、社長がウンと言うかわからないので困っている」という話を聞きました。ついては、私に「経営者向けにICTセミナーをやってくれないか」とも言われました。それで、時期を見て経営者向けのICTセミナーの講師をやることになっています。

ICT施工は、まず経営者がヤル気にならないと、お金がかかることなので、前に進みません。なので、経営者をヤル気にさせるため、セミナーではしっかりアピールしようと思っているところです(笑)。

これは前から思っていることですが、バックホウはマシンガイダンス付きを標準装備にすべきだと思っています。そうなれば、マシンガイダンスの数も増えるので、機械の値段もだいぶ安価になるからです。従来のバックホウとICTバックホウで値段があまり変わらないのであれば、「ICTバックホウを買ってみるか」という経営者も増えるはずです。そういう流れができれば、いずれ「ウチはICT建機しかつくりません」というメーカーも出てくる。ICTしかなければ、どんなにネガティブなマインドの経営者であっても、ICT建機を買わざるを得なくなる。そう思っているんです。

ブルドーザーなど操作が難しい建機に関しては、「マシンコントロール付きでないと操作できない」という声が出ています。なぜかバックホウだけは「在来型が良い」という人が多いんですけど(笑)。

森下さん 「ICTなしでは仕事が回らない」という世の中になりつつあります。ICTが便利だからそう感じるようになっているわけです。おっしゃったように、ICTが主流になってくれば、一気に前に進むでしょうね。情報化施工のころは、ICT建機との価格差が今よりも激しかったので、私としても一番頭の痛いところでしたが、その後建機メーカーさんも頑張られて、年々その差は縮まってきています。ICT建機が標準になる未来は、そう遠くないかもしれませんね。

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コメント(2)

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  • - 2023/08/03 13:06

    土木系はいいよね。。。

    返信する 通報する
    • 2023/08/04 12:03

      現状知ってると若い子が新しく入るなら土木の方がいいだろうなと思うんだけど
      (CIM等の省人化技術の推進、快測ナビ等スマホで仕事ができる)
      やっぱり建築の方が人気なんだよね

      通報する

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