もうちょっとなのに・・・
コロナの影響でここ数年は日本国内で仕事をしていたが、今年からやっと海外の仕事に復帰し、今はフィリピンで3つの現場の施工管理をしている。
この国での仕事は8年振りだが、「詰めが甘いのは相変わらずか」と感じている。途中までそこそこの出来で進んでいた施工が、仕上げに近づくにつれ徐々に荒くなり、最後は「な~んだよ、これは!」というレベルにまで落ちるからだ。
正確には、作業員が単独で進めている仕事自体はそこそこのレベルで進むのに、他の作業員や他の場所との接点部分になると急にガクンと品質が落ちてしまうのだ。仕上がりまでもうちょっとなのに実にもったいない・・・。
フィリピンの現場をいくつも見てきて、そうなってしまうのには”明確な原因”があることに気付いた。
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残念な仕上がりになる原因
作業員たちは、彼らの作業範囲の中である程度いいレベルまで仕上げてくれているにも関わらず、残念な仕上がりになってしまうのは「施工管理のせい」だ。
どういうことかというと、作業員が自分の仕事を終えた後、施工管理から適切な指示がない、図面にも記載がない、管理する側の作業工程の組み合わせ方が悪いなどの理由から、先に進めるべき工事が後回しにされ、その結果なんとも残念な仕上がりになってしまうのだ。
無責任な施工管理も中にはいるが、そうではなく、知識や経験がないために先に進めるべき作業や工程がわからず、判断ができない施工管理者が多いことが原因だ。
そんな施工管理者は、作業員の正しい評価ができるはずもない。まともにやっても評価されず、報酬に反映されることもなく終わる。それでは作業員が可哀そうだ。まともにやるのがアホらしくなるのもよくわかる。ちゃんとやっても、いい加減にやっても同じ報酬なら、どうでもいいやと思うのは当然のことだ。
そう考えれば、現地の作業員たちはよくやっている。やはり一番の原因は、現場を管理する施工管理の人間にある。
まともな施工管理者がいない
では、せめて図面にさえしっかりと反映していればいいのでは?と思うかもしれないが、それも違う。
私の経験上、現地の作業員たちはざっくりとしか図面は見ておらず、結局は自分たちがいつもやっている工法で作業を進めがちだ。よって、図面さえちゃんとできていればいい!という理屈も成り立たない。
だとすれば、やはり施工管理の人間がしっかりしていなければ、現場はうまく回らない。これは今いるフィリピンの現場だけでなく、日本国内の建設現場でも全く同じことが言えるだろう。
唯一違うとすれば、日本の建設現場の場合は、たとえ施工管理者からの指示や情報が不十分でも、何とか工事を進めるために職人同士が話し合い、縁の下の力持ちになって現場を支えてくれることだ。
それができるのは、高いスキルや知識、経験を持った職人がたくさんいるからだろう。先人たちの創り出した決め事や様々な知恵がしっかりと伝承されてきたからこそなせる技で、日本の建設業界の凄さだと思う。
だが、本来、職人はそれぞれの自分の持ち場の仕事に集中するのが当たり前で、施工管理者を手助けすることは彼らの仕事ではない。
施工管理者が自ら、工事の進捗をふまえ図面を確認し、工程を先読みして、資材を手配し、職人たちに指示を出す役目なのは言うまでもないが、残念ながらそんなまともな施工管理者はどんどんいなくなってきている。