先日インタビューを行った、オープンハウス・アーキテクトの「#越境採用」の取組みを通じて、人材を集め、登用していくには、相当な企業努力が必要であると改めて感じた。そして、その努力の果てには、優秀な人材を他社に先駆けて集めることが可能になる。
人手不足が叫ばれる建設業界だが、私が取材した範囲で言えば、人材の採用や育成に相当な労力をかけている企業には、しっかりと人材が集まっている。
今回は、「#越境採用」のような採用方法を通じて、まったくの業界未経験者を戦力とした事例もあることを紹介したい。
前職ではドラッグストアのエリア責任者だった木下壱斗さんは、オープンハウス・アーキテクトに転職し、木造住宅の現場監督に転身。入社9ヶ月というわずかな期間で、25件もの現場を担当するまでになった。その成長の過程をインタビューから読み解きたい。
8年勤めたドラッグストアを退職し異業種へ
――前職は何をされていたんですか?
木下壱斗さん(以下、木下さん) 前職はドラックストアに勤務していました。大学時代のアルバイトで3年間、卒業後に新卒入社して5年間と、計8年間勤務しました。大学生のときに登録販売者の資格も取りました。年功序列ではなく、実力主義の会社で昇格することもできて、最終的にブロック長として神戸三宮地区を管轄していました。給与面も決して悪くはなかったですね。
そのドラックストアでの仕事は、常に声を出していることが求められる環境だったんですが、大学まで野球をやっていたこともあってまったく苦になりませんでした(笑)。
――順調に出世しているように思えるのですが、どうして転職することにしたんですか?
木下さん 休みが不定期だったことと、将来的なキャリアプランを考えたことがきっかけです。ドラックストアでは季節ごとにどの商品を置くかは大体決まっていて、ずっとパターン化された仕事をすることになるんです。そうすると、やっぱり刺激がなくなって、仕事が物足りなくなっていくんですよ。
それから上司に退職する旨を伝えて、転職活動を始めました。転職サイトには片っ端から登録して、当初は不動産関連、メーカー関係などを受けていましたね。ただ、大阪からは離れたくなかったので、全国転勤の可能性のある会社は受けませんでした。前職で一度、コロナ禍の影響で東京の店舗に転勤となったんですが、ご飯の味が本当に合わなくて…。
ドラッグストアのマネジメント経験は現場監督にも活かせる
――どうしてハウスメーカーのオープンハウス・アーキテクトへの入社を決めたんですか?
木下さん 実は大学時代には家をつくる仕事をしたくて、左官や外構のバイトをしていたこともありました。
それでオープンハウス・アーキテクトのお話を聞かせてもらったときに「面白い会社だな」と感じました。それに、関西事業部が立ち上がったばかりで、ちょうどいいタイミングでもあったんです。とはいえ、最初は施工部門ではなく、不動産や営業部門への関心のほうが強かったですね。
――なぜ営業職を選ばなかったんですか?
木下さん ドラッグストアでは150名のスタッフをマネジメントした経験があったので、そこで培われたバランス感覚やコミュニケーション能力を監督業にも活かすことができるかもしれないと考えたということもありますし、何より社長や人事の方と話をしたときに、営業よりも戸建て住宅の現場監督のほうが面白そうだなと思えたんです。
入社3ヶ月で心折れる「何してるんやろ」
――入社時に不安はありましたか?
木下さん 不安だらけですよ。ハウスメーカー各社によって工法が異なるので、自主学習しようにもできないじゃないですか。それにマニュアルを見るだけではなかなか頭に入ってこなくて、現場での経験ともうまく紐づけができませんでした。正直、入社から3ヶ月はほぼ何も理解できない状態で、本当にしんどかったですね。自分でも「何してるんやろ」って悩むことのほうが多かったです。
ただ、それから他メンバーが施工している現場を見に行って、たくさん写真を撮りながら、自分なりに少しずつ理解していくことができるようになって。ある日、現場を任せてもらって、その現場でようやく独り立ちすることができました。他のハウスメーカーでは、未経験の新入社員の現場監督にそういった経験させてもらえるところはあまりないと思います。
上司にフォローしてもらいながら無事完成させることができたので、施工管理の仕事を続けてみようと思うことができました。自分の担当工事でもないのに、そこまで面倒を見てくれたことに感動しました。
入社してから本当にきつかったんですが、この現場をきちんと完成させることができたので踏ん張れたと思っています。なので、入社したばかりの現場監督に向けては、「つらいこともあるけれど、1棟完成するまで頑張ってみよう」と伝えたいですね。
つらい時期を乗り越え、入社9ヶ月で25現場を任されるように
――今はどれくらいの現場を見ているんですか?
木下さん 入社9ヶ月目で25件を見ています。物事が分かりはじめると、職人さんの話も理解できるようになってきたこともあり、住宅を完成させたときにはよりいっそうの達成感がありますね。
入社9ヶ月で今や25件の現場を見るまでに成長
――今は仕事が楽しいですか?
木下さん 1棟ごとに施工内容は異なるために、施工方法も毎日「これ知らんかったな」っていう発見の連続です。覚えることが本当に多い建設業界のなか、立ち上げで飛躍的に成長性している関西事業部は、とくに関西事業部は立上げ期で飛躍的に成長している部門なので、担当棟数も多くて。監督として知識や経験をどんどん積むことができているので、飽き性だった私も仕事を楽しめています。
――完成したときには、お客様から感謝の言葉を掛けられることも多いでしょう。
木下さん きれいな家に仕上がって、自分がこだわったポイントをお客様が喜んでくれたときは嬉しいですよね。本当にやりがいのある仕事だと思います。
潜在的な現場監督の入職希望者は確実に存在する
――現場監督は常に入職者が少ない情勢にあります。ただ、木下さんの話を伺ってみると、潜在的な入職希望者は一定数いるように思えます。
木下さん 私も、就活生や若者たちに何が刺さるかについて考えたことがあるんです。そもそも、未経験者から見たら、現場監督って何をする仕事なのかピンとこないんですよね。まずは業務内容をもっと分かりやすく、オープンに伝えていかなければいけないと思います。
何も分からないままの入社でしたが、最初の戸建住宅の現場が終わったときには、言葉には言い表せない達成感を感じることができたので、早い段階で仕事の魅力付けをすることが大切だと思います。
――今後、こうなりたいという技術者像はありますか?
木下さん 今は分譲住宅の現場で数をこなしていますが、今後は注文住宅にも挑戦したいですね。今後1~2年間は、分譲住宅の現場監督でしっかりと自分のスキルを上げ、そこからマネージャー昇格を目指していくつもりです。
参考:「#越境採用サイト」