建設業界の離職率は年々上昇し、もはや若い世代が入ってきても数ヶ月で会社を辞めるという光景は珍しくない。
若手社員が会社を辞めるとき、「若い世代は根性がない」「見切りが早すぎる」といった声が多く飛び交うが、私はそこに疑問を持っている。若手社員がすぐに辞める原因を考えていこう。
すぐに辞めていく若手社員
若手社員が建設業界から離れていくのは、ある意味普通のことだ。それはなぜか。
ただでさえ3Kのイメージがついているうえに、実際に働いてみて+αで嫌なことがあると、他業種と比べて何十倍もイメージが悪くなるからだ。
些細なことでも嫌なことがあると、やっぱり建設業界はブラックなんだとすぐに感じてしまい、退職意欲が強まってしまう。
採用や定着が難しくなっている昨今。会社で働いてくれる社員に対して、過度な優遇をする必要はないが、企業側はもっと感謝の気持ちを何か形で示すべきではないだろうか。
名前があるのに「お前」呼ばわり
私は、現場で名前で呼ばずに「お前」と呼ぶ人が多いことにも違和感を感じている。なぜ「お前」という呼び名が横行しているのか。
些細なことだが、「お前」呼びは、若手がこの業界から離れていく大きな要因だと私は考えている。
名前で呼ぶことの大切さを、現場の人間は軽視しているように思う。名前で呼ばれるのと、「お前」と呼ばれるのでは、その後の心持ちが全く違ってくる。
相手が男性だろうと女性だろうと、年齢が年上だろうと年下だろうと、相手のことを尊重する意味でも名前で呼ぶことは今の時代マストなのだ。
自分のほうが上司・先輩だからと、部下や後輩を「お前」呼ばわりするのではなく、名前を呼ぶという基本的なことをしなければ、若手から悪いイメージを持たれるのは当然ではないだろうか。
理不尽なことを我慢させる
所長は一切現場に出ず、若手社員が必死に職人の機嫌をとりながら現場を回している現場に、私はこれまで何度も遭遇してきた。
必死に現場を走り回っている彼ら若手社員が、所長にしか判断できない内容を事務所に持ち帰ると、所長に「自分で考えろ」「忙しいんだ」と邪険に扱われる姿を何度も見てきた。これは立派なパワハラだ。
所長から「自分で考えろ」と言われ、若手社員が自分で判断をする。その判断に対して、職人に嫌味を言われる。誰しも一度はこういった経験をしたことがあるのではないだろうか。
理不尽なことを我慢するのは仕事ではない。しっかりと所長が現場に対して責任を持ち、部下たちに自らの背中を見せることが重要ではないだろうか。
わからないことを聞けない空気
若手社員にとって、現場は「未知の世界」である。特に最初は何もわからず、怖い世界にも思えるだろう。
そんな不安を抱えている中で、若手社員に対して教育の時間を取れず、まともに教えてもらえない、わからないことがあっても怖くて聞けない。そんな雰囲気が建設現場にはある。
聞けば嫌な顔をされる、だからわからないまま仕事をしてミスをする、ミスをすれば上司が庇うどころか「わからないなら聞け」と怒鳴られる。こういった負のサイクルになる。
若手社員が育たないのは、紛れもなく上司や先輩社員、会社の責任だ。現場の中で教育できる工夫を会社全体で考えていかなければならない。
若手社員が辞めていく流れを本気で止めたいと考えている企業が、日本中でどれぐらいあるだろうか。他産業と比較して建設業界に入ってくる若者は少ない。そんな中でも建設業界を選んで入ってきてくれても、数ヶ月で辞めてしまうという悲しい現実が起こっている。
若い世代に建設業界を選んでもらうために、若手社員が退職してしまう原因を理解し、ネガティブなイメージや実態を全て変えていかなければ、若者離れは今後ますます進んでいくだろう。