石塚 新太さん 五洋建設株式会社大阪支店 淀川大堰工事事務所 監理技術者

石塚 新太さん 五洋建設株式会社大阪支店 淀川大堰工事事務所 監理技術者

五洋建設は技術者としての「成長」を考えてくれる会社

施工管理上の工夫やこの現場ならではの取組みとは

近畿地方整備局が進める淀川大堰閘門事業。この事業の閘門本体工事以外の外構工事を担当する五洋建設の監理技術者である石塚新太さんにお話を伺う機会を得た(取材時期は2023年7月下旬)。

工期がタイトで施工ヤードが狭小という条件のもと、働き方改革への対応も求められる中、どのように現場をマネジメントしているのか。五洋建設の魅力なども含め、聞いてきた。

工程上、余裕がある状況ではまったくない

現場の様子(2023年7月時点)

――こちらの現場はいつからですか。

石塚さん 2021年12月からです。閘門本体工事以外の導水路、導流堤、締切の工事を担当しています。

――工事の進捗はどうですか。

石塚さん 閘門本体工事は大成建設さんが担当していますが、整備事業全体として見れば、本体工事以外の工事を滞りなく施工を進めていくことが、工程管理上クリティカルになってきます。2022年中はわれわれがメインで工事をしていましたが、2023年は大成建設さんがメインで工事をしています。予定通り大成建設さんにバトンタッチできたので、おおむね順調に進捗していると思います。

ただ、われわれの工事としては、船舶が通るための導水路を上下流に構築するという工事が残っているのですが、工程上、余裕がある状況ではまったくありません。引き続き、気を引き締めてこれを施工していこうというところです。

時間経過を加えた4Dを活用し、重機配置などを検討

作業ヤードと仮橋

――この現場は工期がタイトな上、施工ヤードが狭いという条件下ですが、施工管理上の工夫したことはありますか。

石塚さん 重機の配置を工夫しています。事前に4Dで安全性などを検討した上で、日々細かく調整しながら、配置するようにしています。

――4Dとはなんですか?

石塚さん 3Dデータに時間経過を加えたデータのことです。時間経過によって重機を配置できる位置などが変わるので、時間経過も含めて最適な配置位置を検討しているわけです。この現場はBIM/CIM活用現場なこともあって、五洋建設独自の取り組みとして4D検討を導入しています。搬入路などの準備工を進めている間に導入しました。

――仮橋の設置も五洋建設さんですか。

石塚さん ええ。五洋建設が提案して、まず斜路型の搬入路を構築しました。その後に河川敷に作業ヤードを確保するため、仮橋を設置し、河川敷では、クレーンの組み立てや解体といった作業を行っています。仮橋によって、メインの作業ヤードの取り合いが軽減されました。大成建設さんの作業でも使われています。

――周辺住民などへの対応で気をつけていることはありますか?

石塚さん 現場で新たな作業を開始するときには、その都度住民の方々にご説明に行くようにしています。あとは船舶への対応ですね。水上での施工もあるので、上下流の関係団体に対しても、施工状況についてしっかり情報共有するようにしています。夜間の作業が必要な場合には、騒音計、振動計を設置することで、見える化するようにしています。

一つの現場で施工が完全にカブるのは珍しい

――大成建設さんとの連携が非常に重要な現場だと思われますが、どうですか?

石塚さん 重要ですね。難しいところがありますが、われわれと大成建設さんはそこをクリアしていかなければならないという共通認識を持っています。打ち合わせはもちろん毎日やっていますが、やはりなんらかの問題が起きてしまいます。事業全体のことを考えながら、お互い協力して問題を解決するよう努めているところです。

―― 一つ現場で2つの施工者というケースは珍しいのではないですか。

石塚さん まったく同じエリアで同時に施工する、施工が完全にカブるというのは、珍しいと思います。近接工区というケースはそれなりにあると思いますが。

――閘門という工種についてはどうですか。

石塚さん 水門工事はけっこうありますが、閘門工事は珍しいですね。

一人で持ち運びできるレーザスキャナなどを導入

――ほかに、この現場ならではということはありますか?

石塚さん BIM/CIMやCM方式といった試行的と言うか、先行的な取り組みが入っているところだと思います。

――さきほど4D検証のお話がありましたが、そのほかにデジタル技術関連の取り組みがあれば、教えてください。

石塚さん 河床掘削、浚渫については、マシンガイダンスを活用したICT施工でやっています。マルチビームを搭載したラジコンボートで測量するカタチです。あとは、既存の管理橋の桁下で施工するに当たって、安全性と施工性を高めるために、独自で点群データを取り、施工機械の揚程や鋼管矢板の割付といった検討に役立てました。五洋建設が新たに開発した、人一人で持ち運びできるようにユニット化したレーザスキャナを使いました。

安全教育にVR、ARを活用

――働き方改革への対応はどうですか?

石塚さん 正直に言って、対応に苦慮しているところです(笑)。

――この現場の人数は何名ですか。

石塚さん 社員だけだと、繁忙期で10名〜12名ほどです。協力会社さんなども含めると、最大60名ぐらいです。四苦八苦しながら取り組んでいます(笑)。

――安念衛生管理についてはどうですか。

石塚さん たとえば、CIMデータを使って、現場に入る前に、VRで安全教育をしています。あとはARも使っています。閘門ができ上がった状態のARをつくって、iPadで確認できるようにしています。安全衛生ではないかもしれませんが、作業員さんにこの事業の社会的役割を理解してもらうため、現場に入る前に見てもらうようにしています。

ずっと緊張の糸を張り続けるのは不可能

――完成に向けてコメントをお願いします。

石塚さん 固定堰という一つのヤマ場は超えましたが、上下流の導水路というさらに大きなヤマ場が控えています。引き続き常に気を引き締めながら、これらに当たっていきたいと思っています。

その一方で、ずっと緊張の糸を張り続けるのは不可能なことなので、しっかり休みを取って気持ちを切り替えることが必要です。会社のバックアップを受けながら、現場の方々とコミュニケーションをとって、引き続きちゃんと休みが取れるようマネジメントしていく考えです。

監理技術者というポストで仕事のモチベーションがアップ

――ところで、石塚さんは入社何年目ですか。

石塚さん 10年目です。

――10年目で監理技術者とは早いですね。

石塚さん 私より少し上の世代の技術者が少ないので、回ってきたのかもしれませんが(笑)、この年齢で監理技術者というポストを任せられたのは、チャンスを与えられたことだと解釈しています。成果に対してしっかりと評価してもらえていることが、仕事のモチベーションになっています。

――五洋建設という会社の魅力について、どうお考えですか。

石塚さん 技術者としての成長を考えてくれる会社だと思っています。私は、この現場に来る前は技術研究所にいて、その前は東北の震災復興の現場にいました。東北の復興の現場は、私が希望して配属してもらいました。技術研究所についても、技術的なものを身につけたいという私の希望を叶えてもらいました。

今の現場への配属も、私が手を挙げた結果、配属してもらっています。この現場では、東北の現場や技術研究所で経験したことが、非常に役に立っていると実感しています。

建設会社では、ずっと施工、ずっと開発など同じ部署にとどまることが多いと思いますが、五洋建設はそうではなく、技術者として、本人が希望すれば、いろいろな経験を積ませてもらえる会社です。私が五洋建設に入社したのも、そういう会社だと聞いたからです。

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