建設業ならではの「誇り」や「魂」
建設業は現在、変革の過渡期に入っていると感じます。人手不足による生産性の向上を余儀なくされている状況だからです。
そんな時代に入社してくる新人に対して求めることは、歴史深い業界ならではの魂は失わないでほしい一方で、新しい時代の見地をもって変革を進めていくことです。
若いうちに常識を常識として固めてしまうと、新たな発想は生み出しづらくなります。かといって、奔放にやられるのも違います。
残さなければいけない建設業ならではの「誇り」や「魂」を伝承した上で、若者の柔軟な発想を載せていかなければいけないのです。
では、残すべき魂とは何か。若手の心に植え付けておかなければいけない、建設業の根本とは何か。今回はそんな話になります。
もちろん人それぞれの価値観により、誇りは変わると思います。なので、あくまでも僕の主観であることはあらかじめ伝えておきます。
その前提で伝承すべき建設業の魂とは何か。それは大きく三つあると考えています。
一つ、義理と人情
ここはどうしても外せない部分です。一見古い考え方だと思われる方がいるかもしれませんが、それでも魂として伝承すべきものだと思います。どれだけインターネットが発達しようとも、どんなにAIが進歩しようとも、その先には必ず「人間」がいます。
建築も土木も、「ものづくり」の現場ではありながら、結局何と仕事をしているのかと言われれば「人間」なのです。人が動かなければものは造れません。そして、ものは人が使うために造られます。この原則は崩せないのです。
人を動かすものは、気持ち。気持ちを動かすものは、つながりです。つまり、そのつながりを大切にする気持ちこそが、相手を思いやる考え方である「義理と人情」です。ここを蔑ろにしては、建設業は根本的に崩壊してしまうのです。
二つ、地域への安心と安全
人間に必要な3大要素である衣食住の中で、唯一現地でしか生産できないものが「住」です。土を掘り、基礎をつくらなければ建物は完成せず、道路は輸送では不可能です。それゆえ地元に根差し、どの土地にも必要とされるものが建設業なのです。
そもそもそ地域にとって、安心で安全な生活を作ることを生業としている商売。その基盤であるインフラを整備する責務を担っているわけです。人々の生活を脅かすものであっては本末転倒になります。もちろん現場作業においても、周囲の安全確保は絶対条件なのです。
人々が生活する家。仕事を生み出す施設。それをつなぎ合わせるインフラ。その全てを任されるためには「信頼」が命。社会へ貢献しているという意識を失ってしまっては、根本を失ってしまうのと同じことなのです。
三つ、風景を変えることへの責任
かつてそこには草原と森が広がっていました。そこに人が生活をはじめ、建物や道を整備することによって新たな景観を生み出しました。つまり人は、不自然な状況を常に生み出している生き物と言えます。
もちろん新たなものを生み出すこと自体は、悪ではありません。とかく人間は知恵をもとに文明を作り上げてきたわけですから、それが存在価値ともいえるからです。とはいえ、もともと存在しえないものを生み出してしまっていることは意識すべき。
無秩序に、そして自己中心的に作り出すのでは誇りは生まれません。意志を持ち、秩序をもって携わらなければいけないと考えます。地図を書き換えるほどの偉業には、それ相応の責任があることだと知る必要があると言えるのです。
魂を理解することが優先
以上が、建設業において伝承すべき魂だと、僕は考えています。どんなに時代が変わろうとも、どんなに進歩しようとも。絶対に変わってはいけないもの、根っこにあるものは何なのかを、まずは理解することが優先です。その上で、変革を起こしていくのです。
人手が不足し高齢化が進む中で、生産性を向上させることは必須です。そのためのツールはたくさんあります。変わっていかなければいけません。だからこそ建設業の宝である若者には、この魂だけはしっかりと伝承していかなければいけないと感じています。
※この記事は、『 【インスタで学べる】1日たった3分で学べる建設コラム 』の記事を再編集したものです。