クリエイト礼文の大場友和代表取締役

クリエイト礼文の大場友和代表取締役

クリエイト礼文が描く“住まい”起点の地方創生「社会的備蓄」と「エリア型PPP」で挑む山形のまちづくり

株式会社クリエイト礼文(山形県山形市)は今、“住まい”から地域の未来を育む公民連携事業を強化している。 現在、同社と舟形町は、地方創生型のPPP(Public-Private Partnership/公民連携)事業として、山形県最上地方初となる4年制大学「東北農林専門職大学」の学生向けアパートを施工中だ。

本事業は大学開学を契機に、毎年1棟ずつ計4棟の学生向けアパートを整備するという中長期的な構想に基づいている。町が地方創生推進交付金(拠点整備交付金)を活用して土地を整備し、建設・運営はクリエイト礼文が担う「リスク分担型」の公民連携スキームを採用した点が特徴だ。

地方創生を継続的に推進していくためには、地方自治体単独の取組みには限界がある。そこでクリエイト礼文は、制度や交付金という公的支援だけでなく、地域のビジョンに共感し、資源やノウハウを持ち寄る“民間の主体的な関与”、すなわち「民間投資」こそが、公民連携を前に進める鍵になると提唱。行政と民間がそれぞれの役割と強みを持ち寄り、信頼をベースに“ともに担う”かたちこそが、公民連携の本質であるとしている。

また、同社は山形市の駅前公園で整備を進めていた新施設「KASUMI TERRACE(カスミテラス)」を完成させ、2025年6月にオープニングセレモニーを開催した。この施設は、山形県内で初めて「Park-PFI制度」を活用し、民間主導で整備された都市公園内の飲食施設である。当日は、山形市長や市議会議員、地元飲食店組合や町内会など、多くの来賓を迎えて盛大に祝われた。

「KASUMI TERRACE」の整備は、単なる飲食店舗の開業にとどまらず、駅前エリア全体の魅力と価値を高める「エリアマネジメント」の一環として位置づけられている。人と人が出会い、時間を共有する場の創出によってまちなかの賑わいを高め、山形駅前の回遊性と滞留性の向上を目指すものだ。

今回は、これらの公民連携事業の展望について、クリエイト礼文の大場友和代表取締役に話を聞いた。

「QOL住宅」から「地域経営」へ。地方創生の原点は『社会的備蓄』

――まずは、クリエイト礼文の事業基盤についてお聞かせください。

大場友和社長(以下、大場社長) 当社は山形県を拠点に、注文住宅事業「ユニテハウス」を中心に展開し、これに規格住宅の「スマートユニテ」も合わせて累計3,700棟超の引き渡し実績があります。2×4工法をベースにし、住宅づくりのテーマとして「QOLを高める家づくり」を軸に、デザイン性と経済性を両立した住宅供給を続けています。

これまで誰にでも手の届く価格でなくてはならないアフォーダブル住宅をコンセプトに「QOL」住宅を提供してきました。最近では国策の一歩先を目指し、山形県であれば、耐震等級3、断熱等級6を取得、太陽光発電と蓄電システムを2025年10月から積極的に展開しています。

注文住宅事業「ユニテハウス」を中心に展開

加えて、不動産仲介、約1年前からリノベーション事業を開始し、飲食、蔵王温泉での宿泊事業、そして本日の主題である公民連携によるPPP・Park-PFI事業までを一体的に運営し、「地域の暮らしと経済を循環させるまちづくり企業」を標榜しています。2017年には経済産業省より「地域未来牽引企業」に選定され、建築事業を核にしながらも、地域経営に関与できる体制を整えています。

――住宅メーカーである御社が、なぜそこまで深く「地域経営」や「地方創生」に関与されるのでしょうか。

大場社長 私は、地方創生においては「社会的備蓄」という観点が肝要だと考えています。 地方では、平時は若者の需要に応えられないため、若者が都市部に流出する状態が続いています。彼らを呼び戻すには魅力的なハード面の整備が重要ですが、基礎自治体には財源が不足しており、単独では難しいのが現状です。

そこで、防災の観点から地方創生という文脈を組み込み、地方交付金を獲得してカフェや学童施設などのハード面を整備する手法を提唱しています。平時は賑わいの場として機能し、もし発災した際には、備蓄機能を持ち本設住宅等へ移行できる建物を増やす。この「社会的備蓄」の考え方を応用し、地方創生に乗り出したのが原点です。

当社にとっては「ユニテハウス」事業が基盤ですが、職人不足・高齢化に対応するため、現場施工を極小化した「オフサイト建築」を広げていきます。ボックスユニット化に基づく工業化が未来の戦略であり、一方で地方創生は社会的使命と位置付けています。 この3本柱を戦略の主軸とし、それらを組み合わせることで、住宅を単なる「個別消費財」から「社会インフラ」へと変革することを目指しています。

能登半島地震で「モバイルハウス」を応急仮設住宅として提供

――その「社会的備蓄」を実現する技術として、「オフサイト建築」があるわけですね。

大場社長 はい。私は「一般社団法人日本モバイル建築協会」に理事として参画しています。協会の代表理事でもある立教大学の長坂俊成教授(リスク学・防災危機管理)が、この「オフサイト建築」を提唱しています。

本協会では、木造モバイル建築による応急仮設住宅の提供を、2024年の能登半島地震の被災地で行いました。災害時の現場は混乱しており、職人の残存能力も厳しい状況にあります。今回の能登地震の復興では8,000戸を施工するのに8ヶ月もかかっています。発災当時、金沢市から珠洲市までライフラインが途絶している際には片道6時間を要し、現地で1日2時間作業してまた金沢に戻るというサイクルでは、早急な施工対応は困難でした。

本協会は、石川県と発災後に「災害時における応急仮設住宅の建設に関する協定書」を締結しました。同様の締結は山形県、鳥取県や大分県とも交わしています。オフサイト建築の強みは、一般の恒久住宅と同等以上の安全性・性能・耐久性を持つ点です。応急仮設住宅として利用した後は、本設の市町村営住宅として活用したり、被災者個人に払い下げて移築し、自宅の自力再建を支援したりすることができる、ユニット化された木造住宅です。

被災地に大工などの職人を派遣しなくても、被災地の外でモバイルハウスのユニットを生産し、4トントラックで運搬。建築基準法に準拠した応急長屋住宅として供給可能で、能登半島では261戸を施工しました。そのほか、支援者の方々への宿舎も提供しました。

輪島市下黒川第1団地の全景(日本モバイル建築協会)

これからいつか必ず発生する南海トラフ地震に対しても、被災地の外から応援供給できるような体制を、本協会を通じて全国の工務店ネットワークを活用し、さらに強化していきたいと考えています。

――この技術は、地域産業である「林業」とも密接に関わっていると伺いました。

大場社長 日本モバイル建築協会が企画し、長坂代表理事が編集し、私も執筆者の一人でまとめあげた書籍に『新住宅産業論 仮設住宅が問いかける日本の「木造力」と「レジリエンス」』があります。同著では建築をオフサイト化し、地域森林資源の活用、地域工務店との連携などを提唱しています。

山形県でも林業振興を強化する施策を打ち出していますが、正直、外国産材の輸入に力を入れ、これまで国産材はあまり使われず、林業の担い手も不在の状況が続いていました。2024年度での東北農林専門職大学の森林・林業・木材産業学科の志願者数も、定員20人に対し11人に留まっていました。しかし、これからは国全体が国産材の活用に注力していますので、林業の担い手が求められます。我々のオフサイト建築も地域の木材の活用を標榜しています。

2025年5月13日『新住宅産業論』出版記念シンポジウム。一番左が大場社長

ちなみに、30坪の「ユニテハウス」1棟では20m2の木材を利用しますが、そのうち6割が国産材です。これから「オフサイト建築」の拠点を多く設置する構想がありますので、交付金などを活用しながら国産材の活用につとめていきたいです。 製材所の余ったスペースや地方自治体の交付金を活用し、工場のシェア、既存のプレカット事業者へオフサイトでフルパネルの考え方やボックスユニットの技術を継承していきたいと考えています。

公民連携の本質は「協働のパートナーシップ」

――ハード面での技術や資源活用をベースに、行政とはどのような関係を築くべきだとお考えですか?

大場社長 人口減少下にある地方都市では、行政単独でインフラや公共空間を維持が困難です。従来の「発注者=行政」「受注者=建設会社」という縦の関係から脱却し、共通の課題解決を目的とした「協働のパートナーシップ」が必要です。

私たちが重視しているのは、公園や公共空間を単なる施設としてではなく「居場所=プレイス」として設計することです。欧米で普及するプレイスメイキングの概念に、日本建築がもつ「境界を曖昧にし、伸縮的に空間を使う文化」を掛け合わせることで、欧米の模倣ではない「山形らしい公共空間」をつくることができると考えています。

行政にとっては「まちづくりの戦略拠点」、住民にとっては「暮らしを豊かにする居場所」、事業者にとっては「持続的な商業の舞台」。この3者の役割を明確にした上で協働することが、公民連携による地方創生の本質だと捉えています。

若者の定住を促す学生アパート整備をPPPで推進

――具体的な事例として、舟形町との連携プロジェクトについて教えてください。

大場社長 現在、山形県35の市町村のうち22市町村が過疎の状況にあります。私は社会人大学で地方創生や防災を研究していますが、山形県の各地方自治体の首長をくまなく訪問した際に、舟形町の森富広町長は、同様の危機感を抱いていました。舟形町の近隣の山形県新庄市に「東北農林専門職大学」の開校が決まり、学生を舟形町にグリップし、若者定住に寄与するために、横断的なチームを結成し、アパートを新築するプロジェクトがスタートしました。

舟形町では、大学開学に伴い、学生アパートの整備をPPPスキームで進めています。これは単なる住居供給にとどまらず、交流機能を持つ共用空間を設け、学生と地域住民が自然に交わる場を設計しました。若年層の定住促進と地域社会の活性化を同時に実現するモデルケースであり、建築会社が「ハード」だけでなく「コミュニティ形成」というソフト面まで設計することの意義を示す事例となっており、今、5棟目まで着手しています。

東北農林専門職大学の学生向けアパート1号棟

同大学は専門職大学ですから、これからは地元で就職してもらうために街と連携するフェーズに入ります。たとえば茨城県境町では25年間住み続けると戸建て住宅と土地が無償提供される定住促進住宅「アイレットハウス」の施策を進めていますが、同様の住まいインフラの形成を舟形町とともに進めていきたいとも考えています。

近隣住民と東北農林専門職大学の学生と交流風景

――リノベーション工事も含めたプロジェクトだったそうですが、課題はありましたか。

大場社長 築年数の経過に伴う構造体の不確実性と法規制の適合性に苦心しました。耐震・断熱性能を現行基準に引き上げるには、コストが増大しやすく、収益モデルをどう成立させるかが難点でした。また、地域の文化資産的な価値を保持しながら現代的な利便性を付与するバランスも問われます。当社では「資産の再生を通じた地域への再投資」という考えを軸に、リノベーションを単なる改修ではなく、都市経営における資源循環の一環として位置付けています。

県内初のPark-PFIで公園再生「KASUMI TERRACE」

――もう一つの柱である、山形市でのPark-PFI事業についてもお聞かせください。

大場社長 2025年6月、県内初のPark-PFI事業として、山形駅前公園に「KASUMI TERRACE」を開業しました。かつて駅前の一角は「暗い・使われない・通過点」となっていましたが、民間主導の整備によって、昼は市民、夜は観光客が集う「滞在の場」に生まれ変わりました。滞在時間が大幅に増え、公園が「都市のリビング」として機能し始めています。

「KASUMI TERRACE」のオープニングセレモニー

建物は20年の借地契約をし、自己投資しました。公園は数年前に基盤整備をしているため、公園の維持管理費はほぼかかりません。Park-PFI事業のたてつけである「公園を無償で管理する一方、ビジネスを認められる」という形で、プロポーザルでは「当社が責任をもって公園とともに管理し、山形市の貴重な一般財源から予算を捻出する必要がなく、公園での施設は十分事業として成立するため、持続的に行う」という点が評価され、採択していただきました。

――どのような施設になっているのでしょうか。

大場社長 「KASUMI TERRACE」は、昼はカフェ、夜はダイニングバーという二面性を持たせ、幅広いライフスタイルに対応できる空間としました。地元食材を活かしたイタリアンをベースに、屋外テラスを活用したオープンガストロノミーを特徴としています。さらに、地域団体や市民と共催するイベントを組み込み、公園そのものを「公共性と商業性が両立する場」としてデザインすることで、単なる飲食事業ではなく、エリアマネジメントの核として設計し、公園の風景や市民活動と調和した「まちのにぎわいを創出する拠点」として機能しています。

「KASUMI TERRACE」の内装

成功の要因は、行政・住民・事業者の三者が果たすべき役割を明確化したことです。行政は「まちづくりの戦略拠点」として位置付け、住民にとっては「日常の居場所」となり、事業者にとっては「持続的な商業舞台」となります。この三位一体の設計思想が、駅前公園の再生を可能にしました。

「KASUMI TERRACE」の地域は花笠まつりで有名で、花笠商店街と名付けられるエリアもあります。山形県内では出羽三山、銀山温泉、蔵王、山寺など観光資源は豊富に恵まれていますが、山形駅前で訪日外国人が楽しんでいる風景はまだ多くみられていません。ただ、山形人は「飲みに寄ってよ」と気軽に声をかけるような人が好い県民性なので、その環境を整えていくことが次のフェーズだと考えています。

「KASUMI TERRACE」の屋上テラス席

「民営」視点のエリアマネジメントで、持続可能な地域経営へ

――今後の公民連携の方向性についてお聞かせください。

大場社長 PPPについては「財政制約下の行政代替手段」ではなく、「地域を持続可能にする経営手法」として進化すべきだと考えます。従来は公共施設の整備や維持管理の一部を民間に委託する形が中心でしたが、それでは「縮小均衡」に陥るリスクがあります。

私が思うPPPの成功は、民設民営化や公設民営化のいずれかです。公民連携は大切なワードで、とくに民間が企画し、運営することが肝要です。従来は指定管理が長く続いた結果、ニーズがアンマッチした事例が数多くあり、使用されない未利用の空地や建物の存在が課題となっています。日本はこれから人口が減少していきますが、山形のような地方で若者の定住を促すためには、民間による提案のほうが若者のニーズを把握した施設の整備がしやすいと考えています。

具体的な手法では、地域全体の経営視点でPPPを設計する必要があると考えています。当社単体で事業を成功させるのではなく、エリア全体で検討し、地域全体の経営視点で進めるべきです。その中で当社としては住宅・不動産・飲食・観光など多様な事業を展開している強みを活かし、複数の収益モデルを束ねることで、公共施設の運営に安定した収支基盤を提供します。単一施設の採算に依存せず、周辺エリアや他事業とのクロスセクター連携によって収益を循環させる「エリア型PPP」が重要です。

Park-PFIについても、制度上、単体施設の採算性が課題になりやすいですが、当社は「エリアマネジメント」と組み合わせることでその限界を補完しています。複数施設・複数事業を束ね、全体で収益を循環させる仕組みによって持続可能性を確保します。

今後は、山形駅前公園で得られた知見を他地域にも展開し、単なる公園整備ではなく「地域の未来をどう描くか」を議論の中心に据えていきたいと考えています。公園は街の象徴であり、都市を変える力を持ちます。だからこそ、公民連携の舞台として最適な空間であると確信しています。

――単体の収益にとらわれない「エリア型PPP」という考え方は非常に重要ですね。モデルケースとして参考にされている事例などはあるのでしょうか。

大場社長 海外事例に学ぶ点は大きいです。たとえばスペイン・サンセバスチャンでは、公共空間を舞台に食文化と観光を結びつけ、日常生活と観光需要を両立しています。各地域の特性を読み解いて、地域の方とウィンウィンの関係を築き、地域の方にもメリットがありつつ、私たちもそのエッセンスを取り入れつつ、「山形らしい公共空間」を基盤としたPPPを広げ、運営していきます。

空き家や遊休不動産の再生、災害対応住宅の社会的備蓄、観光と居住を複合化する新たな都市開発など、公民連携の可能性は拡大しています。山形県内の地方自治体は成功事例を見て動く傾向があります。今回、山形市の県内初のPark-PFI事業での成功事例も誕生したので、様々な手法をもとに公民連携を提案したいです。たとえば、舟形町で住んでいただく方の定住型の戸建て住宅の提案、山形市内でPark-PFI事業では2か所、他の地方自治体でも数か所実施する予定です。

地元を熟知し、ニーズを把握しているのは地元の地域密着型の企業です。当社は「建築会社」という枠を超え、都市と地域をマネジメントする立場として、公共資産の最適化と地域経済の循環に貢献する事業モデルを推進していくつもりです。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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