公益社団法人土木学会(池内幸司会長)は11月26日、都内で「土木学会デザイン賞2025」の受賞作品を発表した。最優秀賞2件、優秀賞8件、奨励賞6件を選定。応募作品は29件だった。栄えある最優秀賞には「史跡鳥取城跡擬宝珠橋の復元」(鳥取県鳥取市)と、「馬場川通りアーバンデザインプロジェクト」(群馬県前橋市)の2件が選ばれた。
土木学会デザイン賞は、公募対象を公共的な空間や構造物に広く求めるとともに、新たに創出された空間・構造物はもとより、計画・制度の活用や組織の活動などに創意工夫がなされたことで景観の創造や保全が実現した作品に付与される。2001年度に土木学会デザイン賞を創設、今年で25年を迎えた。今回の受賞作品も含めてこれまでに合計266作品を選定した。
受賞作品は橋梁が多いものの、2005年の横浜市都市デザイン以降、近年ではまちづくり、広場、公園や河川の受賞件数が増加し、地域別では関東・中部・九州が多い。事業主体では、国37件(14%)、公団22件(8%)、都道府県48件(18%)、市区町村88件(33%)、複合44件(17%)、JR3件(1%)、民間その他24件(9%)で地方自治体が半数を占めている
土木学会景観・デザイン委員会デザイン賞選考小委員会を務める星野裕司委員長(熊本大学教授)は記者会見で、最優秀賞の史跡鳥取城跡擬宝珠橋の復元と馬場川通りアーバンデザインプロジェクトについて触れた。
史跡鳥取城跡擬宝珠橋の復元については「擬宝珠橋(大手橋)は、 1621 年に創建、数度の架け替えを経ながら、1897(明治30)年頃まで現存していた。今回の木橋の復元工事では規模は大きくないが、歴史的なものに対する神聖性へのこだわりが高い。とくに基礎の見えない部分にも工夫を凝らしている。木橋のため、維持管理や架け替え工事も考えられるがその点を視野に入れた取組みをしている。土木デザインでは見栄えや派手さ以上に、あるべきものがあるべき姿にそこにある必然性はとても大切で、擬宝珠橋は隠れた努力でそれを実現している」と評価した。
馬場川通りアーバンデザインプロジェクトについては「民間の力が大きく寄与したプロジェクトだ。資金調達を民間の方々が行い、公共工事として実現した。昔の公共工事は、道普請(※地域住民が協力して道路や水路の修理、草刈りなどを行う勤労奉仕作業を指す。鎌倉時代から続く日本の伝統的な相互扶助の活動)により、道路の新設や修繕などを行ってきたが、その現代版のようなものだと感じた。道路も横に流れる水路も決して広くはないが、その条件下で市民の想いを形にしながら、丁寧なデザインにより、通りの居心地を高めつつ、閑静な姿で長く維持するようなたたずまいを実現した。今、前橋市は民間の力でまちづくりを展開しているが、一つの軸となる場所をつくった」と評定した。

最優秀賞の馬場川通りアーバンデザインプロジェクト(鳥取県鳥取市)
表彰式は2026年1月31日に東京都新宿区の土木学会講堂で開催し、表彰状の授与式や受賞者によるプレゼンテーション、受賞作品に対する選考委員の講評、来場者との質疑応答を予定している。発表の記者会見では、土木学会景観・デザイン委員会デザイン賞選考小委員会の星野裕司委員長(熊本大学教授)と同学会景観・デザイン委員会 デザイン賞選考小委員会主査の白柳洋俊(愛媛大学准教授)が解説した。
今年の論点は「公共性」と「総合力」

土木学会景観・デザイン委員会デザイン賞選考小委員会の星野裕司委員長(熊本大学教授)
星野委員長は会見の中で、今年の審査について次のように総評した。
「選定された16件はバリエーションが広く、土木デザインの豊かさを実感した。議論は構造物に対する知識だけではなく、人の利活用も含めた計画論、施工方法、ディテールに及び、デザインの『総合力』を実感した。また、デザイン賞は『公共』を大切にしているが、行政だけではなく民間による『Park-PFI』や民間の敷地を公共に開放するなどの複合事例が増えている。2025年も多くの複合作品が受賞した点は喜ばしく、市民のパブリックマインドが表れた。
一方、本当の公共とはなんだろう。それはどこまで開かれているのだろう。そこでつくってきたものが持続的に長い間持続するのかを考えている。少し前まで民間の資本で公的なものが完成すること自体ありがたいことであったが、その『質』が問われはじめている。土木デザインとはいろんな方が関わり、いろんな場所、いろんな施設により実現すると実感した」
官民が連携し、事業主体が「複合化」に注目
――今年度の審査の論点は。
星野委員長 土木学会デザイン賞は、「技術と造形が調和したデザイン」「時間の蓄積に耐えるデザイン」「社会制度や仕組みのデザイン」「豊かな公共性を有するデザイン」「地域の生活・文化創造に向けたデザイン」の5点の評価の視点を、各審査員が共有して審査をしている。2025年の論点の一つに「公共性」がある。民間の力で公共的なものが整備される事例が増える中、日常的な利用者、たとえば自転車で通う子どもたちにとって、その公園がより良いものになっているかなど、公共空間としての「質」の高さが大きな論点だった。
もう一つは、「総合力」だ。たとえば、水辺のデザインとしては非常に優れているものであっても、そこに至るまでの道路の渡り方、トイレのつくりなどについても考慮している。作品のメインの部分だけでなく、付随する部分まで目が配られているかといった「総合力」も審査する上で重要な論点となった。

土木学会デザイン賞の記者会見の様子
――最近求められている『公共性』とはどのようなものか。
星野委員長 今回の16作品の中では、公園作品が分かりやすい。私の感覚も含めて話すと、『その場所で長い時間過ごせること』がより強くなっている。「Park-PFI」によるカフェ整備などがその一例だ。優秀賞の「高尾山ふもと公園・案内川」(東京都八王子市)を実見したが、浅い水辺に子どもたちが入って遊び、木陰の中で年配の方がスケッチをしていた。豊かな時間を長く過ごしていくことが、今まで以上により重視されるようになっている印象がある。
――最近のトレンドでは、事業主体の「複合」が増え、同時に官民連携によるデザインが増えている。
星野委員長 適切な動向と受け止めている。かつては行政がインフラをつくってきた時代があるが、それを絶対視していない。国宝に指定された熊本県の通潤橋(つうじゅんきょう)は、地元の庄屋がつくった橋梁だ。長い歴史の中で困っていた人たちが力を合わせながら、『みんなのもの』をつくることは、意外と本質的なことだと感じる。つまり、時代の認識とともに生まれているものであると同時に、伝統的なものでもある。

国宝指定された通潤橋
――委員長としての想いは。
星野委員長 土木全体が他の分野と比べてスポットが当たりにくい。本賞は、色々な地域、立場で頑張られている方々を顕彰する意味合いもある。とくに市民が目にして「きれい」「楽しい」と素朴な感情が生まれる意味で非常に大切な賞だと言える。
――デザイン賞選考にあたり、現地訪問の特徴は。
星野委員長 本賞の特徴として、応募者に事前連絡をしない点がある。通常の賞であれば、応募者に連絡し、応募者が審査員を案内し、説明するケースも多いが、本賞の審査は『市民目線』を重要視している。ミシュランガイドではないが、匿名で調査し、一市民のようなスタンスで現地を訪問している。
受賞作品一覧
【最優秀賞】
・史跡鳥取城跡擬宝珠橋の復元(鳥取県鳥取市)

・馬場川通りアーバンデザインプロジェクト(群馬県前橋市)

【優秀賞】
・さぬき市立「時の納屋」(香川県さぬき市)

・SHEEPATH PARK(シーパスパーク)(大阪府泉大津市)

・気仙沼復興照明計画(宮城県気仙沼市)

・MUFG PARK(東京都西東京市)

・多摩川スカイブリッジ(川崎市川崎区~東京都大田区)

・高尾山ふもと公園・案内川(東京都八王子市)

・MEIJI PARK(東京都新宿区)

・中之島通の歩行者空間化(大阪市北区)

【奨励賞】
・富山市ブールバール広場再整備(富山市)

・アルミニウム合金製防護柵パノレール

・錦華公園(東京都千代田区)

・津久見川河川激甚災害対策特別緊急事業(大分県津久見市)

・とみぱーく(岐阜県富加町)

・遅野井川親水施設(東京都杉並区)

2024年の土木学会デザイン賞の受賞作品
【土木学会デザイン賞2024】最優秀賞は「気仙沼湾横断橋」と「SAGAサンライズパーク+栄光橋+佐賀市文化会館西側広場」






こう言うことにお金を使う前にやる事があると思います
例えば上下水道とかですかね?
お金がかかるのに何で予算を回さないのでしょうか?
民間委託してもうまく行ってないですよ?
正直なところ日本の文化も大事ですけど国民としては今の生活が大事ですね。
利益がしっかり生まれて国益になるのなら良いですが大丈夫ですか?
無駄遣いではないですか?どうですか?