公益社団法人土木学会(池内幸司会長)は、2025年度「インフラメンテナンス賞」の授賞対象を決定、2月26日に同学会講堂で表彰式を開いた。プロジェクト賞には、東日本高速道路株式会社 関東支社らの「供用中の高速道路におけるU型土留めを利用したインバート急速施工」など6件、チャレンジ賞には株式会社IHIインフラシステムの「水門維持管理の高度化を目指す人材育成拠点の整備と運用」など13件、エキスパート賞7件、マイスター賞5件、優秀論文賞7編を選定した。
土木学会では、2021年度よりインフラメンテナンス総合委員会で「インフラメンテナンス分野の表彰制度」を創設。この表彰制度は、インフラメンテナンス分野に特化し、インフラメンテナンスに関連する優れたプロジェクト(事業)、人・団体(技術者、オペレーター、管理者など)、個別要素技術(点検・診断、施工方法、材料など)や論文(実践的研究)を評価し、共有することでメンテナンス関係者のインセンティブを高めるものだ。
2025年度も日本全国から多数の応募が寄せられ、今回で5回目。厳正な選考を経て各賞を決めた。プロジェクト賞とチャレンジ賞の受賞者と内容は次のとおり。
昨年度の受賞作品
インフラメンテナンス プロジェクト賞(6件)
・供用中の高速道路におけるU型土留めを利用したインバート急速施工
供用中の高速道路におけるU型土留めを利用したインバート急速施工
(プロジェクト主体)東日本高速道路 関東支社、三井住友建設・佐田建設 特定建設工事共同企業体、国立研究開発法人土木研究所
(受賞理由)供用中の高速道路におけるインバートを追加施工する工事において「クイックre インバート工法」を初めて適用した。U型土留めをインバート本体に使用し従来の親杭横矢板工法を省略することにより、交通災害リスク低減や施工日数の短縮を実現し、安全性と効率性が確保できる新たなトンネル維持管理の施工方法を実証した。
・高強度繊維補強セメント系複合材料VFCを用いた高速道路のリニューアル-岡谷高架橋改良工事-
高強度繊維補強セメント系複合材料VFCを用いた高速道路のリニューアル-岡谷高架橋改良工事-
(プロジェクト主体)中日本高速道路、鹿島建設
(受賞理由)長野自動車道岡谷高架橋の改良工事において、高強度繊維補強セメント系複合材料VFCを活用した床版打替えと耐震補強により、構造物の耐久性・安全性を飛躍的に向上させた。通行止めを伴わない施工により交通影響を最小限に抑え、地域の経済活動の維持発展や利用者の安全確保に大きく貢献した。
・東海道新幹線第二上飯田原こ線橋他1補修・補強工事
東海道新幹線第二上飯田原こ線橋他1補修・補強工事
(プロジェクト主体)横浜市道路局建設部橋梁課、東海旅客鉄道 建設工事部土木工事課
(受賞理由)横浜市内の東海道新幹線に架かるこ線橋(2か所)について、経年劣化の進行による損傷や道路荷重の引上げにより補修・補強を行う工事を行った。新幹線の運行終了後、毎夜、線路内やのり面へ仮設足場を設置して行う作業であり、約1,400回の夜間作業を7年5ヶ月という長期にわたり施工を行い、無事故・無災害で完遂した。
・ソーシャルロスを最小化する新しい施工システムを用いた道路橋床版取替リニューアルプロジェクト-広島自動車道伴高架橋(上り線)床版取替工事-
ソーシャルロスを最小化する新しい施工システムを用いた道路橋床版取替リニューアルプロジェクト-広島自動車道伴高架橋(上り線)床版取替工事-
(プロジェクト主体)西日本高速道路、鹿島建設
(受賞理由)広島自動車道伴高架橋(上り線)床版取替工事において、交通規制による渋滞や経済損失(ソーシャルロス)を最小限に抑えるため、1車線ずつ規制を行う方式(幅員方向分割取替)や移動式施工機械を活用した新しい施工システムを実工事で初めて導入し、床版取替期間を大幅に短縮するとともに、施工効率・安全性・経済性の向上も同時に実現した。
・超高強度繊維補強コンクリートを用いた床版架替え工事について
超高強度繊維補強コンクリートを用いた床版架替え工事について
(プロジェクト主体)国土交通省中部地方整備局飯田国道事務所
(受賞理由)超高強度繊維補強コンクリートを用いた床版技術は、「国土交通省 道路技術懇談会」において新技術導入促進計画に位置付けられており、その利用促進を目的として「道路橋の繊維補強コンクリート床版の性能確認マニュアル(案)」が策定されている。今回、長野県内の国道にて試行工事を行い、マニュアルの適用性を実証検証した。
・供用中の高速道路で初となる切土構造を門型カルバートによるトンネル構造へ転換する地すべり変状対策の先進的取り組み
供用中の高速道路で初となる切土構造を門型カルバートによるトンネル構造へ転換する地すべり変状対策の先進的取り組み
(プロジェクト主体)東日本高速道路 関東支社、フジタ・エム・エムブリッジ 特定工事共同企業体)
(受賞理由)上信越自動車道・蓬平地区では、建設時ののり面崩壊や供用後の継続的な変位により、抜本的な地すべり対策が求められていた。そこで、交通への影響を最小限に抑えながら、供用中の高速道路として初めて、道路上に門型カルバート構造を構築し、その上に押え盛土を施すことで切土構造をトンネル化し、地すべりの安定化を実現した。
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インフラメンテナンス チャレンジ賞(13件)
・みんなでぬりかえ、未来へつなぐ安心の橋~プロジェクト1184~
みんなでぬりかえ、未来へつなぐ安心の橋~プロジェクト1184~
(取組み主体者)岐阜県七宗町
(受賞理由)町が管理する橋梁の維持管理について、住民、特に次世代を担う地元小学生のインフラへの関心を高めてもらうことを目的に地域参加型の橋梁塗装プロジェクトを実施した。従来の啓発活動を越え、町の橋梁の現状や土木の役割を学ぶ座学に加え、実際の橋梁を教材とした体験を組み合わせた「住民参画型インフラ維持管理モデル」を実現した。
・点検合理化によるコスト縮減および橋梁メンテナンス体制の強化(高岡モデル)
点検合理化によるコスト縮減および橋梁メンテナンス体制の強化(高岡モデル)
(取組み主体者)高岡市、横浜国立大学、NiX JAPAN
(受賞理由)「高岡モデル」は、産官学共同研究により得られた独自の橋梁維持管理モデルであり、点検対象を重要変状に限定した合理的な点検基準を作成することで、品質を確保しつつ点検費用縮減による修繕の加速化を可能としたものである。今回、実点検に導入しコストダウンや地元企業の技術力向上等につなげ、持続可能な橋梁メンテナンス体制の強化を実現した。
・土木業界で働こう!工業系高校生スキルアップ授業
土木業界で働こう!工業系高校生スキルアップ授業
(取組み主体者)高岡市、高岡工芸高等学校土木環境科
(受賞理由)地域インフラの維持管理や災害対応を担う若い技術者の確保を目的に、土木を専攻する工業系高校生を対象とした“市民生活を支え、暮らしの安全を守る土木”の重要性と魅力を学ぶ「スキルアップ授業」を展開することで、卒業後の進路として建設業界への進学・就職を促すとともに、職員の確保及び業界の発展と活性化に貢献した。
・AI劣化予測と非開削工法を活用したガス導管の戦略的アセットマネジメントの実現
AI劣化予測と非開削工法を活用したガス導管の戦略的アセットマネジメントの実現
(取組み主体者)東邦ガスネットワーク
(受賞理由)AI を活用した科学的根拠に基づく劣化予測による更新計画の高度化と高難度管路の非開削入替を可能とした工法開発を連携させ、従来は分断されがちであった管路更新プロセスをデータに基づき一貫して実施する高度な維持管理プロセスを確立し、予防保全型の持続可能なガス導管アセットマネジメント体系を確立した。
・鉄道構造物の状態を遠隔でモニタリングするシステム(ReMoSys)の開発と導入
鉄道構造物の状態を遠隔でモニタリングするシステム(ReMoSys)の開発と導入
(取組み主体者)JR東日本コンサルタンツ、東日本旅客鉄道、ソナス、しなの鉄道
(受賞理由)鉄道橋りょうなど様々な構造物の状態をセンサ1台で遠隔監視できるシステムを開発した。電池駆動の省電力無線加速度センサを活用し、目的に応じた多様な解析処理をクラウド上で行うことにより、高頻度な監視を可能 にした。供用中の構造物で実際に全国で多数導入され、現場作業の省力化や分 析評価の高度化に寄与している。
・「水門アクアリウム」市民参加で社会インフラとまちを守る
「水門アクアリウム」市民参加で社会インフラとまちを守る
(取組み主体者)IHIインフラシステム
(受賞理由)ゲーミフィケーションを活用したスマートフォンアプリ「水門アクアリウム」を通じて市民が楽しみながら水門の保全活動に参加できる取組みを行った。2024年12月には千葉県香取市で実証試験を開催し、地域の方々が「水門設備」の簡易目視点検を楽しみながら、社会インフラの重要性の理解を醸成することにつながり、市民参加によるインフラ維持管理の促進に貢献した。
・水門維持管理の高度化を目指す人材育成拠点の整備と運用
水門維持管理の高度化を目指す人材育成拠点の整備と運用
(取組み主体者)IHIインフラシステム
(受賞理由)IHIインフラ建設は、水門の点検・整備・運用に携わる維持管理技術者の育成を目指した日本初の体験型研修施設である防災・水門技術研修所を設立し、自社に限らず官公庁や公共機関の技術者なども研修対象に広げ、水門の維持管理分野全体の技術レベル向上を実現するとともに持続可能な人材育成の仕組みを提供した。
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・ゲームエンジンを活用した損傷情報の3次元記録に向けた取組
ゲームエンジンを活用した損傷情報の3次元記録に向けた取組
(取組み主体者)静岡市建設局、エイト日本技術開発
(受賞理由)橋梁点検において、点検結果の記録は依然として紙データであることが多く、記録の効率化・高度化が課題であった。その課題に対し、ゲームエンジン活用によりドローン撮影画像から3次元モデルを作成し点検結果(損傷情報)を記録する「3次元記録」を作成することで、記録の効率化・高度化を実現し、メンテナンスの充実化と新3K推進に寄与した。
・新幹線モニタリング車による線路設備の「スマートメンテナンス」
新幹線モニタリング車による線路設備の「スマートメンテナンス」
(取組み主体者)東日本旅客鉄道、日本線路技術
(受賞理由)新幹線の保守業務において、レール内部の傷等の状態やまくらぎ等の状態を点検・検査する2種類のモニタリング車による検測体制を構築した。それにより、線路設備状態に応じた補修を可能にするCBM(状態基準保全)と業務の省力化・効率化による働き方改革の両立を実現し、AIを活用した業務システムによる安全安定輸送のさらなるレベルアップを実現した。
・熊本城飯田丸五階櫓石垣復旧事業
熊本城飯田丸五階櫓石垣復旧事業
(取組み主体者)大林組
(受賞理由)熊本地震により崩壊した飯田丸五階櫓石垣の文化財的価値を保全するため、石垣背面の栗石は、人力による噛み合わせと突き固めによって復元する必要があった。そこで、栗石間の噛み合わせを阻害しないグリグリッド工法を開発・採用し、文化財的価値の損失を最小限にとどめ、効果的な耐震補強を実施した。
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・下水道における維持管理と情報システムの連携によるリスクマネジメントの実現
下水道における維持管理と情報システムの連携によるリスクマネジメントの実現
(取組み主体者)川崎市上下水道局
(受賞理由)下水道事業におけるアセットマネジメントの導入にあたり、それまでの点検・調査・修繕・改築などの業務プロセスを再構築し、健全度推移などの情報の蓄積等からリスク値を評価し、将来予測による事業費確保や改築優先度判断などを行うことで、施設の状態監視による予防保全型の維持管理を推進した。
・地域との協働によるガタ土撤去
地域との協働によるガタ土撤去
(取組み主体者)福岡県南筑後県土整備事務所
(受賞理由)有明海沿岸に流入する河川は、有明海特有のガタ土(微粒子の土砂)の堆積が顕著であり、掘削による河道断面確保は維持管理上必要な流域治水の1つである。一方、周辺は漁業・農業が盛んな地域であり、地域共生を実現する持続可能な維持管理が課題であったが、利害関係者との合意形成を踏まえ、農業用水の先行排水と合わせたガタ土撤去により地域との協働を実現した。
・AI×スポーツカメラによる新たな下水道管内調査
AI×スポーツカメラによる新たな下水道管内調査
(取組み主体者)京都市上下水道局、パシフィックコンサルタンツ、Rist
(受賞理由)下水道管路調査において、膨大な調査延長・コスト等の課題を解決するため、高画質管口カメラ調査とAI 画像判定技術を組み合わせる手法を開発した。具体的には、現場での撮影品質を確保する「管内画像良否判定ツール」と劣化度を定量的に評価する「管内劣化判定ツール」の2種類のAI ツールにより、管路内調査の効率化を実現した。
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