生コン業界の厄介モノ「戻りコン」「残コン」
生コン打設時において施工者側が気をつけなければならないことの一つとして、生コンの数量計算が挙げられます。設計の時点で、ある程度、生コンの数量をはじき出したり、打設しながら数量計算をしてはいますが、型枠内の鉄筋量や生コンの状態によっては、どうしても事前の計画と誤差が生じてしまいます。
最後の最後で「足りない!」という状況にならないように、多少多めに発注するので、どうしても余ってしまうのも事実です。
また、生コンの受入検査で不合格となり打ち込むことができなかったり、発注はしたものの少しも荷下しせずに余ってしまい、丸々1台分(時にはそれ以上)を工場にそのまま持ち帰ることもあります。
このように、多かれ少なかれ必ずと言っていいほど現場から戻ってくる生コンがあり、多くの生コン工場ではこの戻ってくる生コンの処理に困ってしまいます。これが「戻りコン」や「残コン」と呼ばれており、コンクリート業界において解決すべき問題として長年議論されてきました。
施工者に生コン代と契約取消料を請求できる制度
近年関東では「発注したものの、アジテータ車から全く荷下ろしせず返品(契約取消し)する生コン」を戻りコンと定義し、その場合は施工者に生コン代と契約取消料を請求できる制度を定め、有償化を進めています。
つまり、ペナルティを課すことで、戻りコンの発生を抑制しようという試みです。
これはコンクリート業界として画期的な制度でしたが、「本当は全く荷下ろしの必要はないが、ほんの少し荷下ろしをすることで取消料の発生を逃れる」という逃げ道もあるなど、課題も残っているのも現実のようです。
生コン工場の「戻りコン」「残コン」処理方法
もちろん予定数量ピッタリで生コンを余らせることなく使い切ることができれば問題になりませんが、このように余って戻って来た生コンを工場側はどう処理をしているのか、というのは生コン工場関係者以外はなかなか見えない部分だと思います。工場によっても処理方法は異なりますが、大きく分けて2つの方法が一般的です。
1つは、2次製品用のコンクリートとして再利用する方法です。特に重さが1トン以上の大型コンクリートブロックは土木など様々な現場で使用されます。ですので、工場に戻って来た生コンを型枠に流し込んで2次製品を製造して販売するのです。廃棄するものを再利用するので非常にコスト効率も良いのですが、生コン専業の工場では行っていませんし、型枠の掃除などの管理の必要性も出てくるので大変です。
2つ目は、工場の敷地内に薄く敷き、翌日固まった後に破砕をし、コンクリートガラとして廃棄する方法です。これは馬鹿にはできないほどの廃棄料が発生しますし、破砕時には騒音や粉塵等の発生するという問題もあります。
また一昔前まで横行していた禁じ手として、戻りコンに水や混和剤を加えて再度出荷をするということがあります。これは明らかに違反行為なので、今は多くの場合は行われていないですが、未だこのような行為をしている工場が実在するのも現実です。
生コン業界発展には現場サイドの協力が不可欠
このように戻りコン・残コンというのは工場にとって非常に厄介モノではありますが、最近ではコンクリートブロックとは違う形での再資源化に成功している工場も出てきているようです。
戻りコンに、ある混和材を投入しアジテータ車などで撹拌すると、ドロドロだった生コンが粒径の丸い骨材に改質されるというものです。これを骨材そのものとして販売したり、もう一度生コン用の骨材として再利用するなど、これまでとは違ったアプローチで処理を実現しています。
生コン工場から出る廃棄物を少しでも減らし、ゼロエミッションを実現することは、コンクリート業界の発展のためにも社会のためにも必要なことだと思います。しかしそれは生コン工場サイドの努力だけではなく、現場サイドの理解や協力も必要なのです。