別業務の点検調書をそのまま転用、指名停止に
昨年末のことだが、大手建設コンサルタント会社の応用地質が指名停止措置を受けた。その理由は、点検業務における調書の転用である。別の点検業務で作成した点検調書を、そのまま転用して成果品として提出したのだ。
この話を聞いたときは、驚いた。そのまま転用して成果とするなど、ありえないからだ。というより、そのまま転用して成果にしようという発想が無かった。成果品を偽造とまではないかなくてもそれに近い所業だし、悪質だし、いずれ分かることである。
先月22日に掲載されていた日経クロステックの記事(定期点検で前回調書を丸写し、応用地質を3カ月の指名停止)で、詳しい内容を見てみると、点検箇所がかなりたくさんあることが分かる。ボックスカルバートなどの構造物の他、法面も100か所以上が対象となっている。自社だけで遂行するのは難しい。下請け会社の協力を得なければ、工期内にこれだけの数の点検を実施することはできないだろう。
下請け会社を確保できなかったことが原因
日経クロステックの記事によると、原因の一つとして、下請け会社を確保できなかったことが掲載されている。新型コロナウイルス感染拡大による、業務の中止の影響もあったようだ。
工事では、中止に伴い下請け会社が現場を離れ、別の現場に従事して戻ってこなくなるのではないかという懸念があった。実際にそういった現場もあったのかもしれない。同じことが、点検業務でも起きていた可能性はある。
もし、新型コロナウイルス感染拡大による業務の一時停止が影響しているとしたら、そのことを発注者と協議し、善後策を検討することとなるはずだ。もちろん工期延期も視野に入れ、協議を行うこととなるだろう。点検業務に限らず、設計や測量といった建設コンサルタント業務では、一時中止に伴い工期を伸ばしたケースが複数あった。工事においても同様の措置が取られていたはずだ。
当初、確保できる見込みだった下請け会社が確保できないのであれば、そのことを発注者と協議して、方針をすり合わせておけばよかった。しかし、応用地質の担当者はそれをせず、自らはしごを使って目視で点検し、調書を別業務のものと同じとしていたのである。言い方が適切ではないかもしれないが、自分勝手に判断し、自分勝手に動いていたのだ。
点検業務に限らず、同様のことは今後も起こりうる
建設業界は今、慢性的な人員不足だ。とはいえ、今に始まったことではなく、各社とも様々な対策を打っているものの、なかなか効果が出ていないのが実情だろう。建設業界内で人の奪い合いとなっている。
同じようなことは、今後も起こりうる。もしかすると、すでに起こっているのかもしれない。たとえば、工事における検査書類を使いまわしたり、設計業務で報告書を転用したり、などといったことが起きている可能性はある。
誰しも最初は、そんなことをしようという気はさらさらなく、真摯に業務に臨んでいたけれども、人手が足りず、工期に間に合いそうになく、(本人からしたら)やむなくそんなことをしてしまったのかもしれない。
しかし、それは言い訳にすらならない。人員不足で工期に間に合わないなど、業務遂行に支障が生じる場合は、発注者と協議して対策を検討することだ。もしかすると、発注者より別の協力会社を紹介してもらえるかもしれないし、何かしらヒントが得られる可能性だってある。
業務を遂行していくうえでは、人員不足による障害を想定することも必要だろう。
建設コンサルの本性が表れた事例ですな。
能力ない、浅はか、その場凌ぎ。
恥ずかしい業界です。