「日本人は外国人を差別しすぎ!」海外進出するゼネコンの傲慢さとは?

外国人を差別をする日本人技術者が多い

海外の建築案件に長年従事してきた私には、とても気になっていることが一つあります。

それは「外国人を差別をする日本人技術者がとても多い!」ということです。特に海外での建設現場の経験が、アジアの国だけの人にこの傾向が多く見受けられます。意外な事かもしれませんが、非常に残念で悲しい事実です。

多くの技術者が半ば無意識に差別をしているようですが、現地の人間は敏感です。現場の作業員のみならず、雇い入れた事務員やCADオペも、日本人からの差別を感じて不満を抱えています。

総体的に日本人が優秀なことは、海外でも認められています。何より物事をちゃんとやろうとする意識が高い。それなのに「日本人はなぜ、あんな事を言うんだ?」という不満や疑問を、現地スタッフから随分聞きます。

海外の現場に赴任する技術者は、その辺をちゃんと理解してから行かないと、単なる頭でっかちの先進国の人間で終わってしまいます。頭の中で差別はいけないと分かっていても、実際に会うと反射的に差別してしまうことほど悲しい事はありません。

海外進出した日本のゼネコンは努力を怠った?

たしかに建築の専門的な知識に関しては、日本の技術者は世界のトップを争うでしょう。しかし、冷静に考えれば、その自信は日本の中で決めたルールの中でのみ成り立っていることに、そろそろ気付くべきでしょう。

海外に行けば、その国の決まりがあり、事実も規則も違いますが、日本のゼネコンは海外でも、そのほとんどが日本の規則で工事を進めます。「日本は他のどこの国よりも厳しい規定なんだからいいだろう」という理屈です。確かにその通りですが、その安易な考えが今、暗礁に乗り上げています。

自動車、電気、食品などの日本企業は、海外進出するために調査を行い、他国民のニーズを探ろうとやっきになりますが、建設業界はその努力を怠ってきました。日本の企業が海外で工場を建てる場合、日本での繋がりから日本のゼネコンが頼りにされてきたのです。しかし、その受注が頭打ちになった今、ゼネコン各社は何とか地元の建設業に食い込もうと考えています。が、殿様商売の「上から目線」では、一向に商売に結び付かない!

その国の基準を元にした最低価格の把握さえ出来ない!ましてや、生活習慣から派生する設計そのものの対応が出来ないし、説得も出来ない。建築の設計の答えは一つじゃなく、設計者の考えが反映されるため、ありとあらゆる手段を使って、施主を納得させ「GOサイン」を貰ってから、仕事に取り掛かるわけですが、それまでには様々な要素が必要になってきます。

日本の本社で全部コントロール出来るはずもなく、現地の人間を育てることを怠ってきたツケが一気にまわって来た・・・外国の建築現場でずっと働いていると、そういう感じがしてなりません。


日本で施工するかのごとき傲慢な工程表

それは工程表の作り方をみれば、一目瞭然です。工程作成には、建物の基本的な工事期間はもちろん、その国独自の事情から始まって、気候(雨季等の把握)や宗教的な祭日や祭典(イスラムのラマダン等)を含め、現地のサブコンの技量、現地作業員の技量が内包されなければなりません。

日本で作った、日本で施工するかのごとき工程表は、現地の様々な事情が一切考慮されてないのが一般的です。それなのに、日本にいる人たちは「現地は一体何やってんだ!工程に乗せろ!」などと平然と言って来ます。もう少し現地の状況を理解し、事情を踏まえた工程を組んで欲しいものです。

東南アジアに行けば、建築関係者ならば誰しも、その現地メンバーの細さに驚き、「こんなんで大丈夫なんだろうか?」と笑いながら言いますが、その笑いの裏側の傲慢な考えに、そろそろ気づくべきでしょう。

図面と調達にみる建設コンサルの課題

図面と調達についてもそうです。

民間の仕事ならいざ知らず、海外のODAともなれば、図面に記載された材料の調達の是非も絡み、大いなる混乱を招いています。材料調達に関して、建設する国の事情を調査するのは容易ではありません。

様々な基準をクリアし、図面通りの仕様で仕上げるのは簡単ではないため、当然、多くの材料を日本から手配することが多くなります。そのための余裕をJICAはみてはいますが、それを監理するコンサルの質にまでは配慮が及んでいません。

コンサルの多くは、確かに日本で言えば優秀な人が多いです。学者並みの知識を持ってる人もいれば、大学の先生や政府の出先機関で監理の仕事をしてきた人も多いです。しかし、例外なく現場の事情を汲める人は、ほとんどいません。

確かに、いちいち現場の事情に合わせていては、監理なんか出来ませんし、「図面通りに出来ない方が悪い!」という言い分は一理あります。しかし、私は何も温情で検査を甘くせよとか、大目に見て欲しいと言ってる訳ではありません。

一番問題なのは、現場に関わる人間の気持ちが分からないところにあります。理屈や知識だけでは、誰もついてこないと言うことです。

採算と現場の力だけが増大したゼネコン

どんなに科学が進歩しようと、図面はせいぜい手書きからCADに変わったくらいで、人間が書くことには変わりがありません。

図面がなければ工事は始まりませんが、最近は施工図以前の、建築図そのものさえ出来ていない場合が多過ぎます。時間が迫り、建築図の直しが間に合わず、見切り発車での施工がほとんどです。

現在の建設業は、設計の意味を解いて人材を育成するなど、会社を背負っていく屋台骨の構築をないがしろにした結果、採算と現場の力だけが増大し、もはやペダルを止めて考え直す余裕さえないようです。

こうした日本の建設業に危機感を抱いているのは、私だけではないはずです。

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工学部建築学科卒業後、A建築設計事務所に入所。その後、自ら設計事務所を立ち上げるが、設計だけでは良い建築は出来ないと判断し、施工会社に入社。それ以後、現場中心の仕事している。 設計事務所時代から海外案件が多く、現在も海外の案件に関わる事が多い。地球の上を這いずり回っているという感アリ。設計と施工に関わる年数が半々。 海外の建築現場の実態を中心に経験談を共有します。
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