設備屋やサブコンに丸投げする建築技術者
建築現場で働いていると、同じ建設業界であっても「異業種」の人と一緒に仕事をしているような感覚になることがあります。たとえば、「建築系」の技術者のみなさんは、「設備屋さん」のことを何となく「異業種」に感じることがありませんか?
もしも、「全然感じない!」「むしろ一緒に仕事をする仲間だ!」と感じているのであれば、それは素晴らしい!
しかし、現実は「設備屋さん」の仕事内容を理解しようとせずに、「サブコンさん」や「設備課の職員」に丸投げする建築技術者が多いような気がします。特に、官庁工事では別途工事となるため、普段よりも「異業種」感は強いかも知れません。
実際、私の会社(ゼネコン)の建築技術者たちや、他社の人たちと話していても、設備屋さんについては「別途」という感覚を強く持っている人は相変わらず多いです。
各専門工事の人たちとの接し方もそうです。専門工事の範疇の突っ込んだ専門的な内容の議論については、最初から第三者的な態度の技術者もいますよね?
ゼネコンの建築技術者にとって「プラント屋」は異業種?
もう10年近く前の事です。私は某清掃工場の改修工事の現場(全工程7日間の小さな工事)に配属されました。
その清掃工場の工事には、建築の現場監督として配属されたのですが、「元請」としてではなく、「一次下請」としての配属でした。
というのも、清掃工場の現場を経験された人であればお分かりでしょうが、清掃工場の現場は、焼却炉などを扱う「プラント屋さん」の下請で仕事することが多いからです。
その改修工事の中で、50mmのALCパネルを張る工事がありました。そこで一応、元請けの監督さんにも材料の確認をしてもらおうと声をかけた時、今までは自分の中で当たり前としか考えていなかったものが違うことに気付かされました。
材料検収におけるゼネコンとプラント屋の違い
ALC材の搬入当日。2tトラックに載せられた20枚程度のALC材が運ばれてきました。
その現場では、ALC材を2ヶ所に分けて荷下ろしするので、とりあえず現場事務所の前のスペースにトラックを停めて、私が荷台に上がりました。
各寸法を測って仕様通りであることを伝えて、元請けの監督さんに写真に入ってもらおうとお願いしたときに、こう言われたのです。
「材料を荷台からおろさないの?」
私はとっさに、こう答えました。
「建築ではおろさない事も多いです」
建築の現場では、材料を荷おろしするということは「材料検収で合格した材料」であることを意味するからです。だから、鉄筋や杭などの重量物の材料検収では、大型トラックに材料を載せたままで写真を撮るのが常識だと思っていました。
しかし、プラント屋さんの考えは違ってました。機械類などの材料について車上で材料検収を行うと、写真を撮影した後、現場におろさずに持って帰られてしまう可能性があるそうです。なので、クレーンなどを使って車上からおろしてから材料検収をするのがプラント屋さんのやり方だと言うのです。
結局、元請けの監督さんの要望通りにALCを一旦車からおろして写真を撮ることにしたのですが、私にしてみれば余計な労力だったことは言うまでもありません。
まさにプラント屋さんを「異業種」だと感じた瞬間でした。
建築の知識を「広く」「深く」習得するのは無理?
プラント屋さんの一次下請けとして建設会社が入ることは、清掃工場などの工場系でしばしばあります。ですが、会社によっては、自分はプラント屋さんとは一切関係ないと感じている建築技術者も多いでしょう。
しかしながら、自分とはフィールドの違う「異業種」の人たちと話すことは、新しい発見を得るチャンスでもあります。自分が知らなかった知識に気付かされることも多いので、単調な毎日では飽き飽きしてしまう私にとっては刺激的な瞬間です。
昔、先輩からは、とりあえず「広く浅く」知識を習得して、それから少しずつ「深く」知識を習得するようにと言われました。しかし、建築にまつわる知識は「広く」「深く」習得しようとすると、とても膨大で、まるで大海原にボートで漕ぎ出るくらい果てしないもので、全ての理解は不可能だと諦めてます。
でも、建築現場で現場管理の仕事をしていると、本当に膨大な知識が必要だと日々実感しますので、少しでも「広く」「深く」知識を得るための努力はしていきたいと考えています。
みなさんはいかがでしょうか?