足場のレベルを確認するのは当たり前?
ある程度の高さがある足場を組み立てる時は、レベルで1段目の高さを見る事がほとんどだと思います。私も20代でゼネコンに入社以降、何の疑問もなく、1段目をレベルで確認することが当たり前という認識を持つようになりました。
しかし、一度も失敗した経験がないため、レベルを適当に見ながら足場を組み立てた場合に、どのような結末が待っているのか、という重要性は理解していませんでした。
つまり、諸先輩方が試行錯誤の上に導きだした「正解」しか知らないということは、「失敗の怖さ」を知らないということなのです。しかし、なかなか失敗する機会ってないですよね。
ところが・・・
水平器で足場の水平を確認すると、どうなる?
数年前、私が現場監督を担当していた建築現場で、いつもと違う風景を目にしました。鳶さんが足場を組み立て始めた際、いつもならレベルを用いて足場の1段目の高さを見るはずが、水平器で簡単に足場の水平を確認しているだけだったのです。
そこで私は「レベルで足場の状態を確認しないの?」と、鳶の職長さんに尋ねました。すると、「いや、これで十分です」と自信満々に答えてきました。私は内心ちょっと怪しいなと感じながらも、工期に余裕があったので、鳶の職長さんの意見に乗ってみることにしました。なぜなら、「いつもと違うやり方をした時に、どのような結果になるか」を試してみたかったからです(笑)。
足場の1段目でレベルを見なかったツケ
それから数ヶ月後、足場は段々高くなり、ついに30m近くになりました。すると、いつものように足場を組んでいるはずの鳶さんのペースが停滞気味になっていることに気が付きました。「どうしたの?」と近くにいた若い鳶さんに問うと、「いや~、筋交や布板が入りにくくて、何だかレベルが合っていない気がするんですよね~」。
私はすぐに、ピン!と来ました(笑)。結局、足場の1段目でしっかりレベルを見ていなかったツケが回ってきたのです。もしかすると、足場が5段くらいであれば、水平器でも良かったのかもしれません。しかし、20段くらいになってくると、1段目の「小さな誤差」が積み重なっていき、見過ごせないくらい大きな誤差にまで発展したのです。
鳶さんには申し訳ないですが、「だから、足場の1段目はしっかりレベルで確認するんだな」と私にとっては、たいへん教訓になった出来事でした。
失敗を知ることで理解が深まる「足場のレベル確認」
足場の足元のレベルをしっかり見ずに組んだ足場は、上階に行くほど、少しずつズレが生じて組み立てが困難になる。だから、足場の足元のレベルを確認することは、スムーズに安全な足場を組み立てる上で非常に重要なポイントなのです。
・・・新しい知識を得た時は、「成功事例」の裏に隠されている「失敗事例」を知ることで何倍も理解が深まります。しかし、9割の技術者は「他人の失敗」を「他人事」のままにしています。もし、他人の失敗を「自分の財産」に出来れば、必ず技術者としての差別化が出来ると私は確信しています。
そういう意味でも、この「施工の神様」で、失敗も含めた建設現場での体験談を「共有・蓄積」することは、みなさんが同じ失敗をする確率を圧倒的に減少させるためにも大切です。だから失敗談は、こちらにドシドシ投稿しましょう。