監督職員に「だっから、なんでわかれへんのですかっ!」とキレちゃった

監督職員に「だっから、なんでわかれへんのですかっ!」とキレちゃった…

工事成績優秀企業の認定を受けた西田工業の土木技術者たち

西田工業株式会社(本社・京都府福知山市)は、25名の土木技術者を抱え、福知山市内を中心に、社会インフラの整備を手掛けています。その技術力は発注者から高い評価を得ており、国土交通省近畿地方整備局から平成29年度の工事成績優秀企業の認定を受けました。

今回は、福井富士男・土木事業本部工事部長と、宮村徹・工事主任のお二人に、それぞれのキャリアなどについて聞きました。

前回のインタビューに引き続き、西田泰晤社長、西田吉宏副社長にも話に加わっていただきました。

西田工業株式会社 福井富士男・土木事業本部工事部長

西田工業株式会社 宮村徹・土木事業本部工事主任

JR西日本の「厳格さ」に苦しめられる

――これまでのキャリアを教えてください。

福井 私は兵庫県城崎の生まれで、地元の工業高校で土木を学んだ後、西田工業に就職しました。入社して33年になります。入社以来、ずっと福知山で土木現場の仕事をしてきましたが、ここ2、3年は社員の指導や社内検査、積算業務などの現場以外の仕事を担当しています。

宮村 私は熊本出身で、工業高校の土木科を卒業後、西田工業に入りました。今年で13年目です。

――これまで手掛けた仕事は?

福井 大きな仕事としては、15年ぐらい前に着工したJR福知山線の高架工事があります。10年の工期のうち、監理技術者として、6年間工事に携わりました。JRの在来線が動いている真横の現場でしたので、一歩間違えれば、すぐに電車が止まってしまう状況での工事でした。毎日がそのプレッシャーとの闘いでしたね。

――大変だったことは?

福井 その当時、JR西日本さんが非破壊検査を採用し始めたころです。非破壊検査とは、今で言う鉄筋探査、RCレーダーです。このレーダーを使えば、コンクリートを打った後でも、レーダーで内部を検査できるわけです。毎月1回、JR西日本さんの品質パトロールというものがあって、4名のパトロール員が現場の隅々まで「厳格な」チェックをされます。とにかくいろんな指摘を受けるわけです。指摘された問題に対して、ちゃんと回答や改善をしないと、次の工程に入れません。品質管理にはものすごく気を使いました。やり直しもたくさんやりました。

JR高架橋の夜間架設作業の様子(当時)

――JR西日本の品質管理は、ほかの発注者と比べても厳しいんですか?

福井 厳しいです。他の発注者とは全然違いますね。JR西日本さんは、独自の品質マニュアルを持っています。そこで定められた品質をクリアしないと、次の工程に進めないことになっていて、その品質マニュアルが、ほかの発注者より、はるかに厳しいんです。

――JR西日本の仕事の達成感は大きい?

福井 大きいですね。高架構造物は、永久構造物としての品質が重要視され、それを目指して職員や作業従事者が苦労して造り上げた構造物なので、それを完成させることの達成感は非常に大きいです。

――コンクリートの品質検査一つとっても違う?

福井 それはもう、厳しい検査があります。コンクリートの水セメント比が一番厳しいです。

とんでもない変更、追加があった国発注工事

――宮村さんが大変だった現場は?

宮村 国発注の工事で、5年くらい前に、由良川で築堤をつくりながら、それを乗り越す道路を同時につくる現場に、現場技術員として携わりました。金額の割には、工期が短い工事で、工期に間に合うかどうかギリギリの闘いでした。朝早く現場に出て、ちょうど出たての自動追尾の機材を使って、夜遅くまでずっと丁張りかけたり、写真を撮ったりしていました。

――工期が短いというのは?

宮村 通常であれば、半年は欲しい現場でしたが、4ヶ月ほどの工期でした。

福井 地元から「早く堤防をつくれ」と要望を受けて、工期的に短くなったんです。

宮村 国も焦っていたんでしょう。とんでもない変更、追加がありました。

――堤防と道路を一緒につくる難しさは?

宮村 やはりイビツな線形になるので、設計に対するその辺の管理は苦労しました。図面に全て載っているわけではないので、現況に合わせることがありました。その辺は、おもしろかったですけど。

マンションの位置がズレて、2000万円の大損

――土木の仕事の魅力、大変さは?

福井 土木の仕事では、うっかり失敗することがあるわけですが、それを上司に隠す、軽く考えることによって、本来は1万円の手直しで済むものが、100万円もの大きな手直しになってしまった、という経験があります。失敗したときに、「早く上司に相談しておけば良かったなあ」と後悔しました。入社5年目ぐらいの話です。これ以降、「早く芽を摘む」ことの重要さを強く感じるようになりました。

――それは何の現場だったのですか?

福井 排水の構造物の高さを10cmほど間違えていたんです。それが仕上がって、これから舗装をやるとなった段階で、自分で高さが違うことに気づいたのですが、「大丈夫だろう」と思い込んで、上司にも相談しなかったわけです。

その後、「高さが違うやないか」ということになって、最初からやり直しです。舗装屋さんや土工屋さんにも迷惑をかけましたし、手直しのお金も大きくなりました。それからは、手間がかかっても、とにかくダブルチェックをすることにしました。自分のミスは周りに言いにくいんですが、あとで必ずバレますから、「隠蔽は絶対にダメだ」とつくづく思っています。

西田社長 そんなのはカワイイものです(笑)。35年ほど前、尼崎にあるマンションの建物の位置を間違えて、2000万円損したことがあります(笑)。マンションの柱の通り芯のところに、バルコニーの壁の芯を持ってきたために、1.2mほど位置がズレてしまいました。間違えたまま、杭も打って、鉄筋を組んで、型枠を組んで、「さあコンクリートを打つぞ」という段階で、「あれ?道路との間隔がおかしいで?」ということでチェックしたら、建物の位置が間違っていることが判明しました。

ーーワオ!

西田社長 「ワオ!」なんです(笑)。設計者と施主様には「なんとか、そのままいかせて欲しい」とお願いしたのですが、「道路の斜線制限に引っかかるので、設計図通りにやって欲しい」と言われました。仕方ないので、鉄筋をバラして、型枠をバラして、杭を打ち直して、もとの位置にやり直しました。工期的にも1ヶ月以上遅れが出たのですが、それを取り戻すため、突貫工事になりました。

西田工業では、「五つのしない」を標語にしています。それは「黙認しない」「妥協しない」「放置しない」「過信しない」「隠蔽しない」です。これらは、現場だけでなく、会社全体として、あらゆる場面で守るべき標語です。

西田工業の「五つの標語」


「意趣返し」で難癖つけられ、評価点数を下げられる

――宮村さん、土木の魅力などを。

宮村 いろいろな人と関われるのが土木の仕事の魅力ですね。業者さんや地域の人などとのふれあいの機会がすごく多いです。私は、道路工事の経験が多いのですが、「いつもご苦労さん」と声を掛けてもらったりしました。そういった経験を通して、コミュニケーション能力が身についてきたと感じています。

失敗はいっぱいしてきました。構造物の高さ間違いもしました。若いときは、あまりチェックをしていなかったからです。最近ですと、私が現場代理人をしていた舗装の維持修繕の現場で、発注者である監督職員さんと良い関係が築けなくて、すごく低い評価を受けたことがありました。現場の仕上がりとしては、自分としては最高の出来だったのですが、発注者の評価はすごく低かったです。いろいろと難癖をつけられて(笑)、すごく低い点数を付けられました。

――何点?

宮村 70点でした。

――監督職員さんとはどういうやりとりがあったのですか?

宮村 区画線の施工に際し、こういう手順でする必要があるという協議を監督職員さんに出したのですが、その職員さんは役所に入って1年目の方で、協議の内容がわからなかったんです。何度も説明したのですが、理解してもらえませんでした。今では、私の説明が悪かったと後悔していますが、何度も説明しているうちに、つい強い口調になってしまいました。

西田副社長 どんな口調?

宮村 「だっから、なんでわかれへんのですかっ!」みたいな(笑)。

「70点」を付けられた現場

――区画線の施工?

宮村 イボイボのある区画線の施工です。通常、普通の区画線の上にイボイボをつけるのですが、積算上はイボイボの部分しか計上されていません。そのことを説明したかったのですが、なかなか伝わらなかったんです。職員さんの経験不足と、施工手順があまり知られていなかったことが原因だと思います。

――職員さんは「なんでそんなことする必要があんの?」みたいな?

宮村 そうです。なぜこんなに低い点数なのか質問しましたが、「協議がうまくいかなかった」からとか、「交通渋滞が起こった」からという回答でした。

――多くを学べたのでは?

宮村 そうですね。それ以来、言葉使いには注意するようになりました(笑)。

「想像力ではなく、発想力を持った技術者」になりたい

――良い技術者とは?

福井 私は、「想像力ではなく、発想力を持った技術者」になりたいと考えてきました。想像力は、ぼんやりとしたものなので誰でもできますが、発想力は、現実に前に向かって進む力なので、誰にでもできることではないと考えるからです。ICTなどの新しい技術も、人から聞くだけではなく、実際に動かしてみて、自分のものにして発想するのが、良い技術者だと思います。

――若手の育成に関しては?

福井 西田工業では、土木に関しては「5年間で一人前にしよう」という考えで、人を育てています。「一人前」とは、一人で現場を持つ、品質、安全、工程、原価を一人で持てる人材という意味です。上司である本部長と私で、月に1回、新人社員と意見交換を行っています。

「どうや?現場うまいこといっとるか?」みたいな話し合いをしています。その中で、「今、この子病んどるで」といった情報を先輩社員などに伝えたりして、改善策を講じたりしています。20歳ぐらいの子は、私の子どもみたいな年齢なので、意識していないと、ついついコミュニケーションが不足しがちです。ふだんから、なるべく話しかけるようにしています。

宮村 私は、人とは違う視点で、ものがつくれたらという思いを持っています。ありきたりなことばかりやるのではなく、常に創意工夫して、ちょっと変わった視点でやれるようになりたいですね。下請けの業者さんに「宮村さんの現場ならぜひ行きたい」と言われるような、信頼される技術者になりたいですね。

――発注者に対してはどうですか?

宮村 (笑)。「これぐらいの変更工事をお願いできるかな?」とか、発注者から頼まれるような技術者を目指します。

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