「ダメな職長」と「優秀な職長」を見分ける、本質的な3つの方法

「ダメな職長」と「優秀な職長」を見分ける、本質的な3つの方法

「ダメな職長」と「優秀な職長」を見分ける、本質的な3つの方法

優秀な職長さんの見分け方

内装関係の施工管理に従事していた際、さまざまな業種の職長さんと仕事をさせてもらった。

彼らと一緒に仕事をしていると、建設現場ならではと言うべきか、「この人はすごいなあ」と感心する人と、「この人はダメだなあ」と呆れてしまう人の差が極端だった。

そこで私なりの、「優秀な職長さん」と「ダメな職長さん」の見分け方を紹介したい。

想像力のある職長と、そうでない職長

私は工場建設の内装関係の施工管理をしていたので、基礎と鉄骨、屋根が出来てから仕事が始まる。

そんな現場で、仕事ができる職長さんは、工事の「流れ」を想像している。たとえば、内装の職長さんと一緒に現場で打ち合わせをしていると、優秀な職長さんは、何もない所を見渡してから、工程表に指さしながらこう言うのである。

「この分だと、○○屋さん(前工程の業種)がこのぐらいは掛かるだろうから、ウチが入るのはこの3日後だろう」

それから3日後、予想は見事に的中。実際にその日から仕事が始まった。

一方、ダメな職長さんは、現場を見て工程表通りにしか動かない。工事前に現場を見ているのにも、状況判断もせず、工程通りにしか仕事をしない。

そして、いざ現場に来てから仕事ができない状態だと、他業種の遅れのせいにしたり、現場監督の責任にしたりする。この違いは経験の差だけではなく、想像力が欠けている職長さんに多い傾向がある。

建設現場は何もない場所に物を作るという仕事場である。そして、現場はそれぞれ違う。たとえ、同じ場所に同じ建物を作ったとしても、施工時の季節や天気、周辺の状況など全く違う。そういったことを自ら想像して行動できるかどうか、それが優秀な職長さんとそうでない職長さんの差である。

もちろん現場経験も大事だが、過去の経験だけに頼っている人は、「抜け」や「甘さ」が出てしまう。また、昔はOKだった施工が今ではNG、なんていう事例も実際に多い。

優秀な職長さんは、それぞれの現場の違いや状況の変化を頭に入れ、経験だけで考えずに、自ら想像して意味のある答えを出している。


自組の職人の性質を理解している職長と、していない職長

職長さんは自分の組の人間を振り分けるのも仕事だ。自組の持ち場をどの職人にさせるのか、また、どの職人とペアを組ませてやらせるか等々、適材適所に職人を配置して工事を進めなければいけない。仕事の早い遅い、丁寧や雑といった職人の能力も踏まえて配置しなければならない。

私の従事していた内装では、壁や間仕切りは仕事が早いだけの職人さんでも大丈夫だが、玄関や応接室といった人目につきやすく、建物の印象を強く与えてしまう場所ではそうはいかない。仕事が早いことに越したことはないが、場所によっては細やかな気配りと施工技術が要求される。

職長さんは、さまざまなタイプの職人たちをまとめているので、職人同士や現場の組み合わせを間違えると、余計なトラブルを引き起こしかねないし、施主や元請けに迷惑をかけて、工事遅延や施工不良を引き起こす心配もある。

そこで優秀な職長さんは、他の人には理解しづらい性格の職人でも、ちゃんとその人の性格を理解し、良い所を見つけている。クセのある職人さんばかりなので、コミュニケーション力にも長けている。

一方、仕事ができない職長さんは、人を外見だけで判断する。そして、自分が好きか嫌いかだけで判断しがちだ。性格や能力を見ずに仕事を采配しているので、工事の遅延や人間関係のトラブルをしょっちゅう起こす傾向がある。

仕事ができる優秀な職長さんは、職人さん一人ひとりとコミュニケーションを取り、能力を良く見て判断し、適材適所に人員を配置して工事を進めるのである。


家族を大事にする職長と、そうでない職長

仕事ができる職長さんは、毎日現場で大変な仕事していても、定時で帰れる時などはダラダラと休憩所には残っていない。さっさと翌日の段取りを済ませて、現場事務所に挨拶して帰っていく。

一方、仕事ができない職長さんは、いつまでも現場に残っている。現場事務所や休憩所で、監督と他愛もない話をし、仕事の話かと思えば、そんな話は明日でもいいだろうというようなムダ話をずっとしている。さらに次の日、何時まで現場に残っていたと自慢するかのように、自身の組の仲間に話している。

仕事ができる職長さんは、ほとんどの方々が家族を大切にしている。話をすると、息子と一緒にマラソン大会に出るとか、娘が彼氏を連れてくるとか、本当によく家族の話をしてくれる。早く帰って家族との団らんが毎日の激務の心と体の支えになっているのだろう。

しかし、仕事ができない職長さんは、ギャンブルや酒や女性の話などで、あまり家族の話を聞かない。いろいろな事情があるのだろうが、自分を大事にできない職長が人を使う立場にあって、大事に人を扱えるとは思えない。なので私は家族の話題を、職長さんを見極めるポイントの一つにしている。

仕事を終えたらさっさと家に帰って英気を養う。次の日から始まる大変な仕事に、心と身体を備える。仕事ができる職長さんは、本当の休息方法を知っているのである。

職長さんの見分け方

他にも仕事ができる職長さんの見分け方があるとは思うが、私の場合はこれら3つの基準で職長さんを見てきた。

この基準を満たす、ほとんどの職長さんは仕事に前向きで、会社にも協力的な人ばかり。職人としての腕はもちろん、現場と人を見る観察力を持っていた。

家族と家庭を大事にして、周りの仲間や自分も大切にする。こういった方々は、建設業界でなくとも、さまざまな業界の仕事でもリーダーシップを発揮される人だろうと思う。

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さまざまな仕事を経て、10年間ほど内装中心に建設業に従事。その間に2級建築施工管理技士の資格を取り、「さあこれから!」というところで勤務先の会社が経営悪化。断腸の思いで退職。これを機に「本当にやりたかった事」を考えるようになり、建設の道を選ばずに物書きの道を選ぶことに。「物書きに俺はなる!」の夢を今追いかけています。
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