施工能力審査型総合評価方式とは?
東京都の「施工能力審査型総合評価方式」には、いち施工業者として、大きな問題があると思っている。
施工能力審査型総合評価方式とは、中小規模の工事における「安定的な品質確保」と「不良不適格企業」の排除を目的とした評価方式。
入札価格に加えて、「過去の工事成績」「配置予定技術者の保有資格」および「配置予定技術者の実績」の3つの客観的な項目によって、企業の施工能力を簡易的に評価する。
この方法によって、立地や条件が特殊で、施工に影響を与える地域などにおいては、品質確保と不適格企業の排除が可能になるのだが、最近はどうも「落とし穴」があるように思えて仕方ない。
施工能力審査型の問題点
では、施工能力審査型総合評価方式のどこが問題なのか?
ずばり、「過去の工事成績」の部分である。
過去の工事成績とは簡潔に言うと、東京都発注の過去3年間のうち、直近3件が該当するのだが、東京都と言っても建設局、水道局、産業労働局など、さまざまな分野の公共工事がある。
これでは範囲が広すぎて、不良不適格企業とまではいかないが、仕事の減少などであまり得意分野ではない工事を落札する施工業者が出てきて、工事の品質低下を招く恐れがあると考える。
総合建設業の元請負会社として現場の経験がある技術者ならばわかると思うのだが、工事評定点の考え方はもちろんの事、実際に付く点数にも発注局によって乖離があるように感じる。
これは当然と言えば当然である。例えば、街中の水道工事と、山奥での治山工事を例に挙げる。
品質管理で言えば、治山工事では降雪の影響等気温がコンクリートに与える影響が著しいため、高度な知識と経験が求められるが、街中の水道工事ではそこまで気にする必要はない。
安全管理の側面から言えば、水道工事は街中での作業となるため、一般車両や第三者災害には最新の注意を払うし、企業独自の創意工夫も発揮しやすい。
逆に治山工事では、そもそも第三者対策事態が無い場合がほとんどである。
もちろん一例であり優劣をつけるものでは無いが、考え方や加点のしやすさなどで差は必ず出るのである。そもそも同じ目線で対象評価できるものではない。
施工能力審査型で発生しうる事例とは?
具体的な話をすると、あるA社が水道局発注の水道工事が得意で3件続けて高得点を取ったとする、その後仕事の減少に伴い、仕方なく産業労働局発注の治山工事を取ることにした。
対するB社は治山工事が元々得意だが、直近に建設局発注の舗装工事で低い点をとってしまっていた。
すると経験がないにもかかわらず、A社のほうが高得点になり落札してしまう場合もあるのだ。
落札したあとの結果は言うまでもなくお分かり頂けるだろう。
施工能力審査型の問題を一発解消!
それではこの問題を解決する方法だが、筆者は極めて簡単であるような気がする。
単純に東京都の発注局ごとの過去3年間のうち直近3件にすれば、施工能力の適正な審査につながるのではないだろうか。