土木の魅力を伝えたい!「デミマツ」と「コマツ」のコラボイベント
「今日は思いっきり楽しみましょう。ご安全に」――。「防災の日」の9月1日、「デミーとマツ」(以下、デミマツ)の主催イベント「世界最先端の建機を体験せよ!!」が、コマツIoTセンタ九州(熊本県大津町)で開かれた。
デミマツがコマツIoTセンタとコラボしてイベントを開催するのは、5月12日にIoTセンタ北九州(福岡県嘉麻市)で行ったのに次いで2回目。この強力なコンビがイベントをするのに、前回とまったく同じことをやるはずがない。なにをやらかすのか。そんな不埒なことを考えながら、なぜか一番乗りで現場に到着した。
当日はあいにくの雨。イベント中止も頭をよぎるほどの大雨だった。コマツIoTセンタの「エミーとモリー」(以下、エミモリ)に確認すると、「やります」ということだったので、まずは一安心。会場に座って待っていると、いつもの笑顔でデミマツが現れた。
マツさんの第一声は「怪しいおっさんがいるなあと思った。あっはっは」。いつものマツさんだ。一方のデミーさんは、「どうも」と意外にテンションは低め。PCを取り出して、おもむろに作業に没頭し始めた。普段デミーさんはこんな感じらしい。
今回、デミマツのイベントをレポートする。なお、デミマツとコマツIoTセンタ九州とエミモリについては、それぞれ過去記事を参照して欲しい。
※デミマツの過去記事
※コマツIoTセンタ九州とエミモリの過去記事
デミマツの熱意とコマツの心意気
「子ども向けに建機をPRしても、実は、コマツさんにとって、なんのメリットもないんですよ」とマツさんは言う。
確かに、コマツIoTセンタは、コマツの建機を売らんがための施設。建機試乗体験などは、建設会社関係者に最新のICT建機の性能を知ってもらうためのサービスだ。
「じゃあなんでデミマツとコラボを?しかも2度も」という疑問が当然生じる。「それは熱意ですよ」(マツさん)と言い切る。「子ども向けに、土木の魅力を伝える面白いイベントがしたい」。損得勘定抜きの熱意が通じたというわけだ。
一方、コマツはなぜ、デミマツイベントのコラボを引き受けたのか。
「確かに、全国各地にあるIoTセンタを見ても、子ども向けイベントを開催しているところはありません。私も最初は『やりたいけど、う〜ん』という思いでした。でも、デミマツのお話を聞いているうちに、逆に面白んじゃないかと思うようになったんです」(エミーさん)と振り返る。
一旦引き受ければ、さすが大手建機メーカーのコマツ、イベントに全力で取り組む。熊本でのイベントには7名のコマツ社員が参加した。この人数は、業務として行う通常の見学会よりも多い。10数名の子どもが参加するので、多くの目が必要という現実的な対応という側面があるだろうが、「コマツの心意気」を感じた。
アクションを交えながら、子どもに「建機」を伝えるモリーさん
建機は「ドボクの入り口」?
「建設機械は、新しい道路やトンネル、建物などを作るのに、必ず必要なものです。それ以外にも、大きな地震や台風、大雨などで壊れてしまった道路や橋、建物などを元通りにするのも、建設機械の大きな仕事です」(モリーさんによるプレゼンテーション冒頭の言葉)。
コマツの心意気は、イベントの端々にも表れていた。
通常の見学会で使用されるプレゼンテーションビデオは、建設会社向けの全国統一のもので、ICT建機などのスマートコンストラクションによって、「建設現場はこう変わる」という強いメッセージが込められている。見ごたえのあるビデオだが、子ども向けではない。コマツでは、このイベントのために、建機紹介などを軸にした子ども向けのビデオを作成。シナリオは子供向けのオリジナル。資料中の漢字にはルビ。モリーさんたちの真心が感じられる作り込みようだ。せっかく良いものを作ったのだから、地元小学校の社会科見学など他のイベントにも活用すれば良いと思った。
建機の画像、動画がモニターに映し出されると、子どもが身を乗り出して、食い入るように見つめていた。時折、笑い声やどよめきが会場を包んだ。とりわけ男の子にとっては、建機はなにかひきつけるものがあるようで、2〜3才の小さな子が、世界一大きなブルドーザーの画像や、マイクロショベルカーの動画などに完全に釘付けになっていたのが印象的に残った。子どもにとって、建機の存在は「ドボクの入り口」なんだなと思わせた。
雨ニモ負ケズ、元気ハツラツで子どもを誘導するエミーさん
さあ、いよいよ待望の試乗というタイミングで、雨足が強くなった。重機を動かすフィールドは田んぼ状態で、踏み入れた足は地面に深くめり込むような中、全員ズブ濡れになりながら、試乗を楽しんだ。
試乗と言っても、子どもが重機を操縦するわけではなく、コマツ社員と一緒に操縦席に乗り込み、社員のヒザの上で操縦の疑似体験をした。操縦席に座るだけでも、子どもはグッと気持ちが入るようで、重機の動きなどを真剣な眼差しで追っていた。
ズブ濡れでも平気。真剣な眼差しで重機の動きを追う子どもたち。
土木は優しさを届ける仕事
シャッターチャンスを狙うマツさん。
デミマツの出番は、主にイベント冒頭とシメの部分だった。デミーさんは、爆破イベント、測量イベントなど、デミマツのこれまでの活動などについて説明した。以前「施工の神様」に掲載されたエミモリの記事の紹介も織り込むなど、イキなはからいもあった。
マツさんは、防災の日にちなんで、防災に関するレクチャー。基本的には親向けで、95年前の関東大地震の画像などを用いながら、災害と土木の関係、熊本市が抱える地形的な洪水リスクなどについて説明したほか、治水を目的に建設中の立野ダムの必要性などについても語った。「土木は優しさをカタチにする仕事なんです」というフレーズが印象に残った。
イベントのシメとして、デミーさんとモリーさんの腕相撲対決、マツさんとエミーさんの指相撲などが行われた。
モリーさんに腕相撲で勝って満足げなデミーさん。
モリーさんとの腕相撲について、「今回の腕相撲は、最近活躍しているエミモリをライバル視した私からの挑戦だった」(デミーさん)と振り返る。
モリーさんは「円盤投げのプロアスリート」ということで、「絶対負けません」と豪語していたが、あっさり敗北を喫した。その後、デミーさんは、参加した子どもたちとも対決。子どもたちがモリーさんのカタキをうった。
「デミマツとエミモリは仲間でもあるが、ライバルでもある」(デミーさん)と今でも闘志を燃やす。
手弁当でイベントをやり続けるのは「正直キツイ」
デミマツの過去イベントをおさらいすると、2016年4月の佐賀を皮切りに、長崎、福岡、大分、宮崎、そして熊本と九州各地に広がっている。デミマツの野望は、九州を制覇した後、九州以外でもイベントすること」(デミーさん)と力を込める。
ただ、デミマツの活動は、基本的に手弁当。自分たちの小遣いでやっている。ただ、イベント打ち合わせなどのため、事前に2〜3回は現地に足を運ぶ必要があり、イベントが重なる月の交通費は10万円に上る。「時間的、金銭的にも裕福だから、できるんだろうなあ」と思っていたが、「正直、いろいろキツイ」(マツさん)と内情を明かす。
「ライフワーク」としてのデミマツの活動を続けていくためには、「最低限の活動資金は必要だ」と考え始めている。そのための方策の一つが、活動に賛同する不特定多数の人々から、寄付を募ること。とりあえず「僕も一口乗りますよ」と言っておいたが、さて、どうなるか。
■デミーとマツのプロフィール
デミー:出水 享(でみず・あきら)
土木技術者・博士 (工学)・3Dフォトグラァー・土木伝道師・マンホールハンター 。2014 年にドローンの空撮画像から軍艦島3D製作。2015年に軍艦島3Dでグッドデザイン賞。2016年に研究で開発した技術が国土技術開発賞(国土交通大臣表彰) 。土木は『空気のような存在』。あって当たり前、ないと生きていけません。土木の存在や役割を知ってもらえるように土木をアピールして行きます。長崎大学に勤務。
マツ:松永 昭吾(まつなが・しょうご)
土木技術者。博士(工学)、技術士(総合技術監理、建設)。「橋の町医者」として、計画、設計、点検、診断、耐震設計に従事。人や社会に対する優しさをインフラと いう「かたち」にできるのが土木のミリョクと考えています。(株)共同技術コンサルタト福岡支店長。(一社)ツタワルドボク副会長 。
噂のドボク応援チーム「デミーとマツ」
https://doboku.wixsite.com/index
コマツIoTセンタ
http://smartconstruction.komatsu/seminar.html
めっちゃ応援したいです。寄付募集の広告を業界紙に出せばいいのに。