橋梁事業を拡大する格正建設
格正建設株式会社は、道路工事をはじめ、造成・トンネル・港湾・河川・下水道工事などを手掛けている広島県広島市の総合建設業者だ。
昭和49年の創業以来、公共土木工事を主体に実績を重ねてきたが、今年5月、橋梁事業の拡大に向け、橋梁の点検・補修を行う「BM(Bridge Maintenance)事業部」を新設した。従来、請け負ってきた橋梁工事に加え、全国でも数少ないドイツ製の大型歩廊橋梁点検車やクローラ式歩廊橋梁点検車などを導入して、橋梁点検・補修事業に乗り出す。
折しも西日本豪雨や大型台風、北海道地震などの災害により、インフラの点検や補強は重要な課題となっているが、橋梁のメンテナンスに必要な特殊車両を所有する業者は、国内で10社に満たないという。
橋梁工事で長年培ったノウハウをベースに、橋梁メンナンス事業に新たに挑戦する格正建設BM事業部のリーダー、前土井寛之部長に話を聞いた。
格正建設株式会社 BM事業部メンテナンス課 前土井寛之部長
ドイツ製の橋梁点検車両を3台導入
——格正建設は土木工事全般を手掛けていますが、これまで橋梁工事の実績は?
前土井 広島県内の橋梁の新設や橋脚を補強する工事をいくつか手掛けてきました。これまではどちらかといえば新設が主体で、点検や補修にまではあまり目を向けていませんでした。しかし、3年くらい前から、今後の工事受注につなげるためにも、自社の強みとして進出すべき分野だと検討していたんです。
ただ、メンテナンスは橋の下に潜り込んで作業するため、特殊車両が必要になります。実際に作業に対応できる特殊な点検車両を所有している会社は全国に8社くらいで、台数も20台余りしかありません。
まずは点検車両の導入をくさびにして事業を計画、推進していこうと今年5月に立ち上げたのが「BM事業部」です。
——橋梁を点検する特殊車両について教えてください。
前土井 導入するにあたって性能や特長をいろいろ調べて比較してみた結果、ドイツMOOG社の車両が一番良いだろうということになり、ひとまず大型歩廊橋梁点検車2台と小型歩廊橋梁点検車1台、計3台の導入を決めました。
瀬戸大橋、しまなみ海道クラスの高速道路に連結する高規格の橋梁には大型車両を、その他の幅の狭い橋梁には小型車両を出動させるなど、各種橋梁の特性や用途に応じて使い分けていきます。
ドイツMOOG社製 大型橋梁点検車「MBI140」
今年12月に小型の「MB170」をひと足先に導入し、来年4、5月に大型の2台を順次導入していく予定ですが、特殊車両とあって、とても高価なため、かなりの出費になりました。
橋梁点検車両の機種タイプと主な機能
- 大型歩廊橋梁点検車「MBI140」スタンダード型
……高規格道路用で4mの防音壁を超えて歩廊を展開可能。 - 大型歩廊橋梁点検車「MBI140」スライド型
……県道、市道用で車道から3mの歩道を超えて歩廊を展開可能。 - 小型歩廊橋梁点検車「MBI70」クローラ型
……県道、市道および歩道橋用で、車体総重量3.5トン、車体幅1.68m。コンパクトな車体を活かして、これまで点検車で作業が行えなかった橋梁などのニーズへも対応可能。
純和風?のBM事業部
——広島市の北西部で開発が進む「ひろしま西風新都」内に、BM事業部の事業所を新設されるそうですね?
前土井 10月末完成を目指して現在、建設しています。この場所を選んだのは広島自動車道「広島西風新都IC」を通じて山陽自動車道、中国自動車道など高速道へのアクセスが便利なことが最大の理由です。弊社には市内西方面から通勤する社員が多い点も考慮しています。
格正建設 BM事業部の新拠点のイメージ
事務所棟の外観は、まったく建築会社の拠点らしくありません。というのも、沿道の用地500坪と周辺に整備されていた梅苑(ばいえん)約600坪を一緒に購入したことから、社長が和風のイメージにこだわったんです。白壁や焼杉板をあしらった純和風の建物なのでカフェに間違えられるかもしれません(笑)。
敷地内には来春までに大小3台の橋梁点検車両を配備しますが、出払うことも多くなると思うので格納庫は作りません。メカニカルな特殊車両がそのまま見えるので、梅苑や和風の建物との不思議な取り合わせが話題になりそうです。
——BM事業部の陣容と稼働後の予定は?
前土井 当面は私を筆頭に社員3~4人、下請会社の4~5人で切り盛りしていきます。基本的には車両が届くと同時に稼働に移るイメージです。とりあえず、1年間は事業部としての活動を試行錯誤してみる方針です。
ただ、国内に高機能を備えた橋梁点検車の数が少ないことから、橋梁の中にはしっかりメンテナンスできていないものも多いはずです。
——責任の重い事業ですね?
西日本豪雨をはじめ、このところ各地で大きな地震や台風などの自然災害が続いているので、インフラ整備でも危機意識は高まっています。
人々の生活と産業を支える橋梁の延命や維持管理は、社会的な課題のひとつです。この特殊な分野の土木事業で培った総合力と技術力で、橋の安心・安全を維持していくことが、私たちBM事業部の責務だと考えています。
土木一筋、現場肌のリーダー
前土井寛之部長は昭和52年生まれの41歳。広島工業大学土木学部卒。
——BM事業部への期待は大きそうですが、それを牽引する前土井さんご自身は現場出身ですか?
前土井 土木工事の業界に入って18年、格正建設に入社してからは15年になります。父親は公務員でしたし、建設業とは特に縁はなかったのですが、理系に進んだ大学時代からものづくりに興味があり、気が付いたらこの世界へ飛び込んでいました。
今年3月、BM事業部に配属されるまでは、ずっと建設部、つまり現場です。道路、河川、砂防ダム、トンネル、橋梁…ほんと、いろんなものを作ってきました。苦労も沢山ありましたが、仕事が楽しかったですね。基本的に現場が肌に染みついているので、この春からBM事業部の立ち上げでデスクワークが増えてきて、自分的には少し物足りなさも感じています(笑)。
とはいえ拠点が完成し、車両を導入するまであと少し。稼働後は3台の特殊車両を武器にBM事業部の存在を定着させ、発展させることに全力投球していきます。そのためにも事業部に関わるスタッフの教育・育成が急務となりそうです。
——教育・育成といえば格正建設は土木を専攻する高校生を対象に工事現場で研修会を行うなど、未来の建設業界を担う人材育成にも意欲的ですね。
前土井 一昨年に続き、昨年も「一級河川太田川水系 猿猴川 高潮対策工事」の工事現場に県立広島工業高等学校土木科の高校生を招きました。
座学で高潮対策事業やICT事業を学び、現場で船からの台船作業、最新型ドローン測量デモ、ICT建機デモ施工などを体験学習する「工事研修会」を開きました。
土木科専攻の高校生を対象に工事研修会を開催
土木を学ぶ高校生たちには、何よりも現場と触れ合ってもらうのが一番ですからね。現場管理者不足が切実な業界にあって、私たちの試みに参加した学生の中から一人でも多く将来を託せる人材が育ってくれればうれしい限りです。
ウチも御多分に漏れず、人手が足りていません。将来と言わず、いまこの時点でも若くていい人がいれば採用したいです。
現場に入ってもらえば、私たちが責任もって仕込みます。
■格正建設株式会社
格正建設株式会社は昭和49年2月創業。本社は広島県広島市。資本金5,000万円。従業員27人。一級土木施工管理技士13名。年商15億4,600万円、総合建設業。各種土木工事を一式で直接請け負い、工事全体の施工・取りまとめを行う。
高校生を招待した現場研修や最新型ドローン測量デモなど、私も是非参加したいものです。大雨災害を教訓に広島の未来を背負う会社として今後の成長に期待しています。