※これは長い年月、ゼネコンで働いてきた私個人の持論の一部です。賛否両論あるかと存じますが、お目通しいただければ幸いです。
ゼネコン管理職の資質と建築現場
今年の春、「働き方改革法案」が成立しました。これによって管理職にとっては、受難の時代がやってきたと私は考えています。今まで以上に、建築現場でも上司の資質が大きく問われるようになります。
私も長い間、ゼネコンで働いてまいりました。管理職になれば、組織においての責任は当然重くなるのですが、ある程度「ふんぞり返っている」方、「何もしていないように見える」というか「何もしていない」方も、少なくなったとはいえ、広い本社の中あたりでは、おいでになったという記憶があります。
かつての管理職であれば、「何とかしろ!」と発し、それを達成できる部下がそばに居れば、どうにか定年まで過ごせました(諸先輩方から叱られるかもしれませんが、そういう方もおられたように思っております)。
しかし、今の管理職、これからの管理職は、それでは務まらないように思います。
なぜならば、現場単位でも「働き方改革」を実行しなければならないからです。
「何とかしろ」はダメ、「濃く働け」でもダメ
残業時間を減らすということは、働く時間を短くするわけですが、仕事量そのものは減りません。つまり、時間を短く、仕事量をこなす、この2つを両立させて出来高を下げないことが管理職には求められることになったわけです。
一方で、今度は「濃く働きましょう」という言葉をよく耳にするようになりました。
しかし、そもそも濃く働いている人が、長く働くことをまずやめさせる単純な方法として、長時間残業を撤廃しようというのが、本来の働き方改革の趣旨だったのではないでしょうか?「濃く」働いている人が「濃く」働くって今さら何ですか?指標すらないのですから。
管理職としては、今まで出来高を上げていた濃い労働時間が減ることを踏まえ、さて、どうやって出来高を上げるかに知恵を絞らなくてはならなくなりました。
この問題に立ち向かうべく、「濃く」の指標も、そして働き方の方針・計画も提示せず、ただ「濃く働きましょう」を連呼しても、ゼネコンの管理職は務まりません。
出来高を上げる管理職の資質
では、この受難を解決するには、管理職たるものどうすべきか?それがなかなかの難題です。
業務スケジュールと難易度、その量の把握は当然のこととして、部下一人ひとりの業務におけるスキルや得意分野、将来の希望は何なのか、までを理解しなければなりません。
また、性格の把握も必要です。例えば、根気があるとかないとか、周囲の人との接し方とか、かなり詳細に理解したうえで、適切な量と質の業務を、適切な者に配分することが根本になります。
時として、部下の家庭の事情などについても、さりげなく入手して考慮する必要があります。公平公正に、工期に間に合うように仕事を割り振らなければなりません。
さらに、昔「ホーソン実験」という作業能率に関するアメリカの実験がありましたが、人間関係や雰囲気の悪い職場では作業効率が下がりますので、そこも考慮しないといけない。
これからの建築現場では、かなり高度な管理能力が必要となります。働き方改革の中、出来高を上げられるか否かは、部下よりも管理職次第といっても過言ではないと思う次第です。
部下をフォローできない管理職は失格
次に、出来高を確保するためには、管理職はふんぞり返っている前に、部下を助けるべしと申し上げたい。
管理職として、会社のヒエラルヒーの段階を少し上がってきますと、「部下の仕事を手伝うと全体が見えなくなる」という言葉も耳にするようになります。そのせいか、疲れ切っている部下を傍観しているだけの上司もみかけます。
しかし「自分も昔は大変だったんだ」などと時代遅れなことを言っている場合ではありません。
昔より一人当たりの出来高は上昇していることお気づきでしょうか?
部下のやっている仕事に手を出せ、と言っているわけではありません。ただ、時として「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」(おったまげの)古い言葉ですが、この山本五十六の名言「やって見せ」を200%やらない上司が多くないでしょうか?
繰り返しになりますが、手を出せということではありません。こうやれば早くできるという方法を部下に示すも良し、そして、「そこまでやらなくても、ここまで」と、まずはゴールを手前に引き寄せてあげたり、または引き寄せるための方策を考えたりすることは、管理職にしかできないことではないでしょうか。
そういったことを何もしないで、「働き方改革だから早く帰れ!」と言い、そして「締め切りは守れ!」と言う。これは「管理」ではありません。
仕事の配分もできない、部下を救う手立ても講じられない、そんな管理職は、最後の手段として、自分に力がないことを認めて、とっとと増員または有能な人員の補強を図るべきでしょう。
せめてそれくらい、管理職として行うべきです。