資材調達に苦労する海外の建築現場
海外の建築現場では、資材・材料の調達に苦労する。
特にアフリカでは、その地域の特殊性も加わり、アジアの現場よりも難しくなる。
図面に記載されている資材をそのまま調達したいのは当然だが、現地調達が基本となるので、性能や成分が違ったり、寸法や厚さが合致しなかったりする。
しかも、図面は日本の建築現場の常識に従って、日本で描かれているから、国や地域性は一切考慮されていない。
何とか似たようなモノを探すわけだが、在庫切れで入手まで半年も掛かったり、提出する見本品が一切揃わなかったり、タイル一枚決めるのさえ容易ではない。
さらに、このガーナの現場では、資材・材料の調達をめぐって悪い事件が起きた。賄賂だ。
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材料と資材の調達をめぐる賄賂
材料と資材の調達を任されていたガーナ人が、資材・材料の決定と引き換えに多額の賄賂を業者に請求し、受け取っている事が判明した。
「駄目だ」と私が言ってるのにもかかわらず、何回も承認のサインを求めてきたり、私の知らないうちにコンサルに直接承認を願い出たりしていたので、「どうも変だ」とは薄々感じていた。
決定的な証拠を掴んだのは、窓につける格子の造りが余りにも雑なので、「業者を代える」と通告した直後だった。その業者が現場に乗り込んで来て、ことの全てが判明した。
本人に「どうなんだ!」と聞くと、証拠は全て挙がってるのに「知らない」とトボケた。
しかし、まだ実害は無かったので、私はもう一回チャンスをやろうと決めた。
だが、結局そのガーナ人は一週間で現場に来なくなった。
日本人も悪行を働く海外の建築現場
海外で建築の仕事に関わっていると、この手の事件は珍しくも何ともない。ザラにある話だ。
現地の人間のみならず、日本人が同じ様な事をやってるのも見たり聞いたりする。
情けない話だが、日本人が業者に材料選定の見返りに金を要求したり、業者から金を借りたのに返せなくなり、なりふり構わず、無理矢理その業者の製品を選ぶように現場へ指示する事も実際に見ている。
これから海外で働く日本人は、賄賂に手を染めないことを祈るばかりだ。
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ビックリした盗難事件の対処方法
このガーナの建築現場では、盗難事件も発生した。
日本人の型枠大工のスマートフォンが現場で無くなったのだ。
時間は午後3時頃。型枠大工から話を聞いた私はすぐに事務所に連絡した。すると、ガーナ人の警備担当が現場にやって来て、私が事情を説明すると「任せてくれ」と言って帰っていった。
現場が終了するのは午後5時だったが、その15分前になると作業員を含めた現場の全員に集合が掛かった。厳重に出入口は閉められ、「全員の身体検査と持ち物検査を行う!」と警備員たちが言い出した。
その検査の徹底振りには驚いた。日本で同じ事をやったら大問題になるだろう。
出入口の前に一列に並ばせ、パンツ一枚残し、全部服を脱がせる。一人が服を入念に調べ、もう一人が荷物を逆さまにして調べる。パンツの上からも手で触り、何も隠してないか調べた。調べられる方も特別に文句を言わないのには驚いた。
しかし、最後の一人を調べ終わっても、ついにスマホは出て来なかった。すると、警備員5人が事務所を含め、敷地内の全ての建物の検査を始めた。
結局、スマホは便所の掃除道具のバケツの中で見つかり、型枠大工のもとに戻った。
国民性の理解を現場運営に活かす
この現場の隣には漁港があった。毎日たくさんの漁船が出入りし、魚介類を市場に降ろしている。私が担当している工事には、その市場の一部増改築も含まれていたので、毎日その中を歩いていた。
ある日、何やら市場が騒々しくなった。どうやら一人の男が魚を一匹盗んだらしい。すると数人の男たちがその男を引きずり、警官の詰め所まで連れて行く。引きずられて泣き叫ぶその男のズボンは脱げ、最後の一枚を必死に手でつかんでいた。
近くにいたガーナ人は「悪い事をしたら 罰せられるのが当然だ!日本人だって同じだろう?」と言った。
アフリカの中でもガーナは教育水準が高いと聞いている。確かに事務所の中には、賢い人たちがいた。現場の作業員の中にも「先の先を読んだ」動きが出来る人が何人かいた。逆に要領良くやろうとする悪賢い人間もいた。
海外に仕事で行った印象と観光で行った印象が同じであるはずが無い。
万一、海外の現場に行く機会があったら、その国の国民性をありのまま理解し、現場の人間への指示に生かして欲しい。
(つづく)