ビックリした盗難事件の対処方法
このガーナの建築現場では、盗難事件も発生した。
日本人の型枠大工のスマートフォンが現場で無くなったのだ。
時間は午後3時頃。型枠大工から話を聞いた私はすぐに事務所に連絡した。すると、ガーナ人の警備担当が現場にやって来て、私が事情を説明すると「任せてくれ」と言って帰っていった。
現場が終了するのは午後5時だったが、その15分前になると作業員を含めた現場の全員に集合が掛かった。厳重に出入口は閉められ、「全員の身体検査と持ち物検査を行う!」と警備員たちが言い出した。
その検査の徹底振りには驚いた。日本で同じ事をやったら大問題になるだろう。
出入口の前に一列に並ばせ、パンツ一枚残し、全部服を脱がせる。一人が服を入念に調べ、もう一人が荷物を逆さまにして調べる。パンツの上からも手で触り、何も隠してないか調べた。調べられる方も特別に文句を言わないのには驚いた。
しかし、最後の一人を調べ終わっても、ついにスマホは出て来なかった。すると、警備員5人が事務所を含め、敷地内の全ての建物の検査を始めた。
結局、スマホは便所の掃除道具のバケツの中で見つかり、型枠大工のもとに戻った。
国民性の理解を現場運営に活かす
この現場の隣には漁港があった。毎日たくさんの漁船が出入りし、魚介類を市場に降ろしている。私が担当している工事には、その市場の一部増改築も含まれていたので、毎日その中を歩いていた。
ある日、何やら市場が騒々しくなった。どうやら一人の男が魚を一匹盗んだらしい。すると数人の男たちがその男を引きずり、警官の詰め所まで連れて行く。引きずられて泣き叫ぶその男のズボンは脱げ、最後の一枚を必死に手でつかんでいた。
近くにいたガーナ人は「悪い事をしたら 罰せられるのが当然だ!日本人だって同じだろう?」と言った。
アフリカの中でもガーナは教育水準が高いと聞いている。確かに事務所の中には、賢い人たちがいた。現場の作業員の中にも「先の先を読んだ」動きが出来る人が何人かいた。逆に要領良くやろうとする悪賢い人間もいた。
海外に仕事で行った印象と観光で行った印象が同じであるはずが無い。
万一、海外の現場に行く機会があったら、その国の国民性をありのまま理解し、現場の人間への指示に生かして欲しい。
(つづく)