児玉センイ株式会社 矢賀店(広島市東区矢賀新町5丁目)

「短パンで現場作業」オシャレ化が止まらない作業服の最新事情

オシャレ職人も御用達の作業服店「児玉センイ」

「いかついガテン系スタイルはほとんど売れなくなった」——そう語るのは、広島市の作業服専門店「児玉センイ 矢賀店」の児玉武正店長だ。

作業服から工具類までを取り揃えた”職人御用達の店”は全国各地にあるが、その中でも、児玉センイ 矢賀店は一躍全国に知られる存在となった。

有名になったきっかけは、2018年12月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組「ドキュメント72時間~広島 作業服店 そこに現場があるから~」。

最近流行のオシャレな作業服がところ狭しと並ぶ店内に訪れる職人たちの様子を、3日間にわたり密着取材した番組は業界内外に大きな反響を呼んだ。

「ひと昔前とは売れる商品の傾向が一変した」と話す、児玉センイ株式会社の専務取締役で矢賀店の店長を兼任する児玉武正さんに、職人向け作業服の最新事情について話を聞いてみた。


毎朝6時にオープン、取扱商品は1万点以上

児玉武正専務取締役兼矢賀店長。1975年8月生まれ。広島市出身

――児玉センイ 矢賀店で取り扱っている品数はどれくらい?

児玉武正 小さな工具類まで入れると、扱う商品の点数は1万点以上です。

私たちのような店舗は、地域色を反映した品揃えが基本です。例えば、海が近い地域なら漁業関係、山が近い地域なら林業関係の作業現場で働くお客さんが多くなりますが、お求めになられる商品はそれぞれ違います。

当店は高速道路のインターチェンジに近い立地なので、広島市内の工事現場だけでなく、郊外や県外の現場に行かれるお客さんも来店されます。

そのため、出張用の下着や靴下、バッグ類なども取り揃えているので、品数も多くなります。

衣料から工具類まで商品数は1万点以上

――どういった経緯でNHKの人気番組に取材された?

児玉 NHKから話を持ち込まれた取引先のメーカーが「広島に面白い店がある」と伝えてくれて、思いがけず取材していただくことになりました。

取材していただいた「ドキュメント72時間」という番組は、ひとつの場所で72時間(3日間)にわたって取材を行い、そこで見られる様々な人間模様を定点観測するという番組でした。

毎日早朝から夜遅く(朝6時~夜8時30分)まで営業している作業服店は、番組の趣旨にぴったりだったようです。

――反響は大きかった?

児玉 昨年末に番組が放送されてから、わざわざ県外から買い物に来られるお客さんがいたり、いまだに「テレビを見たよ」とよく言われます。

そのおかげで売り上げが急激に伸びたということは全くありませんが(笑)。

ただ、創業者である父が1975年に進物屋として開業して、この地で40年くらい営業してきた店を一般の方にも広く知っていただける良い機会になったと思います。

ほとんど売れなくなったガテン系の作業服

――店内は、作業服とは思えないおしゃれな衣料が多いですね。

児玉 ええ。作業服はここ数年でカジュアルウェア化が進んでいるんです。

最近は、建設業をはじめ、現場作業の職業は「きつい」「危険」「汚い」「給料が安い」といった、いわゆる3K、4K業種のイメージが定着して、なかなか若い人が集まりません。

そこで、作業服メーカーは「まずは見た目からカッコよくしよう」というコンセプトを打ち出しました。

全国で830店以上を展開する作業服・関連用品専門店の国内最大手「ワークマン」さん然り、今では若い人の興味を引くスタイリッシュな作業服が主流になっています。

デニム作業服は通年のベストセラー

――確かに、最近はニッカポッカ姿の職人さんをあまり見かけません。

児玉 かつてのいかついガテン系スタイルは、関東ではまだ需要があるようですが、広島や中国地方ではほとんど売れなくなりましたね。

私は大学卒業後、家業に入る前に、岡山県の大手作業服メーカー「寅壱」で4年ほど修業していました。

当時は鳶職などのニッカポッカに代表されるような、いかついスタイルが全盛でした。寅壱の代名詞だった鳶装束は”作業服のアルマーニ”と呼ばれていたくらいです。

その後も、数年前まではいかつい路線が作業服業界の定番でした。

ですが、最近は建設業界もコンプライアンスが問われる時代になりました。いかにもそれっぽい人がそれっぽい格好をして現場に出入りすると、近隣に威圧感や怖いイメージを与えかねません。

ゼネコンでは、いかつい風体を嫌って、ニッカポッカを着用禁止にするケースが増えてきたみたいです。

その代わりに台頭してきたのが、現在のカジュアル系スタイルの作業服なんです。


トレンドは短パンスタイルの作業服

――商品を見ても、ジーンズやスニーカーのショップみたいですね。

児玉 デニム素材の作業服は、当店通年のベストセラー商品です。生地が伸縮するストレッチ素材のものやジーンズメーカーの製品のような洒落たシルエットも増えています。

値段的にはそこそこしますが、丈夫で着心地がよい点が幅広い年齢層に支持されています。

また、作業靴や安全靴は著名なスポーツシューズメーカーも参入しています。黙っていたら普通のスニーカーと区別はつきません。

流行のスニーカーと見間違えそうな安全靴

見かけはかなり派手になりましたが、従来の商品と同様に爪先部分は鉄板などでガッチリ補強されています。

値段は安いものから2万円くらいの高価なものまでピンキリです。

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――従来の作業服のイメージからだいぶ変化したんでしょうか?

児玉 着こなしひとつにしても変わってきましたね。例えば、当店では短パンの作業服も販売しています。

短パン姿で現場作業に臨むなんて怪我をしそうで昔では考えられませんが、今は短パンの下に履く丈夫なスパッツもあるので安全面もしっかり考慮されています。

この短パンの上に合わせるのはポロシャツです。ポロシャツと言っても、作業服としての機能性も持たせていて、肩の部分には材木や資材を担げるように厚手の生地で補強を施してあります。

短パンにスパッツ、ポロシャツで上下をコーディネートすると、作業服というよりスポーツウェアですよね。気分ももはやアスリートです。

――こういうカジュアルな格好をする職人は、若い人が多い?

児玉 いえ。最近は若い人だけでなく、40代くらいの職人さんもこんな格好で働く方が多くなりました。

要するに、作業服全体が普段着として十分着られるような作りにシフトしているのが最近の傾向なんです。

当店でも、従来の作業服よりもタウンウェアのような安くて、丈夫で、センスの良い商品を取り揃えています。

「職人さんに限らず、一般の方もどうぞ!」と声を大にしたいですね。

職人が頭に巻くタオルが帽子に進化

――児玉センイのおススメ商品は?

児玉 看板商品は、当社オリジナルのコットン素材のタオルで作った多目的帽子「たーぼう」です。

たーぼうは、職人さんの頭に巻いたタオルが外れやすいことをヒントに開発した「タオルの被り物の元祖」です。

児玉センイオリジナル多目的帽子「たーぼう」

タオル地なのに結びやすく、かつほどけ難くなっています。さらに、ヒタイ部分を2枚重ね構造にして吸汗性をアップしています。

頭にかぶって結べば、汗を拭くことはもちろん、日除けから防寒までオールシーズン使える優れモノです。

ラインナップも、無地の色物からアニマルプリントなどの模様入り、ご当地球団「広島東洋カープ」とコラボした公認グッズシリーズ、保冷剤を出し入れできる涼感シリーズ、後ろの部分を短くしたショートタイプまで豊富です。

広島東洋カープとコラボした「カープたーぼう」

価格も1,080円~2,000円とお手頃です。作業現場だけでなく、釣りやスポーツなど野外レジャーの様々な場面で活用していただければ嬉しいですね。

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――他に注目すべき商品は?

児玉 電動小型ファン(扇風機)付きの空調服ですね。これから暑くなるシーズンに重宝されます。

空調服は、生理クーラーの理論に基づいています。上着やベストなどの専用ウェアにファンを装着し、服の中に外気を採り入れて体の表面に風を流すことで、汗を気化して快適な涼しさが得られます。

夏の必需アイテム「空調服」

また、2018年夏に広島を襲った西日本豪雨のときには、復旧作業をされる建設関係者やボランティアの方が過酷な現場の暑さ対策として買い求めていかれました。

空調服も、エアコンが使用できない場所に最適な作業服として定着しつつあります。

当店の空調服が復旧作業の効率アップに一役買っていれば、嬉しいですね。

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災害時に頼りになる作業服店でありたい

――作業服店のやり甲斐は?

児玉 不謹慎ではありますが、西日本豪雨のような災害時には、常連の現場関係者だけでなくボランティア活動を行う一般の人まで作業服や作業用品の需要が増えるので、通常よりも客足が伸びるんです。

私自身も2014年8月に広島市安佐南区・安佐北区で発生した集中豪雨による土砂災害などの現場に、ボランティアとして参加しました。

実際に災害現場へ足を運ぶと、どの場面でどんな商品が役に立つのか身をもってわかるんです。

それらを踏まえて、自分の経験からお客さんにアドバイスもしています。お客さんからは「ボランティア店長」なんて呼ばれますが、これも地域で作業服や作業用品を扱う者の務めだと思います。

――今後の夢は?

児玉 私はもともと家業を継ぐ気がなく、やりたいことに挫折して仕方なくこの仕事に就きました。

定休日はお正月、ゴールデンウィークとお盆くらい。毎日朝6時から夜8時30分まで営業するのもラクじゃありません。

それでも、今は建設業をはじめ、いろんなジャンルの職人さんを接客するのが楽しくてたまりません。

まずは10年後もこの店で「いらっしゃいませ!」と言えるように日々精進していきます。

児玉センイの会社概要

児玉センイ株式会社(本社・広島県広島市)は、1975年1月1日創業。資本金500万円。広島市内の2店舗(可部店、矢賀店)で作業服、事務服、ユニフォーム、作業用品、工具類、進物品などを取り扱う。

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経済情報誌の記者として20余年活動した後、不動産会社の宣伝企画室長などを経て独立。現在はライター業のほか、企業の広報宣伝・販促企画全般、企業紹介テレビ番組のリサーチ業務を手掛けている。広島市在住。
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