i-Constructionの本音 第二章はすでに始まっていた!
全7回にわたる連載「i-Constructionの本音」だが、ついに最終回となった。
i-Constructionという“魔法の言葉”を国土交通省が発表してから、早3年が経過し、4年目に突入した。この3年間、「国がまたワケの分からないことを言ってる」と思って様子見に徹してきた方々は、i-Constructionのことをどう思っているだろうか?
あっという間に基準が制定され、カイゼンされた。新しい取り組みも始まった。
CIMもBIM/CIMという言葉に置き換わり、結果的にBIM/CIMという調査や設計データを活用して、一気に施工管理や維持管理に流れにつながってきたと思わないか。
国土交通省は本気なのである!
i-Constructionに乗り遅れた方々、乗り過ごしてしまった企業は、今からでも遅くはない。方向は見えているし、やるべきことはわかっている。もう様子見は終わりにして、今すぐ実行すべし。あとは実行力だけだ。
そうしないと本当に乗り遅れて、途方もないところまで同業他社は進んでしまっていることになるだろう。もはや周りを見渡している場合ではない。今すぐ自らの動き方を見直し、i-Constructionの波に乗るべきである。
i-Constructionの「貫徹の次」
i-Constructionの2019年度の合言葉は、「貫徹」であると今年4月に発表された。貫徹とは物事をやりとおすこと。では「貫徹の次はないのではないか」と思ってしまいそうだが、果たしてそうであろうか。
i-Constructionの貫徹を導いてきた考え方の根幹には「カイゼン」というキーワードが隠されている。この連載でも第1回目からずっと言い続けてきた「カイゼン」である。
最終回では、このカイゼンの「先を行く流れ」について考えたい。
カイゼンという言葉は、ローマ字表記にした「KAIZEN」として、製造業を中心に広く認知されている。英語で言うところの、improvement(改善)である。
i-Constructionとimprovement
今の流れをimprovementする動きは、最初こそ効果があるものの、ある一定レベルに達すると、そこから先はさらなるカイゼンを実施しても、その効果が上がることはない。
ところが、このimprovementを実施している最中に、必ずと言っていいほど破壊的イノベーションが起こる。それが世の常である。
破壊的イノベーション(Disrupthive innovation)。最近この言葉があちらこちらでささやかれている。
下の図を見てほしい。
クレイトン・クリステンセンの破壊的イノベーションの概念 /ASCII STARTUP(https://ascii.jp/elem/000/001/225/1225383/)より引用
図中の「技術進歩のペース」は、現状のi-Constructionが進んできている流れである。このようにimprovementを実施することで持続的改善が行われ、縦軸の「性能」が向上する(i-Constructionでは「性能=効率化」と考えたほうがわかりやすい)。i-Constructionの貫徹は、まさにこの流れの上で進めている状況であると認識して良い。
しかし、上図の赤のラインのように、ある時突然、ローエンド型と言われるものが現れる。i-Constructionで言えば、例えばロボットとか低機能なUAVが現れるという感じだろう。
当然、最初に見た関係者は「まだまだ、こんなオモチャは仕事で使えない」とか「こんな基準もわかっていない関係者が出しているロボットなんて、まだ使いものにならない」とあざ笑うであろう。
そう、こんな記事もちょっと前にでていた。
誰もが、なんじゃこりゃ、と思ったに違いない。
ボストンダイナミックスは2013年からずっと4足歩行のロボットを開発してきていたのである。当時、ロボットはまだまだ建設現場で使えるような代物ではなく、人間のほうがはるかに技術的にも優れ、トラブルにも強いという概念があった。
そのため2014年時点でのボストンダイナミックスに関する記事は、建設業界でもただオモチャのようだと思われていた。しかし、それからたった5年弱での現場導入である。
ロボット導入による施工管理の破壊的イノベーション
ボストンダイナミックスが開発したようなロボットが建設現場に放たれることによって、大量の情報を関係者全員が一瞬にして共有できるようになれば、施工管理をしている職員にとって、なんとありがたいことか。
従来は施工会社の人間が施工管理のために現場巡視などを行い、毎日の打ち合わせで「あそこに何があって、どうなっていて」などとの打ち合わせをしていた。打ち合わせに必要な情報は、それぞれの職員が自分の目で見てきたものを言葉で共有していた。
それをロボットが複数台で一切休みも取らず、ずっと現場巡視しながら、その状況をつぶさに記録共有し、それらを統合データとして確認することができるようになれば、現場トラブルなどの状況を一瞬で把握できる。職員はそのトラブルをいち早く処理することが可能になる。
現時点ではまだ現場導入のロボットは、この域まで達してないが、それも時間の問題だと思われる。
このように、破壊的イノベーションとして投入されたロボットはあっという間に、improvementを実施してきた既存技術を一瞬にして凌駕してしまう。
これが破壊的イノベーションの凄さである。
i-Constructionの第二章
残念なことに、これが破壊的イノベーションだ! と現時点いえるものがあるかといえば、それはわからないのが実情である。破壊的イノベーションだと思っても、そうならないものも多いためである。
導入もしくは開発することで、破壊的イノベーションを起こすものが出てくるのが、i-Constructionの第二章ではないかと私は推察する。
あなたの周りをよく見渡してみよう。もしかしたら、すでにその破壊的イノベーションは足元に来ているかもしれない。いや、すでに気が付かぬうちに、入り込んでいて、気が付いていないだけかもしれない。
五感を研ぎ澄まし、今まさに建設業全体の時代の変わり目を楽しみながら乗り越えていく。破壊的イノベーションを自ら起こすくらいの勢いで仕事をする。この業界がさらに魅力的になり、仕事をしていて「楽しい」と思える業界にならんことを祈り、今回の連載を終えようと思う。
またどこかで会おう。今度は、私(沖田十三)に続き、乗組員の古代や島、徳川機関長などが新興メディア「施工の神様」に登場してくるだろう。