株式会社足場ベストパートナー 代表取締役 伊藤大輔氏

二極化する足場工事業界。”職人が集まらない会社”の共通点とは?

世界で一番、足場工事業界を応援する会社

足場工事業界周辺を取材すると、「人が集まらない」というぼやきが聞こえる。

しかし、足場工事会社の支援に特化した株式会社足場ベストパートナーの伊藤大輔代表取締役は、その受け止め方は誤りで、「人が集まる会社と集まらない会社に二極化している」と指摘する。

「世界で一番、足場工事業界を応援する会社となる」ことをビジョンとする伊藤代表取締役のもとには毎日のように多くの足場工事会社の代表から相談が寄せられる。

足場工事会社の経営者が困っていることに誠実に応え、足場職人の地位向上を目指す伊藤氏に、足場工事業界の現状や今後の行方、足場ベストパートナーの取り組みなどについて話を聞いた。


元々は営業コンサル会社

――まず伊藤様からのご経歴からお願いします。

伊藤 大学を卒業後、営業コンサルやテレアポの代行業務を行う株式会社アイランド・ブレインという会社に入社しました。

その後、2013年に東京支社を立ち上げる話があって、1人で東京に赴任することになりました。そこで、2017年にアイランド・ブレインの子会社として株式会社足場ベストパートナーを立ち上げました。今年で3年目になりますね。

――営業コンサル会社が、どうして足場工事の支援会社を立ち上げた?

伊藤 もともと、私は建設業の営業代行のお客様が多く、(一社)建設職人甲子園の立ち上げを支援していました。これを機に、建設業界に足を踏み入れることになったのですが、そこで職人さんが「集まる会社」と「集まらない会社」に二極化していることに気が付いたんです。

「何が違うんだろう?」と思って、職人さんが集まっている会社の社長様に話をお伺いしたら、「ブログやFacebookから応募が来る」ということでした。それをそのまま仕組み化して、職人が足りないお客様に提供したところ、職人が集まったんです。

それで足場工事会社の社長さんにも提案したところ「ウチでもやりたい」という話になって、自然と足場工事会社のコンサル業務が増えていきました。

それに、足場は建築や土木構造物をつくるにあたって必ず必要なのにも関わらず、足場工事業界に特化をして支援する会社や組織がないんですよ。たとえば、塗装なら塗装組合、左官なら左官組合がありますが、足場工事業界にはなかった。「それなら、私たちで創っていこう」と株式会社足場ベストパートナーを設立したんです。

今は、足場工事業界に有益な情報の提供や経営支援、コンサルや営業代行、職人の採用や定着支援を行っています。

――足場工事業界を支援する組織としては初のケース?

伊藤 組合もあることはありますが、組合を組織している会社が自社で足場工事をやっている会社だと、よそから入会しても仕事が取れない、あるいは、価格の談合をして元請けから叩かれることもあったりして、組合には入会しにくいという話も聞きます。

その点、足場ベストパートナーは株式会社としてしがらみにとらわれず、会員向けに「あったらいいな」というサービスや足場工事会社が成功している情報を積極的に共有したり、仕事を発注しあうなど、全国で良い横のつながりを大切にしています。

――具体的には?

伊藤 足場工事業界の経営者支援会を2カ月に1度開催しています。成功している会社の社長を訪問し、創業から今までの取り組み、社員の管理体制や運営についてプレゼンしてもらったり、足場の資材センターなどを見学します。その後会食、懇談を行い、親睦を深めています。毎回全国から20社ほどの経営者が集っています。


「稼げます」だけでは人は集まらない

――足場工事業界の動向は?

伊藤 建設需要は伸びており、従来の新築に加えて、戸建て・アパートのリフォーム需要やマンションの大規模修繕、橋梁やトンネルなどの維持保全などのメンテナンス工事も増加しています。つまり、足場工事業の需要も確実に増えているのが実情です。

――足場工事業界には、どのような課題がある?

伊藤 会社創設からの2年間は、会社の基礎作りとして全国の足場工事会社の社長さんに会いに行くことが仕事だったのですが、そうしていくうちに足場工事業界の課題も見えてきました。

地域性や規模によってさまざまありますが、悩みはおおよそ集約されています。営業、職人さんの採用、定着、資金繰り。この4つです。

一つ一つは悩みが大きいように見えますが、この4点を解決すれば、会社は安定します。

――求人を出しても人材が来ないという話をよく聞きます。

伊藤 きちんと情報発信していれば、人材は来るんです。人が集まらないのは、それぞれの会社の情報発信不足が原因です。人が集まらない会社の求人原稿を見ると、「日給、月給、場所」しか書いていなかったりするんですよ。 「社長、これでは良い人財は来ませんよ」と。

そこで「足場工事会社向けインディード挑戦パック」という求人サービスを、株式会社ドライバンクさんとコラボして開発しました。異業種の方に足場工事業界の魅力や価値を伝えて、将来足場職人になりうる人を呼び込むサービスです。

それに、足場工事会社は、ホームページがないところも多く、あってもダサい。求人広告を出すにも、単に稼げますということだけでは問題で、足場工事業界の価値や魅力の情報発信をし、良い人財を呼び込むことがとても大事です。そこでホームページの制作もお手伝いしています。

足場ベストパートナーのカタログ

また、求人原稿については、求人広告会社は足場について深く分かっていないので、「稼げます」としか書けないことも多い。会社の魅力、特長をしっかり伝えるために、足場ベストパートナーが求人原稿を作成することもあります。


職人をコマ扱いする会社とは付き合わない

――足場職人さんの定着については?

伊藤 足場職人さんが辞めないように、レクレーション制度や経営計画作成を支援しています。

とくに、足場工事業界で経営計画を作成している会社は、100社のうち2~3社程度です。私は5か年経営計画の作成を足場工事業界で当たり前の文化にしていきたいと考えています。毎年、経営計画の進捗状況を発表すると、足場職人さんは定着する傾向があるんです。

足場職人といっても多種多様ですから、「自分は請負の仕事が向いている」「営業をやりたい」「まだまだ技術を向上したい」「新たな事業を創りたい」などいろんな考えがあります。

そういうことを考慮して5か年経営計画を発表すると、職人さんたちは「オレはこの会社にいてもいいんだ」という確信を抱くんです。逆に、何もない会社の職人さんは「このままこの会社にいてもいいんだろうか」という疑問を持ちます。

――実際にコンサルした事例は?

伊藤 たとえば栃木県の会社様は、私がコンサルに入る2年前は、材料を持っていない応援鳶でしたが、今は1億3,000万円の資金を調達し、材料を購入、設備投資して25人の規模になりました。最近リフォーム部門を立ち上げて会社を伸ばしていこうという方針です。

また、千葉の会社様は2年前までは若い人が集まらずに困っていましたが、職人の数が6人から23人に増え、今は若い人が集まる会社に変貌しています。

――どんな会社でも入会できる?

伊藤 入会を断るケースもあります。ある会社の社長と名刺交換した際、「何人コマ集められるの?」と聞かれました。「なんですか? コマって」と質問すると、「職人のことだよ」という答えが返ってきたんですよ。

大切な職人さんをコマ扱いする人とはお付き合いできないので、それで失礼させていただきました。このようなこともあるので、入会前には必ず面談をしています。

足場職人の働き方を変革する

――新しい事業は考えている?

伊藤 施工管理アプリでは業界ナンバーワンで、2,000社以上が導入しているANDPAD様と組み、「足場PAD」をリリースする予定です。足場職人さんの手配やスケジュール管理など、特に段取りの部分の効率化するアプリです。

足場PADでは、施工写真の管理はもちろん、安全パトロールの管理で写真を撮って、是正箇所をまとめて指摘することもできます。足場工事業界の働き方改革は絶対に改革していく必要があると感じています。どのような働き方がいいのか、みんなで議論しながらいいモデルを創っていきたいですね。

――これから足場ベストパートナーは何を目指していく?

伊藤 足場工事業界の教科書を創っていきたいです。今は教科書がないんですよ。足場ベストパートナーは足場工事業界に良いプラットホームを創っていき、足場ベストパートナーのホームぺージを見たら、足場工事会社の良い横の繋がりもできますし、足場工事のことが何でもわかるよ、としていきたいですね。

その一環として足場工事業界初の足場工事業界の課題を解決できるウェブメディアの足場工事マガジンができました。足場工事マガジンを見た職長さんが、「あそこに掲載されている職長さんやばくない? あの会社の取り組みが良いから自社に取り入れていこうよ」という声が全国に拡がり、足場工事業界の教科書になっていくことを想定しています。

そのためにも、まず全国で会員企業様を増やしていきます。現在の242社から、3期目には330社を目指しています。

足場工事業界の未来をともに創っていきたい足場工事会社はぜひ一度足場ベストパートナーに連絡ください。足場工事業界に健全な経営基準と未来を共に一緒に創っていきましょう。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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